劇場公開日 2023年2月23日

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逆転のトライアングルのレビュー・感想・評価

全133件中、1~20件目を表示

4.0権力が自然発生する過程

2023年4月30日
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鑑賞方法:映画館

権力についての鋭い洞察を見せてくれる作品だった。豪華客船が沈没して無人島と思しき場所で漂流生活をすることになった連中の権力構造が逆転する。サバイバルスキルを持ったトイレ掃除の女性が権力者となり、資本主義社会では権力者だった連中がひざまずくことになり、性的な搾取も行われる。
人は誰しも権力に溺れるといえば簡単に聞こえるのだけど、あの状況では彼女に付き従うのが生存戦略として最も正しいことは確か。人は結局のところ、一人でサバイバルできない存在なので、あのように寄りあいながら生きるしかなく、そうすると権力のヒエラルキーはどうしても発生してしまう。
リューベン・オストルンドは人間の生態観察の達人だ。しかも現代の人間の奇妙な矛盾を突くのが上手い。「フレンチアルプスで起きたこと」のきまずい人間ドラマも『ザ・スクエア』の現代アートをめぐる滑稽な状況も、どうにも人間社会が複雑化しすぎておかしくなっている様をあぶりだすのが抜群にうまい作家だ。一体全体、我々は何をしているんだろうみたいな気持ちになるんだけど、このおかしな状況に慣れてしまっている僕らは相当に狂っているんだろうな。

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杉本穂高

4.0社会の実験劇場、あるいは思考のテーマパーク

2023年2月27日
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147分の作品なのに全く長さを感じない。いざこの乗り物に乗車したなら息つく暇もないほど翻弄され、これまで考えもしなかった境地へ連れていかれる。その意味で、オストルンドの手がける作品のことを思考のテーマパークとでも呼びたいほどだ。冒頭のレストランでカップルが交わすダイアローグほど間に挟まりたくないものはないし、階級社会を凝縮させたあの豪華客船にだって絶対に乗りたくない。嫌だ嫌だ、と部屋に引きこもるハレルソン船長のことが本当によく理解できる。しかしそんな連中の勘違いの生態や悪趣味を皮肉り、最高のディナータイムをご用意したかと思えば、さらに価値観の軸をちょっと変えるだけで革命のごとき逆転現象が起きるのだから痛快である。現代社会にはびこる不条理や居心地の悪い状況を俎上に乗せ、さながら実験劇場のようにじっくり観察、吟味するこのひととき。終映後は見慣れた世の中がガラリと違って見えるから不思議なものだ。

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牛津厚信

4.0人が本性を露わにしていく姿を見るのは楽しい。

2023年2月26日
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鑑賞方法:試写会

笑える

悲しい

人が本性を露わにしていく姿を見るのは楽しい。

見た目がすべてでこの世の中で数少ない"女尊男卑"が罷り通るモデル業界に身を置く、モデルカップルの相手に対する差別意識。
豪華クルーズ船内で展開するブルジョワによる労働者差別。
状況の変化を受けて反撃に出る清掃員の恐ろしいほどの冷徹さ。

これまでも、『フレンチ・アルプスで起きたこと』や『ザ・スクエア 思いやりの聖域』で同じテーマを設定し、人々の本音を炙り出すことで問題提起してきたリューベン・オストルンド監督だが、最新作ではドス黒い笑いの量を増やすことで作品にエンタメ性を付加。ある事件をきっかけにした階級、性別、立場の逆転という既視感がある世界を豪華にアップデートしている。

登場人物は皆んなどこか病んでいるが、唯一まともなのは終始飲んだくれているウディ・ハレルソン演じる船長なのではないだろうか。そこにも、オストルンド独特の逆転の発想が生きているような気がする。

