劇場公開日 2022年5月6日

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「「気にせずにすむ人」と「気にしなくてはいけない人」」マイスモールランド 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0「気にせずにすむ人」と「気にしなくてはいけない人」

2022年5月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

これは今年を代表する日本映画の一本だ。川和田恵真監督は大変才能のある作家であることをデビュー作で見事証明した。脚本も的確で、役者たちの芝居を引き出すのも上手い。在日クルド人が直面する理不尽な現実を見事に浮き彫りにする。是枝監督の分福の出身だが、どこか「誰も知らない」っぽさを感じさせるというか、是枝監督の演出力と社会を見つめる距離感の取り方などをかなり色濃く受け継いでいると思う。
日本人なら簡単に超えられる東京と埼玉の県境が、クルド人である主人公には大変に重たい境なのだという現実。日本人は県境を超える時、特別な感慨など持たないだろうが、県境を超えるだけでものすごく大変な思いをする人々がこの国にはいる。
マジョリティとは「気にせずにすむ人々」のことだと社会学者のケイン樹里安は言った。本作は、まさに「気にせずにすむ人々」と「気にしないといけない人々」の違いをわかりやすく描いている。サーリャは県境を気にして生活しないといけない。だが、日本人の聡太は県境などほとんど気にせずにすむ。
今もっとも観られるべき作品の一本。川和田恵真監督の才能を日本映画界は大切にしてほしい。
そして、機会があれば「東京クルド」というドキュメンタリー映画も一緒に観てほしい。

杉本穂高
シャムシュローシェさんのコメント
2023年9月17日

マジョリティとか関係ありません。パスポートを持って飛行機代を自分で出してやってきたクルド人に国に帰ってもらえば解決する話なのです。女子高生が主人公ですが、悪いのはこの親です。入管法が悪いのではありませんし、言ってしまえば差別ですらありません。

シャムシュローシェ