劇場公開日 2022年4月29日

「美しい箱の中身は寂しい」ホリック xxxHOLiC marumeroさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 美しい箱の中身は寂しい

2025年12月2日
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鑑賞方法:VOD

本作の最大の功績は、妖艶で退廃的な世界観を、蜷川実花監督特有の色彩感覚で見事に具象化した点にあるでしょう。
美術やセットには魔力のような力強さを感じますし、衣装もまた芸術的で、視覚的な情報量の多さと、陶酔感を誘うカットの美しさは、圧倒的蜷川実花ワールドの到達点といえるでしょう。
正直、これまでは監督の色彩の使い方には否定的でしたが、ここまでやられてしまっては降参です。お見事です。

しかし、一方で役者の演技が背景に負けてしまっている印象を受けます。演者が悪いのではなく、いくら感情を乗せて動いても、美しいセットの一部として配置されているような印象を受けるのです。
登場人物の関係性の構築が欠如しているようにも思えます。ここでも、過剰な演出や視覚効果がノイズとなり、観客がキャラクターに感情移入する余地を奪っているように思うのです。
圧巻のビジュアルと怪演が見事だった女郎蜘蛛役の吉岡里帆さんにしても、あくまで視覚的なアクセントとして消費されており、物語上の脅威や深みとしての機能は不十分でした。
圧倒的な映像美に反比例するように、キャラクターたちの描写には致命的な浅さが目立ちます。
美しい箱の中身はなんだか寂しい、そんな作品でした。

marumero
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