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清藤秀人

4.5格差社会を過激に風刺。事前情報がないほど楽しめる

2023年2月22日
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鑑賞方法:試写会

笑える

悲しい

知的

いやはや、圧巻の2時間27分。スウェーデンのリューベン・オストルンド監督の過去作「フレンチアルプスで起きたこと」や「ザ・スクエア 思いやりの聖域」を観て面白かったと感じた人なら、もう事前情報も予告編もチェックしないまま「逆転のトライアングル」を映画館で観た方がより満足度が高いはず。この作品に限らないが、あらすじの半分から3分の2ぐらいまで前もって教えてしまうのは常々疑問に思っている。本作の3章構成はおおむね起・承・転に合致するが、「転」の筋まで知らされると、それだけ驚きが半減してしまう。

ともあれ、オストルンド監督は、どの作品でも登場人物の当惑や居心地の悪さを観客に体感させるのが実に巧い。富裕層がひどい目にあったりするのを見ると、気の毒だなと思いながらもどこか「いい気味」と思ってしまう自分に気づき、それで自己嫌悪してまた居心地が悪くなるような。

ちなみに原題は「Triangle of Sadness」で、直訳すると「悲しみの三角」になるが、美容用語で「眉間にできる皺」を指すのだとか。男性モデルのオーディションのシーンで眉間と口元がどうのこうのというやり取りがあるし、主人公カップルのカールとヤヤ、それに第3章でからんでくるもう一人を加えた三角関係にもかかっていると解釈できる。もちろん、富と美と力に翻弄される人間の悲哀を描く三幕構成を示唆してもいるだろう。

最後に悲しいトリビアをひとつ。モデルのヤヤ役のチャールビ・ディーン(彼女自身もモデル出身)は以前交通事故の怪我で脾臓を摘出していて、腹部を露出している場面ではその手術痕を確認できる。脾臓がないと感染症のリスクが高まるそうで、昨年8月、細菌性敗血症により32歳で亡くなり、「逆転のトライアングル」が遺作になってしまった。本作のパルムドール受賞にも間違いなく貢献し、映画界での将来が大いに期待されていたのに、残念でならない。

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高森 郁哉

4.0塞翁が馬つーか

2024年3月24日
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鑑賞方法:映画館

知的

一つのイベントごとに胸糞とスッキリがきたりこなかったり。それを鼻で笑ったり笑えなかったり。

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mikyo

3.5好みの問題

2024年2月15日
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鑑賞方法:映画館

第1章で腹立たしかったヤヤが最後にはとても可愛く見えて1番好きなキャラクターになっており、第3章序盤でめちゃくちゃ応援してたアビゲイルが結局は理性も生理的にも受け付けない嫌いなキャラクターになっていたというのが正直な気持ち。

個人的なキャラクターの印象も最初と最後では見事に逆転しまったわけです。ヤヤ役のチャールビ・ディーンさん、本当に残念でなりません。ご冥福をお祈りします。

物語ですが、「面白かったー!」とはならず、「この散らばった感情どうすれいいの!?」と困惑したのが観終わった直後の感想。そして第2章で気持ち悪くなった。船で私も見事に酔った。実はこれに似た経験をしたことがある。

ただ、いろいろ解説&考察のサイトなどを見ると理解が及ばなかったところが補完され「なるほど」と思った。

少しテーマが被っているということで、小日向文世主演の『サバイバルファミリー』を思い出しました。

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りんごあめり

4.0いやラストおぉーっっ!

2023年12月31日
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鑑賞方法:DVD/BD

いやラストおぉーっっ!

