劇場公開日 2022年5月6日

  • 予告編を見る

「あまりの悲惨さに息が詰まる」明日になれば アフガニスタン、女たちの決断 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0あまりの悲惨さに息が詰まる

2022年5月13日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

 カブールで暮らす妊娠した3人の女性のそれぞれの生き方を描く。それにしても、アフガニスタンの男性権威主義と女性差別は酷いものである。

 ハヴァが暮らすのは、妊娠中の妻の身体を心配するよりも世間体を優先する夫と、嫁を家政婦扱いする横柄な舅と痴呆症の姑のいる家だ。ルーティンワークの家事の他にやたらに命令する舅の言うことをこなし、痴呆症の舅の面倒を見て、身勝手な夫が急に連れてくる大勢の客の飲み物や食事の準備もしなければならない。自分で客を連れてくるくせに、買い物を頼むと渋る。
 マリアムの別居中の夫は、愛情よりも欲望優先で浮気を繰り返す。マリアムが7年間の無為な結婚生活に疲れて離婚を決意すると、よりを戻そうと必死になる。人格の破綻した夫にマリアムはとことん疲れ果てる。
 アイーシャの元彼氏は、アイーシャに飽きて自分から別れたのに、未練の電話を掛けてくる。

 女性たちの相手の男たちに共通するのは、女性は男の所有物という感覚だと思う。邪険に扱ったことを顧みもせず、離れていこうとする女性を引き止める。妻になって妊娠したら、もはや何処にも行けない。だからハヴァが一番悲惨である。お腹の子供だけが唯一の希望であり、頼りはアッラーだけだ。

 製作は2019年だから、2021年夏のタリバンのカブール侵攻より前の話である。女性差別主義で権威主義のタリバンの統治下の現在はもっと酷い状況であることは想像に難くない。経済的にも困窮していて、娘を金持ちに売り飛ばす人が後を絶たない。女性にとって、女の幸せよりも生き延びることが優先される状況である。このような映画が製作できたのも、タリバンの統治下より前だったからだろう。あまりの悲惨さに息が詰まる。

耶馬英彦