カンヌ最高賞の「ザ・スクエア」キュレーター、精神科医、美術家はどう見た? : 映画ニュース

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カンヌ最高賞の「ザ・スクエア」キュレーター、精神科医、美術家はどう見た?

2018年4月16日 16:00

精神科医の名越康文氏、東京国立近代美術館研究員の保坂健二朗氏、美術家・ドラァグクイーンのヴィヴィアン佐藤氏(左から)「ザ・スクエア 思いやりの聖域」

精神科医の名越康文氏、東京国立近代美術館研究員の保坂健二朗氏、美術家・ドラァグクイーンのヴィヴィアン佐藤氏(左から)
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[映画.com ニュース]第70回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞したリューベン・オストルンド監督作「ザ・スクエア 思いやりの聖域」の公開を記念したトークイベントが4月15日、東京・代官山 蔦屋書店であり、東京国立近代美術館研究員の保坂健二朗氏、精神科医の名越康文氏、美術家・ドラァグクイーンのヴィヴィアン佐藤氏が作品を語った。

映画は、敏腕キュレーターとして現代美術界で成功を収めた男性がさまざまなトラブルに見舞われる様子をエレガントかつ痛烈な笑いを込めて描き、他者への無関心や欺瞞、階層間の断絶といった現代社会の問題を浮き彫りにする。

保坂氏は、主人公と同業者としての視点で、日本と外国の美術館との違いを挙げながらも「キュレーターの立場は全世界変わらない」といい、「アーティストやコレクターとも付き合い、みんなに気を遣う一方で勘違いも生まれて、その勘違いがこの物語のきっかけになっていると思う。そのあたりは身につまされる思いで見た」と感想を述べる。

そして、劇中での作品やキュレーターの仕事についての質問に対し、「アートは非常に曖昧な概念で、わからなかったら『アートだね』と言っておけば済むようなこともある。そういうものを展示しているのが現代美術館で、そういう作品を世界中から集めて構成するのがキュレーターの仕事。実は、キュレーターという語源をさかのぼると、気がおかしくなった人を塔に入れて、見守る人のことを指していたそうです。モノや人の精神を大事に見つめる人がキュレーターのはずでしたが、その後、管理人からやがて人に見せるようになった。そこからキュレーターという概念が、展覧会を構成する人に変わり、そして新しい意味を作り出す人というようになってきた」と解説。そして、「この映画は美術館が舞台なのに、アーティストは出てこない。今、キュレーターがアーティスト化していると言われていて、それを象徴している作品だと思った」と話す。

その保坂氏の発言を受けた名越氏は、「キュレーターの語源を知ってぞくっとした」とコメント。19世紀からの精神医療の場を記した書物に書かれているという出来事を挙げ、「その時代、ほんの百数十年前までキュレーターという見守る人が病人の治療もしながら見せ物にするようなことが行われていたので、そのことを思い出しました」といい、劇中で、猿人のようなパフォーマンスをするアーティストが、美術館のパーティをめちゃくちゃにするシーンについて言及。「人間が野生に想像する恐怖を彼が演じている。それはゴリラそのものではなくて、非常に知的な行動。箱の中に箱があるような皮肉が込められていると思った」と振り返る。


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さらに、主人公のクリスティアンの人格については「きわめて人間的な人」と断言。「かつてフロイトはすべての人間はノイローゼであると喝破しましたが、そういう意味で彼はノイローゼの典型。絶えず不安におびえていて、知的なので、自分が本質から外れたことをやってしまっていることを知っているからこそ、大義名分につかまってワーカホリックになっている。人間は自分の心に後ろめたいことがあればあるほど、よりそれを熱意を持ってやると古典的な精神分析では言われている。そういう意味では、彼は本当に人間らしい人間」と専門家の立場から分析した。

佐藤氏は、「映像が美しく、カメラワークがクール。音もよく、ノイズの奥行きもある。それに反して、人間のどろどろしている内面や意味がなかったり嘘の会話が繰り広げられる対比が面白い」と評し、災難続きの主人公の設定を「小さなコントの連続のようで、(災難を)この人が全部引き受けなくてもよいのではと思ってしまうけれど、大勢の人物が彼の中に入っているので、私たちの代表のように感情移入してしまう」と述懐。また、本作を見て想起するアーティストや作品として、ジェームズ・タレル、オラファー・エリアソン谷崎潤一郎らを挙げ、「タレルの作品は刻々と変わる作風。この映画も善悪が変化していって、見終わった後に、光景が変わる。そういう風に様相が変わっていく部分が重なった」と持論を語った。

最後に保坂氏は、劇中で登場する参加型アートと呼ばれる作品について触れ、「19世紀末に写真や映画ができ、様々な新しいメディアが登場し、アートのあり方が変わってきた。20世紀の後半にメディアアートが流行したが、定着しなかった。ひょっとしたら、参加型アートは残された最後のアートのメディアなのかもしれないと思った。僕は、映画はアートの世界を本質的に変えたメディアだと思っていて、その映画が参加型アートと呼べるものを扱っているのは象徴的だと思う。そして、(劇中のアート作品)『ザ・スクエア』は実際に監督が参加型アートとして発表した作品。それを映画でもう一度扱っていることを深く考える必要がある」と結んだ。

この日、1時間半にわたって行われたイベントでは、世界の現代美術館の現状や、炎上商法をもちいた広告、人間の支配欲求とメディア、男女のパワーバランスなど、専門的かつ多岐にわたる話題が繰り広げられ、映画が提示する様々な問題を反映していた。「ザ・スクエア 思いやりの聖域」は4月28日公開。

(映画.com速報)

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