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ベルリン銀熊賞受賞監督、最新作「ザ・リバー」は日本人の精神性に密接!?

2018年11月2日 14:00

エミール・バイガジン監督「ザ・リバー」

エミール・バイガジン監督
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[映画.com ニュース] 人里離れた家で暮らす年若い5人の兄弟。長男のアスランは父から弟たちの面倒を任されている。子どもの精神を育むには、世の雑事から身を離し、素朴な労働に従事させるのがいちばんと父は考えている。仕事に倦んだ兄弟は散策に出かけ、川で泳ぎ戯れる。かくも慎ましやかな日々に、いとこの少年がタブレットを持ってふらりと現れたことから、各人は刺激される。「ハーモニーレッスン」(2013/ 東京フィルメックス上映)でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞したエミール・バイガジン監督の最新作は、子どもを主人公にした3部作の最後を飾る作品。34歳の監督は終始、「アンファンテリブル」と呼ぶにふさわしい雰囲気をたたえていた。

──映画祭の2回目の上映が終わったあとですね。観客の反応はいかがでしたか?

エミール・バイガジン監督(以下、バイガジン監督):多くの観客が来てくれて、上映後のティーチインにも残ってくれてうれしく思いました。ある観客は、この映画に日本人の精神性に近いものを見てくれました。ゆったりしたテンポだけど内容は濃い。そんなところに、小津安二郎に似た何かを感じてくれたみたいです。

──寓話のようなお話を、切り詰めたセリフとカット数で描いています。

バイガジン監督:寓話というよりは、むしろ、宗教的教義に近い内容を意識しました。カット数を少なくできたのは、今回、リゴリズム(厳格主義)を重視したからです。奇跡みたいな題材を描けないかとずっと思っていて、その考えに則ってみました。厳格さをたたえて物語は進むなか復活の奇跡が生まれます。

──主人公の5人兄弟が着ている質素な衣装も宗教的ですね。

バイガジン監督:映画全体を通して得られるイメージを、聖書の引用のように仕上げようとしました。それで衣装に限らず、聖書との関連を彷彿させるように仕込んであります。

──これは、“アスラン”という少年を主人公にした3部作の最後の作品で、「ハーモニーレッスン」(13)と「傷ついた天使」(16/日本未公開)と違って、意識したことは?

バイガジン監督:3部作で伝えたかったのは「精神的進化」です。前の2作は痛みをともなうシーンや暴力的なシーンがあったけれど、この第3作では、「精神の解放」を重視しています。5人兄弟の踊りはその象徴で、解き放たれてうれしさが募る寿ぎの場面になっているんです。

──ずっと固定ショットで来て、あそこだけ手持ちのカメラでしたね。

バイガジン監督:あれを撮って僕自身も解放されました。3部作の最後に、間口の広い出口を見つけられてよかった。

──3作ともアスランを演じている少年は同じですか?

バイガジン監督:それぞれ異なる少年たちです。映画の中の人物は、年齢が変わらないけど人間は成長していくから。最初の『ハーモニーレッスン』を製作したのは12年で、当時13歳や14歳の少年に出てもらいました。もう6年も経ってしまい今では20歳ですからね(笑)。


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──労働と遊びが交互に描かれますが、どんな意図があったのでしょう。

バイガジン監督:兄弟の父親が作ろうとした天国のような世界、楽園のイメージを思い浮かべました。

──5人兄弟というのも珍しい設定ですね。兄弟はそれぞれ、象徴的な役割を担っているようです。

バイガジン監督:長男のアスランは、太陽のような存在をイメージしました。弟たちを照らすような。次男と三男の双子は原始的な力を担っている。だから、父親を殺したいと思ってしまうのです。四男のムラトは欲望を担っているから、性的なエピソードを込め、末っ子のケンジェはイノセンスなのです。

──川もすべてを飲み込み、受け入れる象徴のようです。

バイガジン監督:田舎育ちだから、私も子どもの頃、よく街から来た少年を川に連れていったものです。それで、ある子がいなくなってしまったことがあって。だから、自分でも手に取るようにわかる心情を描いているのです。

──ゾクゾクするほど美しいオーバーラップがありましたね。ゆらゆら揺れる暗い川面に、夜寝つけない兄弟たちの姿が浮かぶシーン。それと、双子が寝ている肩筋に陽の光が差してくるシーン。

バイガジン監督:いずれも、撮影現場で思いついたものです。シーンを撮っていく中で、画面転換のイメージを思いつきました。美しい映像を撮るのも大事だけど、編集してどう構成するかがいちばん大事なのです。

──最後のクレジットに、インドの瞑想者シュリ・チンモイの名前が登場しますが。

バイガジン監督:シュリ・チンモイは瞑想者、哲学者なだけではなくて作曲家でもある。本作に流れる聖歌みたいな曲も彼の音楽です。私は、カザフスタン辺境の田舎で生まれ育ったのですが、少年の頃にカセットテープでよく聴いていました。哲学的なことはよくわからなかったけれど、「頭脳で生きている人間は疑いを持ちがちだ」という言葉を、今でもよく覚えています。他にも、「恐怖心のある人間は何がしかの影響下にある」とか。映画監督は頭脳があって疑心暗鬼になりがちだから、今回は心が浄化されるシーンが撮れてよかったと思っています。

取材・構成 赤塚成人 (四月社・「CROSSCUT ASIA」冊子編集)

(映画.com速報)

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