劇場公開日 2021年11月19日

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「【”王すらもいない世界を・・”学問を学ぶ真の意味を、豊かな海と海の幸と共に描いた作品。流刑になった豊富な知識を持つ清廉な気性の学者と、漁夫との終生の交流と絆を描いた作品でもある。】」茲山魚譜 チャサンオボ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【”王すらもいない世界を・・”学問を学ぶ真の意味を、豊かな海と海の幸と共に描いた作品。流刑になった豊富な知識を持つ清廉な気性の学者と、漁夫との終生の交流と絆を描いた作品でもある。】

2022年7月24日
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鑑賞方法:VOD

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■19世紀初頭の朝鮮。
 幼き王、純祖に代わり実権を握った祖父母貞純は天主教と関わりの深い学者丁三兄弟を迫害する。
 黒山島(茲山)に流刑となった長兄、丁若銓(ソル・ギョング)」は、そこで豊かな海と自然にめぐり会う。
 海の生物の魅力に取りつかれた彼は、庶民のための“海洋学書”を書き記そうと決心する。
 そんなある日、丁若銓は誰よりも海の生物に詳しい心優しき、若き漁夫・昌大(ピョン・ヨハン)と出会う。
 四書五経を学びたい昌大と、“海洋学書”を書きたい丁若銓はお互いに知を与えあい、次第に深い絆を築いていく。

◆感想<Caution! 内容に触れています。>

・海洋生物学書「茲山魚譜」が、生まれた経緯を、学問を学ぶ大切さを時にユーモラスに、時に当時の腐敗し切った支配層、両班の姿を交えつつ、描き出している。

・昌大が、丁若銓の指導の下、知を蓄えていく様を見た、それまで妾の子として見下していた、両班の父、張が彼を、両班にしようと画策し、昌大は丁若銓と、袂を分かつ。
ー このシーンでの、丁若銓を演じた韓国の名優、ソル・ギョングが言い放った言葉。”偉くなって、金を稼ぎたいだけだろう!”
  俯く、昌大。印象的なシーンである。ー

・そして、両班になった昌大が知った、腐敗し切った支配層、両班の民を人として扱わぬ姿。
ー 丁若銓が且つて言った”王すらもいない世界を・・”と言う言葉の崇高さが、心に沁みる。-

<時代劇の巨匠とも呼ばれるイ・ジュニク監督が、こだわりの水墨画のように美しいモノクロ映像と共に、不思議な縁で結ばれた師弟の行く末を感動的に描き上げた作品である。
 良作であろう。>

キャスト

NOBU