藤竜也「東の狼」で10日間以上、事前に猟師体験 役作りがだんだんマニアックに : 映画ニュース

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藤竜也「東の狼」で10日間以上、事前に猟師体験 役作りがだんだんマニアックに

2018年2月4日 15:00

取材に応じた藤竜也「東の狼」

取材に応じた藤竜也
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[映画.com ニュース] 名優の藤竜也が主演する新作「東の狼」が2月3日、公開された。河瀬直美監督がエグゼクティブプロデューサーを務め、キューバ人の新鋭監督がメガホンをとった意欲作。山深い奈良・東吉野村を舞台に、元船乗りの老猟師が幻のニホンオオカミを追い求める姿を描く。俳優歴55年の藤は事前に船舶学校を訪ね、猟師生活をするなどプロファイリングをして撮影に臨んだ。そのきっかけとは?(取材・文・写真/平辻哲也)

監督は、1984年生まれのキューバ人のカルロス・M・キンテラ氏。「なら国際映画祭」が今後の活躍が期待される新鋭監督を奈良に招き、映画製作する「NARAtiveコンペティション」(2014)で審査員特別賞を受賞。16年4月に、ニホンオオカミの絶滅の地として知られる奈良・東吉野村で全編撮影し、その年10月、なら国際映画祭でワールドプレミアされた。

「2年前に河瀬さんと新横浜でお会いして、話を頂いたんです。キューバの若い監督と仕事をする機会もなかなかありませんし、面白いかな、と。監督のカルロスとは英語でやりとりしましたけど、彼も得意ではなかったので、辛かったとは思いますね。でも、説明したら身も蓋もないところがあってね。狼にしても鹿にしても、彼にとっては記号のようなもんで、意味を言われても興ざめなんです。あまり深く考えずにやりました。(劇場公開版は)編集をやり直した2つ目のバージョンなんですけども、随分良くなっている」。

東の狼」は黒木和雄監督がキューバを舞台に日本人漁師アキラと混血の女民兵マルシアの恋を描いた「キューバの恋人」のインスピレーションを受けた作品。かつては船乗りとして、世界の海を旅した老猟師アキラ(藤)が、かつてのキューバ人の恋人マルシアとの思いを引きずりながら、100年以上前に絶滅したと言われるニホンオオカミを追うというストーリーだ。

キューバには特別な思いもあった。「僕の世代は、キューバに興味を持ったものですよ。(キューバの革命家で最高指導者だったフィデル・)カストロさんやキューバ革命の本を随分、凝って読んだんですよ。キューバにも行く機会があって、知っていたもので、懐かしいような嬉しいような感じがしました。そのカストロさんたちが各国で圧迫されている人たちを助けるためにゲリラ部隊を派遣した。主人公はその兵士であったマルシアと恋人で、半世紀以上経った今でも、彼女との抜けられない思い出を持っている。女性の姿が頭の中で、醸造されてしまったんでしょうね。(その彼女を追い求める姿が)狼ともダブるような気がして、ロマンを感じたわけです」。

出演が決まるや、すぐに東吉野村を訪問。さらに撮影の約10日前から現地入りして、役に臨んだ。「矢も盾もたまらず、一刻も早く行きたいと思ったんです。犬のシロとは連れ添うから、仲良くしなきゃいけないし、猟師仲間とも、普段はお付き合いはないからね。猟師の感じというか、現場の山の雰囲気につかりたいと思ったんです。猟師仲間を全員紹介してもらって、話を聞いたりしました。人間関係が分かれば、だいぶ違います。出来上がれば、あんまり考えられないでいられますからね。興ざめするようなことを言うかもしれないけども、今の猟師は昔のマタギみたいなことはやっていなくて、鹿の駆除が主な仕事だそうです。しかも、猟師だけで食っているわけではないそうです。毛皮だって、昔みたいに必要ではないし」。


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劇中には、船乗りをしているシーンは出てこないが、主人公がかつて通っただろう船舶学校にも足を運んだ。「日本には船舶学校が3つあると知って、三重にある学校に行ってみたんです。ここで育ったのかな、と想像すると、安心する。この男の足跡を作らないといけないから、都合のいいように、作るんです。ここの学校を経て、世界中を旅して、嫌になってしまって、奈良に辿りついたかなと思うわけです。暇だから、(役作りが)だんだんマニアックになってくるんですよ」。

その役作りは、劇中でもいかんなく発揮されている。例えば、駆除した鹿を手際よく解体するシーンだ。「前もって、猟師から教わっていたから、その通りにやりました。糞が詰まっているところは丁寧にやらないといけないのだけど、案外カンタンにできるんですよ、恐ろしいですね。やっている時はなんでもないんだけど、終わってからは気分的にくたびれるよね。30分くらい(カメラを)回していたんかな。どれだけ使うんだろうって。このまま使ったら、映画の3分の1は終わってしまうよなって。でも、それだけ徹底的に回すということは、鹿にも、意味があるんでしょうね」。

藤流の役作りの方法は、40代前半から目覚め、ここ4、5年は同じようなスタイルで確立したという。そのきっかけは何だったのか? 「僕は日活でデビュー(「望郷の海」1962年)したんですけども、最初の10年間は日活のアクション、ギャングものが多かった。(映画産業の斜陽化を受け)日活が映画製作を中止して、しばらくしてロマンポルノで再開することになるんですけども、そんなことは分からないから、日活から外に出た。テレビに出ていたら、しばらくうまくいっちゃってね。いわゆるテレビ映画のスターになっちゃったんです」。

1970年代後半から80年代前半は刑事ドラマの「大追跡」(1978年)や探偵もの「プロハンター」(1981年)を始め、男性路線のアクションなどに数多く出演。「エンタテインメントの主役は、どこを切っても同じの金太郎飴の金太郎さんで良いわけです。別に、芸術映画を撮っているわけじゃないからね。ただし、それには賞味期限があるわけです。秋風が吹くわけです。それは自分でも分かる。なんとかしなきゃいけない、と思った。年は42、43歳の頃だと思ったけども、『これからは役者になる、他人になることをしていかなきゃダメだ』と思ったんです。プロファイリングを始めたのはそれからです。でも、使ってもらえるまでは5年くらいかかったかな。そりゃ、そうです。信用はしてくれません。それまではどこを切っても藤竜也ですから。おかげで、中年の変なジジイもできるんだなと思ってもらえた」。

どちらがよかったか? と聞くと、「どちちも楽しいな。楽しみ方はそれぞれありますからね。でも、(プロファイルを行う今のスタイルの方が)くたびれますよ」と笑う。これまで、「愛のコリーダ」の大島渚監督、「ションベン・ライダー」の相米慎二監督、「アカルイミライ」の黒沢清監督、「龍三と七人の子分」の北野武監督、「光」の河瀬監督といった日本を代表する名監督と仕事を続けてきた。「優れた監督に使ってもらえるようになると、テクニックだけじゃダメなんだなと思いましたね。魂をもって、そこに存在しなきゃ、いけないんだ、と」。こうした思いがあるからこそ、役への徹底したリサーチがあるのだ。

(映画.com速報)
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