イ・ジョンボム監督が描く孤独な殺し屋の贖罪と許しの物語「泣く男」

2014年10月18日 09:30


取材に応じたイ・ジョンボム監督
取材に応じたイ・ジョンボム監督

[映画.com ニュース] ウォンビン主演で孤独な男を描き、ヒットを記録した「アジョシ」で注目を浴びたイ・ジョンボム監督。4年ぶりに撮りあげた新作「泣く男」は、チャン・ドンゴンを迎え、少女を手にかけた殺し屋の孤独な戦いを映し出す。来日したジョンボム監督が、贖罪の道を歩む男のカタルシスに込めた思いを語った。

幼少期に母親に捨てられ殺し屋となったゴンは、任務中に誤って少女を殺してしまう。罪の意識に苛まれるゴンだったが、組織に少女の母親モギョンを葬るよう命じられ、最後の仕事としてモギョンの元へ向かう。

劇中、ゴンはかつての仲間らを相手に、激しい死闘を繰り広げる。無駄のない動きで敵を圧倒するゴンになりきるため、チャンはクランクインの5カ月前からアクション訓練に打ち込み、多くのシーンをスタントなしで撮影を行うまで完成度を上げた。さらにイ監督は、銃を使用した事件に関する動画を用いて、キャラクターの内面を掘り下げていった。「できれば目を覆いたくなるような映像ばかりでしたが、(銃を使うことで)本当におぞましい結果になるということを、ドンゴンさんと共有したかったのです。殺人を仕事としている人は心が荒廃し、自己嫌悪に陥って昔に戻りたいと感じると思うんです。映像から、そういうことを感じて役づくりをしてもらいたいと思いました」

イ監督は、かねてよりチャンとの作品づくりを熱望していたそうで「(ゴン役には)年を取るということがわかる年齢で、実際に家庭を持って子どもがいる俳優が必要でした。そういう方なら、ゴンの気持ちを理解してくれると思ったのです。ドンゴンさんは、非常に骨太でハンサムですが、心の中をのぞくとすごく繊細なところがあり、目の演技ができる方だと判断してお願いしました」

「泣く男」の一場面
「泣く男」の一場面

アジョシ」の現場では、ウォンビンとの対話を通じて物語を練り上げていったが、今回は多くの話し合いを必要としなかった。「キャラクター像が明確でしたし、ドンゴンさんも罪の意識を持つ殺し屋という役どころをよく認識してくれていたんです」。そして、「ドンゴンさんは20年以上役者として活動していますが、それだけ続けられるのは演技力だけではなく良いものを持っているからだと思うのです。ドンゴンさんとは同い年ですが、現場を引っ張っていく人間性が素晴らしく、現場スタッフやほかの俳優への気遣いは先輩のようで、自分も学ばなければいけないと思いました」と最敬礼だ。

イ監督の作品は、陰のある男たちが物語の求心力となる。「表向きはすごく強いけれど、内面はもろいところもあると思うんです。相手を制圧するテクニックを持った強い男であることは間違いないけれど、同時に死に近いところにいる。一歩間違えたらすぐに死があるという状況に身を置いているので、そういう人の心の中はものすごく激しいエネルギーがあって、とてもドラマチックだと思います」

この物語には、贖罪というテーマとともに、許しというメッセージが込められている。 「贖罪とともに、実はもうひとつ意味が隠されているんです。贖罪のエンディングではありますが、ゴンの思い出の場所で母親のことを思い出すシーンでは、大人になったゴンが子どものように泣いていますよね。あの場面にもうひとつの意味が込められていて、それはモギョンに対する贖罪の気持ちと、母親を許す気持ちなんです。母親を許す気持ちは、自分を許すということでもあると思うのです。この思いを最後に込めることで、観客が目の前で泣いているゴンを抱きしめてあげたいと思ってくれたらいいなと思ったんです」

泣く男」は、10月18日から全国で公開。

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