「環境破壊は世界共通」 トルコの遅咲き新人監督が問題提起

2014年10月30日 18:03


ムハンメット・チャクラル監督
ムハンメット・チャクラル監督

[映画.com ニュース] 第27回東京国際映画祭のアジアの未来部門で10月30日、トルコ映画「ツバメの喉が渇くとき」が公式上映された。トルコ北東部の山村を舞台に、村人が出演するドキュメンタリーと再現ドラマを並行させ、ダム建設反対運動をめぐる葛藤を描いた野心作。上映後のティーチインにムハンメット・チャクラル監督、プロデューサーのムラット・バスマン氏が出席し、日本の映画ファンと意見を交わした。

黒海に近い山あいの静かな村に暮らす主人公ムラットは、仲間とともに自然保護を訴え、村の近くで進む水力発電所の建設反対運動を展開。激しい火花を散らすが、穏やかな日常を奪う自らの行動に葛藤を覚え始める。

1965年生まれの“遅咲きの新人”チャクラル監督は、「私自身も反対運動に身を投じ、その様子をドキュメンタリーとして記録していた」といい、「より多くの人々と分かち合いたいと思い、ドラマと融合させ、芸術作品に仕上げたかった」と独特なスタイルを選んだ意図を説明していた。

現在もトルコ各地で発電所の建設が進んでいるといい、「金もうけに必死な政府と企業が、大きな権力となって市民の声を握りつぶしている。ときには武力を行使したり、読み書きもできない老人を尋問したりすることも。さらに深刻なのは、国内メディアがそうした動向をほとんど報じないこと」と現状を憂えた。

「環境破壊は世界共通の問題」と強調するチャクラル監督。「実はトルコでは、原子力発電所の建設も検討されている。その計画には、日本の企業がかかわっており、私はとても心を痛めています。活断層の上に原発を作ればどうなるか……。日本に暮らす皆さんなら理解してもらえるはず」と問いかけた。

昨年創設された「アジアの未来」部門は、日本・中東地域を含めたアジアで製作された、新鋭監督のデビュー作もしくは2本目の長編作品を対象にしたアジア・ヤングシネマ・コンペティション。2年目の今年は10本がラインナップされ、うち9本が世界初上映作品となる。同部門の作品に加えて、新設の国際交流基金アジアセンター特別賞が授与される。

第27回東京国際映画祭は10月31日まで開催。

Amazonで今すぐ購入

フォトギャラリー

関連ニュース

映画ニュースアクセスランキング

本日

  1. 「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」出演俳優たちが印税請求

    1

    「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」出演俳優たちが印税請求

    2024年4月24日 11:00
  2. 渋谷凪咲、ホラーで映画初主演! 「ミンナのウタ」のDNAを引き継ぐ清水崇監督作「あのコはだぁれ?」7月19日公開

    2

    渋谷凪咲、ホラーで映画初主演! 「ミンナのウタ」のDNAを引き継ぐ清水崇監督作「あのコはだぁれ?」7月19日公開

    2024年4月24日 04:00
  3. 「傲慢と善良」藤ヶ谷太輔&奈緒が主演! 辻村深月のベストセラーを映画化 監督は萩原健太郎

    3

    「傲慢と善良」藤ヶ谷太輔&奈緒が主演! 辻村深月のベストセラーを映画化 監督は萩原健太郎

    2024年4月24日 07:00
  4. 大友克洋「MEMORIES」初DCP化、4月26日からホワイトシネクイントでリバイバル上映開始

    4

    大友克洋「MEMORIES」初DCP化、4月26日からホワイトシネクイントでリバイバル上映開始

    2024年4月24日 09:00
  5. 田中圭、山下智久と9年ぶりの共演!「ブルーモーメント」に主人公の幼なじみ役でサプライズ登場

    5

    田中圭、山下智久と9年ぶりの共演!「ブルーモーメント」に主人公の幼なじみ役でサプライズ登場

    2024年4月24日 22:02

今週