奈良美智に1年半密着。ドキュメンタリーを完成させた坂部康二監督
2007年2月20日 12:00

仏頂面をした女の子の絵で親しまれる奈良美智は、日本だけでなく海外からも注目される人気アーティストだ。クリエイティブユニットgrafとともに、ロンドン、バンコクと展覧会で世界各地をめぐり、奈良の故郷である青森県弘前市に辿りつくまでの道のりを綴ったドキュメンタリー「NARA/奈良美智との旅の記録」の公開にあたり、坂部康二監督に話を聞いた。
05年春から約1年半に及び、奈良に密着した坂部監督。創作中に撮られることを得意としない奈良だが、本作には紙を裁断するところから、女の子の静かでいて雄弁な表情が描きあがるまでが収められている。坂部と奈良は、本作を撮る上でほぼ初対面の形で出会ったそうだが、「特別なことはしていません。人が出会って距離を縮めるときにするであろう、自然な行為の積み重ねでした。奈良さんのアトリエで、僕がカメラをまわしたまま置いて、別の作業をしていたこともありますよ。『原稿書く時間がないんだよね』という奈良さんに、『書きましょうか?』って聞いたら『マジで?』って(笑)。よく言えば、それぐらい打ち解けられたんじゃないかと思います」
昨年夏、弘前市にある古いレンガ倉庫で開催された大規模な展覧会「AtoZ」。ボランティア約900人が参加し、40以上の小屋を建てでき上がった1つの街並みには、3カ月で約8万人が訪れた。「grafの豊嶋さんは、奈良さんを『旅の連れ』と表現していましたが、2人はゴールに向かって一緒に旅をする同士のような関係。今回の『AtoZ』も、小学生が空き地を見つけて一緒に遊ぶ、その延長線上にあるような感じでした。あれだけ大きな企画なら複雑な事情も絡みそうですが、現場はとても和やかで、それが奈良美智という人の牽引力なのかもしれません」
韓国の少女が奈良に宛てた手紙、「悲しいときは奈良さんの名前を呼びます」の言葉が印象的。これまで1人で作品に向かい合ってきた奈良が、grafという旅の連れを得て見た景色とは? 「NARA/奈良美智との旅の記録」は2月24日公開。
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