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まるぼに

3.0こんな作品…初めて観ました

2023年12月8日
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鑑賞方法:DVD/BD

<映画のことば>
あなたの島での行動力にマジ感心しているの。女のリーダーが誕生するなんて。大富豪を飼い慣らした。めちゃ格好いい。

例えば、デート代はどちらが払うべきか。彼・彼女のちょっとした仕草が、どうしても気に入らない。
セレブと言っても、必ずしも名家の出とは限らず、一代成金にはありがちなな振る舞いのオンパレード。
迎える接客スタッフにしても、チップ以外に関心なし。
果ては、動力船にも帆があると確信している(自分は正しいと思い込んで譲らず、スタッフ=船長を見下す)セレブ客等々。
お上品ぶっている彼・彼女らも、海が時化(しけ)て船が揺れると、トイレに駆け込むでもなく、ところ構わず、その場で嘔吐の嵐―。

日常の生活で起こる人間模様を、真正面から事細かに取り上げて、こんなにも映像化・ストーリー化した作品って…評論子には寡聞にして、本作の他に思い当たりません。
ネットの評では「人間に対する鋭い観察眼とブラックユーモアにあふれた作品で高い評価を受けてきた」と評されているリューベン・オストルンド監督は、その手になる作品は初めての鑑賞でしたが、こんな作風の作品を撮る方なのでしょうか。

登場人物の細かい所作から、その心の動き(考え)を紐解いてゆかなければならないのは、どうかすると映画はざっくりと観てしまい、周囲に「えっ、そんなシーンもあったっけ?」とピントを外してしまいがちな評論子には、少しばかり辛いものがありましたけれども。

内容的には、第3部が、もちろん圧巻!
「進化論」を著(あらわ)した著名な自然科学者・ダーウィンのものとされる次の言葉が脳裏に浮かびました。評論子には。
「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一、生き残るのは、変化できる者である。」

それなりの教育を受け、それゆえに、それなりの知性と教養とを身に付けていたであろう(?)豪華クルーズ船の乗客だった紳士・淑女を差し置いて、最後の局面では、アビゲイル(作品の前半ではトイレの掃除を怠らないよう、廊下越しにきつく言い渡されるシーンがあるだけで、映像には姿すらまったく現さない)か、彼・彼女らに対してリーダーシップを執ることができたのは、彼女が、当該の局面に応じて変化する(いち早く考え方を切り換えて行動する)ことができたから、ということなのでしょう。
長らく「下積み」に耐えてくることで、彼女には逞(たくま)しい生活力が身についていたということなのだと思います。
その生活力にモノを言わせて、平時においては、絶対に揺らぐことのないトライアングル(社会のヒエラルキー)を、いともあっさりと「逆転」する…。その鮮やかさに目を見張ります。
その意味で、邦題は「いい得て妙」だと思った次第です。評論子は。

賤吏の身に甘んじていても、人生においては、こんなふうな「変化できる者」としてありたいものです。評論子も。

他に類例の少ない奇抜な作風の一本として、佳作の評価に値するものと思います。

(追記)
評論子が参加している映画サークルの「映画を語る会」でお題作品として取り上げられていた一本でした。
今は地方暮らしをしている評論子には劇場公開時に観ることができず、当時は「聴講生」として悔しさを抑えながら、話し合いを聞いていたものでした。DVD化がなり、ようやく観ることのできた作品でした。
話題に取り上げられていなければ、おそらくは観ていなかっただろうと思います。
教えられて佳作に当たる―。
映画を観ることの楽しさは、そんなところにもあるように思います。評論子は。

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talkie

4.5映画的に日常の「嫌なこと」を。

2023年11月22日
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いやあおもしろい。
147分が食い入るようにみてしまう
漂着してからの権力構造の変化、はもちろん、
冒頭の食事代をどっちが払うか、という考え方も。
パルムドールはあたりまえだ。

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yep11016

3.0汚いの苦手な方は注意

2023年11月17日
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鑑賞方法:VOD

長かった〜。冒頭のバレンシアガとH&Mの比較は面白い!汚いのが苦手なので、中盤はキツかったです。どんな理由で島に漂流するのかと思ったら、予想外!皮肉だらけであんまり笑えなかった。ロシアのおじさんが1番マシだったかな。

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サラ

1.5チャールビディーン、むっちゃかわいい 船の女性スタッフがちょっとセ...

