「宇宙時代とあの頃へのノスタルジック・ラブレター」アポロ10号 1/2 宇宙時代のアドベンチャー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0宇宙時代とあの頃へのノスタルジック・ラブレター

2022年7月20日
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鑑賞方法:VOD

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リチャード・リンクレイターは異才の人である。
一組のカップルの再会を約10年置きに取ったり、一人の少年と家族の12年を役者を変えず撮り続けたり、基本インディーズだがメジャー作品も撮ったりする。
アニメーションも監督。勿論ディズニーみたいなCGの子供向けではなく、実写映像にアニメーションをデジタル・ペインティングした“ロトスコープ”で表現し、大人向け。
これまでにも『ウェイキング・ライフ』『スキャナー・ダークリー』などもロトスコープを用い、正直クセがあって好き嫌い分かれるが、本作は見易かった…いや、じんわり心に残り、良かった。
何故なら本作は、リンクレイターの半自伝的作品でもある。

1969年。米テキサス州ヒューストン。NASA近くの町。
アポロ10号のパイロットに選ばれた少年。
訓練を経て、アポロ10号に乗り込み宇宙へ飛び出し、遂に月面着陸の時を迎える…。
「??」な開幕。勿論これは、史実でも現実でもない。主人公の少年の妄想。
アポロ計画と月面着陸に沸いた瞬間を、宇宙に憧れる少年の視点(妄想絡め)で描く。
つまり、実在はパイロットだが、アポロに乗る時も、宇宙にいる時も、月面に降り立ったのも、今自分がそこにいる。
自伝的作品であっても、やはり変化球なのがリンクレイターらしい。

リンクレイターの青春時代、60年代のカルチャーが見てて楽しい。
いつもながら音楽には疎いが(でも、楽曲センスはナイス)、映画やTVドラマの数々…。
リンクレイター少年(劇中ではスタンだが)がワクワクした映画が、『2001年宇宙の旅』。面白くて、学校で友達に語るくらい。(にしても、あの難解作を子供の時にハマるとは、やはりリンクレイターは子供時代から天才…?)
TVは伝説番組だらけ。『ダーク・シャドウ』『宇宙大作戦』『スパイ大作戦』『トワイライト・ゾーン』…。
SFやホラーが大好き。深夜帯のB級SF/ホラーでは、『マックイーンの絶対の危機』や日本から『マタンゴ』。
学校が無い日は一日中TVの前にかじりつくくらいの生粋のTVっ子。何だか、親近感感じるなぁ…。
6人兄弟姉妹の末っ子。歌手の歌番組が見たい姉たちとはチャンネルの奪い合い。
時々兄弟姉妹たちにからかわれるけど、仲は悪くはない。姉のバイトするアイス屋でサービスして貰ったり。
父親はNASAで働いている…と、つい見栄を張って学校で嘘を言ってしまう。実際はNASAへ宅配する仕事。近所の親たちの多くはNASAで働いているのに…。
母親は大家族の世話や食事をテキパキと。
厳しい時もあり、優しくもあり、平凡な両親。
家族皆でドライブ・イン・シアターに行ったり、NASAのテーマパークで遊んだり…。
何もかもが楽しく、懐かしい、あの頃へのノスタルジック・ラブレター。

月面着陸も家族皆で。
皆はTVで見てたけど、僕は妄想と想像という宇宙で、アポロに乗って月に降りたんだ。

誰だって興奮の偉業を、自分に置き換えて想像した事あると思う。
あの時あの場所にいたのは、自分。
永遠の憧れ。夢。

好き嫌いは分かれる作品かもしれないが、個人的には、リンクレイターをこれまで以上に身近に感じた愛すべき作品であった。

近大