「If Only」監督&俳優陣が目指した、グローバルなインド映画

2015年10月30日 21:00


インド映画の新潮流を作る意気込み
インド映画の新潮流を作る意気込み

[映画.com ニュース] 女優との恋に破れた写真家が屈託のない庶民的な女性と出会い、過去を清算しようとするが、女優への思いを断ち切ることができない――。回想シーンをちりばめ、流麗な映像で綴ったラブストーリー。監督のイーシャン・ナーイルは「サラーム・ボンベイ」などで知られる有名な映画人、ミーラー・ナーイルの甥で、ニューヨークで映画を学んだ新鋭。監督デビュー作となる。撮影監督、女優ふたりと男優を伴っての来日となった。

この作品のアイデアはどこから生まれたのですか?

イーシャン・ナーイル(以下、ナーイル監督):ボリウッドでいちばんつくりやすい映画はラブストーリーだと思い、私自身の体験をもとにストーリーをつくりました。でもプロデューサーを見つけるのに5年半もかかりました。

ご自身のことを脚本に書くのは、思いが勝ってしまうところもあるでしょう。

ナーイル監督:ええ、だから5年半の期間はむしろよかった。最初の脚本は3日半で書き上げたのですが、あまりに感傷的な内容でした。まだ、私は失恋の痛みに苦しんでいたからです。日が経つにつれ、自分の体験を客観的に見直せるようになり、観客を意識して書き直すことができるようになりました。

監督の恋愛はロケ地も含めて、現実にあの場所で起こったんでしょうか。

ナーイル監督:そうです。グジャラート州の村のあちこちでロケハンをしまして、映画的によく見える場所に多少は変えてはいますが、起こったことは変えていません。

ということは、つきあっていた元恋人が見たら、きっと思いも深いでしょうね。

ナーイル監督:実は、元恋人はこの作品を見ています。かなり泣いたようです。体験を再現するためにディテールを大切にしました。例えば、登場人物が着たスーツやジャケットまで僕が着ていたものと同じにしたほどです。

今回が初めての監督作品ですね。ニューヨークで映像を勉強されたことが映像に現れている気がします。

ナーイル監督:自分がつくりたかったのは、グローバルなインド映画です。インドといえば皆が貧乏で、お腹を空かしているか、あるいはルイ・ヴィトンを着て踊っているイメージ。そういうものはうんざりです。私はもともとファッション業界のカメラマンでした。そこで身につけたスタイルが入ってきたのだと思います。

撮影監督におうかがいします。撮影中、ご苦労したことはありますか?

タナイ・サータム:実は、私がこのプロジェクトに関わるようになったのは撮影がはじまる2週間前だったのです。ただ、一晩で脚本を読んでこれはすごいと思いました。長編映画の初めての挑戦でしたから苦労はしました。私はインドの映画学校を卒業して、テレビのドキュメンタリーや旅行モノ、音楽などを手がけ、映画を撮りたいと切に願っていました。

ナーイル監督:低予算だったので、1日に脚本5~7ページ分も撮影しないとならなかったのです。しかもロケ場所を変えながらです。撮影の日数はわずか37日しかありませんでした。

役者の皆さんも初めての映画出演ですね。ミトラさんは悩める主人公を演じましたね。

バルン・ミトラ:私は、ディスカバリーチャンネルで旅行番組の司会をしています。この作品では自分の大失恋の体験を生かしました。監督とは長年の友人なので、互いの失恋経験を演技に反映させました。

主人公を苦しめるサミーラ役はどの点が難しかったでしょうか?

ニディ・スニール:私は、ファッションモデルをしています。サミーラはある部分、私自身です。私も似たような問題を抱えています。肌の色の問題も体験しました。監督の言葉通りに演じたので難しいことではありませんでした。サミーラをただの野心家ではなく、いろいろな混乱や迷いを抱えた人間だと把握しています。

カーブヤ・トレーハンさんは、シンガーソングライターとうかがいましたが。

カーブヤ・トレーハン:はい、そうです。デリーに住んでいるので、ボンベイに何度も行きました。デリーではヒンズー語をあまり話さないので、グジャラタ語とヒンズー語の両方を理解するのが大変でしたね。この作品に関われたことで学んだことの大きさ、得た友情の深さ、そして映画を作るという体験を得られたことに感謝しています。

最後に監督が映画を志したのは、叔母さん(ミーラー・ナーイル)の影響が大きいのですか?

ナーイル監督:叔母が監督した「モンスーン・ウエディング」(02)に出演したのは11歳の時でした。その結果、ベネチア映画祭に14歳の時に招待されました。出来上がった作品を見て驚きました。演じたことが映像のなかでこんなにも意味を持つことができるのかと感動しました。自分もそういうことをしてみたいなと思うようになりました。この体験は映画製作を志すうえでとても大きな出来事でした。

(取材/構成 稲田隆起 日本映画ペンクラブ)

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