2023年10月2日
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チャールビディーン、むっちゃかわいい
船の女性スタッフがちょっとセクシー格好をしてるのも良かった
展開が遅過ぎ
小気味よく進めて欲しかった

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あきら

4.080点 環境によって立場は変わる。

2023年8月13日
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鑑賞方法:DVD/BD

笑える

この作品は階級の違いを面白おかしく皮肉った内容で、お金持ちの立場が逆転するシチュエーションを描いています。監督の独特な皮肉のセンスが際立ち、上映時間は長いものの、その間にしっかりと階級の差を表現しているため見ごたえがあります。
賛否両論がある作品ですがこういう作品が増えて欲しいなぁと思う。

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あっぷる

5.0so interesting 素晴らしい

2023年7月13日
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鑑賞方法:映画館

so interesting 素晴らしい

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晴

5.0映画としての醍醐味感じる

2023年7月7日
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鑑賞方法:映画館

ハラハラしたり、まさにトライアングルなやり取りで、オチはファンタジーっぽく。
キャストはイイ。心に刺さるし、意味合いはコメディともとれる。

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たかなな

4.0昨日鑑賞。映画の日で全員会員価格、会員としては損した気分(笑)2本...

2023年7月2日
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昨日鑑賞。映画の日で全員会員価格、会員としては損した気分(笑)2本立て1本目。

新感覚、ブラックコメディ。かなり笑えた。
1部 デートの食事代はどちらが払うべきか。そういや最近そんな論争ありましたね。しつこい論争に最初は辟易、が、そのしつこさがだんだんツボに(笑)
2部 高級クルージング。アホな船長のせいで修羅場に。間違っても食べながら見ないでください(笑)セレブたちもたいがいです(笑笑)
3部 サバイバル。ヒエラルキー逆転。男たちがアホ過ぎ。雲おばさん。もう地獄絵図。

そういや、ずっと飛んでた虫はどういう意味?
スタイル抜群の女優さん、亡くなったそうですね、なんとも残念、合掌。

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はむひろみ

4.0ダーティな映像の合わせ鏡の部分を観るべし

2023年5月5日
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鑑賞方法:映画館

鬼才リューベン・オストルンドのカンヌ・パルムドール二回目の受賞作。
最初の受賞作『ザ・スクウェア 思いやりの聖域』では、スノッブな富裕層のキューレーター対アジア系移民。本作では豪華クルーズ船の富裕層対クルーズ船のスタッフ(アジア系移民はトイレ係等)。
ただし、本作における富裕層の取り乱し様は、『ザ・スクウェア』のレベルをはるかに超えている。
嵐で沈んでいくクルーズ船で、彼らは豪華ディナーで出された料理を吐きまくる。
さっきまで船のスタッフたちを上から目線でこき下ろしていた輩たちが、である。

オストルンド監督は、とことん上から目線の富裕層を否定したかったのだろうか?
『パラサイト 半地下の家族』や『』エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」で描かれる移民や格差を、よりダーティな熱量で吐き出したかったのだろうか?
ゴミ置き場で袋の中のゴミをぶちまける、マスタベーション的なキューレーターでは描き切れない世界を映像に焼き付けたかったのだろうか?
兎にも角にも、富裕層の象徴=豪華クルーズ船を、見事にダーティーな巣窟に変えた映像は圧巻のひとこと。

ただ、本作の品定めを、ゲロまみれの映像で一蹴するのは早計かもしれない。
マルクス主義の変人気質のアメリカ人船長と資本主義の金の亡者のロシア系商人の対話。
売れっ子のインフルエンサーの女モデルと落ち目で彼女に奢ることをけちる男モデルの対話。
無人島でのトイレ係のアジア人スタッフと男モデルとの食べ物と性の交換。
一見どうでもいい部分がダーティな映像の合わせ鏡のようで、何か気になってしょうがない。

賛否両論は大いにあろう。が、もうこの監督の作品はたくさんだ、という気には到底なれそうもない。

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ジョー

3.5悪いとこが出てる映画

2023年5月3日
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普通に汚いシーンが出たり、汚い考えが出てる。
綺麗事を捨てた映画だった。

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なる

3.5辛辣な皮肉のオンパレード!

