陰湿ないじめや日常にひそむ暴力描いたカンヌ受賞作 メキシコの新鋭監督に聞く

2013年11月1日 14:30


メキシコの新鋭マイケル・フランコ監督
メキシコの新鋭マイケル・フランコ監督

[映画.com ニュース]第65回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリ受賞作で、アカデミー賞メキシコ代表に選出された「父の秘密」が11月2日に公開される。現代社会の日常にひそむ暴力を冷静に見つめた本作のメガホンをとった31歳の新鋭マイケル・フランコが、作品を語った。

妻を事故で失った料理人のロベルトと娘のアレハンドラ。ふたりは新たな土地で過去の出来事と折り合いをつけ、生きる道を探そうとしていた。しかし喪失の傷が癒えないロベルトは自暴自棄な行動を取り、アレハンドラも転校先で陰湿ないじめを受けてしまう。娘は父の心の負担をかけたくないと学校での出来事を黙っていたが、ロベルトはいじめの原因を知ることになる。

「この映画で描いた問題のひとつは、“人がいかに他人(とても親しく、愛している人だとしても)とコミュニケーションを取れていないか”ということ」だという。暴力的な描写については「メキシコは、一歩外に出るともう戦場のような国なので、僕が書き上げた事はあまり驚くようなことではありません。メキシコ自体が血気盛んな国なので、脚本に出てくるエピソードは特に苦労せずに書くことができました」と脚本執筆を振り返る。

目を覆いたくなるような“いじめ”のシーンも繰り広げられるが「どんな集団社会でも、支配する者、される者という線引きが必ずあります。学校時代には、経験や知識の不足や未熟さによってなおさらこの線引きが強調されるように感じます。どんな遊び場でも行われている、一見無害なゲームの中にさえ、権力闘争の意図が隠されているのです。人間の成長過程において、子どもたちの残酷ともいえる本能は大抵そうした時に垣間見えるものです。しかしながら、私はそういういじめの実態報告のような作品を撮りたかったわけではありません。ただ、観客が理解しやすい題材として、この問題を選んだのです」とテーマ設定の理由を明かす。

第65回カンヌ映画祭監督賞受賞のカルロス・レイガダス、第66回カンヌ映画祭監督賞のアマト・エスカランテら、メキシコの新鋭監督が世界に台頭してきている。「メキシコ映画界は現在、とても良い時期を迎えています。才能あふれる若い監督をすぐに10名ほど挙げられるのはメキシコだけではないでしょうか。しかし、僕の映画は必ずしも国を意識しているわけではなく、もっと個人的な方法からアプローチしているので、この状況にそこまで過敏にはなっていません。メキシコに住んでいるので“メキシコ”という要素は僕の映画の一部にはなっているけれど、映画を制作する時は外的なものではなく、内側からくるものを大事にしています」と自身のスタンスについて語った。

父の秘密」は11月2日ユーロスペースほか全国順次公開。

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