2023年4月21日
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環境の変化等でなかなか映画も観れないしレビューも溜まっております(^^;

第95回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞にノミネートされた今作も今さら感がかなりありますがレビューを軽く記しておきます。

冒頭のモデルオーディションシーンでの「H&M、バレンシアガ!」はかなりパンチがあって監督のキレッキレぶりに驚きました。
ファッションショーで大物が来ると席を弾かれる所も風刺たっぷり。
そしてその後の痴話ゲンカ。延々と言い争うカップルの描写に(何ともくだらない喧嘩!)と思いつつも引き込まれるしリアリティを強く感じました。

続く第二章は豪華客船が舞台。
部屋に閉じこもって全く仕事しないアル中の船長はウディ・ハレルソンがまさに適役でしたね!
セレブと船員の対比もブラックユーモアで鋭く描き、とても面白いのですが、やはりあの地獄絵図がねぇ。
「バビロン」の悪夢再び、のゲロゲロシーンが続きました。
何度も言いますが、かなり苦手なのでね。。

そして第三章は一転して流れ着いた無人島。
ここではサバイバル劇、セレブと船員の逆転劇が。
この第三章がメインですね。

曲者揃いのセレブやお金のためなら何でもする使用人への辛辣な皮肉、何もない場所での力関係の逆転、
全てをとことんブラックなユーモアで包み込み、映画ゆえに誇張はあるけど社会の現実をシビアに見せてくれてました。

音楽の使い方もユニーク。
この映画でデズリーの「Life」を久々に耳にしたのでデズリーがマイブームです。懐かしいですね。

アカデミー賞では3部門でのノミネートのみに終わりましたが、昨年のカンヌではパルムドール(最高賞)を受賞しています。
なるほどですね。

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ごーるどとまと

5.0いやぁー

2023年4月6日
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気持ちいい!観たい❕観る❕メモたけん❕めっちゃ好きそう❕

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ミスター

3.5現代世界の縮図としての豪華客船

2023年4月5日
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鑑賞方法:映画館

 同監督の『ザ・スクエア 思いやりの聖域』と同様にブラック・ジョークに満ちていたが、少なくとも私の周囲の観客から笑い声はほとんど聞こえなかった。如何にもヨーロッパ的なジョークと言うべきか。
 ここに描かれた豪華客船はまさに現代世界の縮図という感じ。新興財閥(オリガルヒ)のトップのロシア人、武器製造会社を経営する英国人夫婦、M&Aで巨額の金を得た人物、SNSのインフルエンサーなどが客で彼らに直接サービスするのは白人の乗組員。東南アジアなどからの有色人種の乗組員は機関室とか清掃の仕事をしている。船酔いで金持ち客たちが吐いたゲロを彼らが拭き取っている場面は哀しい。船長は自らをマルクス主義者だと言い、税金逃れで巨富を築いた客たちを相手にすることを苦々しく思っているのだが、飲んだくれでどうしようもない。ロシア人客とレーニンやマルクス、ケネディ、レーガンの言葉の引用合戦してた。
 サバイバル能力がすぐれたトイレ清掃婦が漂着した島で君臨し、白人のイケメンの若者をペットにしてしまうのは現代世界へのキョーレツな皮肉。
 最後のシーンは果たしてどうなったか観客に判断を任せている終わり方だった。とにかく日本ではウケない映画だろうなぁ。もし日本人や中国人が登場するとしたら、白人客に媚びを売る乗客のような役回りかしらん。

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しばいぬるり