劇場公開日 2022年4月1日

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「幼い頃の事故から車と恋に落ちた女性の狂気的な行方が、ある出会いでより想定外になっていく不思議な映画」TITANE チタン 山田晶子さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5幼い頃の事故から車と恋に落ちた女性の狂気的な行方が、ある出会いでより想定外になっていく不思議な映画

2022年4月1日
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鑑賞方法:試写会

第74回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールに輝いた作品と知った上で本作を見ると驚く人が多いかもしれない。序盤のイメージは妖艶ながらも、恐ろしくて痛いシーンが続き、見る側は早い段階で予想を裏切られたような気分になり、展開も含めて謎だらけで、最後まで見届けるしかない映画でもある。風変わりな作品のため、怪作が苦手な人なら途中で退席してしまうかもしれない。
父親が運転する車の後部座席で、エンジンの音に合わせて唸る少女(アレクシア)の冒頭シーンから、既に独特な雰囲気を醸し出していた。アレクシアは父親に注意されても止めようとしない。「彼女は車と会話でもしているのだろうか?」と感じた瞬間、交通事故に遭ってしまう。この序盤の少女の時のエピソードから、話はどんどんエスカレートしていく。
アレクシアは事故の治療で、頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれる。
この先の大人になってからのアレクシアについては、常識を軽々と超えるような展開になり、時には痛々しい描写もあり、本作を見る際には「目を背けない」という覚悟が必要になってくる。
とは言え、後半の孤独な高齢の消防士との奇妙な共同生活から何かが変わっていき、アレクシアの底力と生きることへの執着心が、見る側の心に突き刺さっていくと私は感じた。
ラストの結末も想像を絶するもので、これがカンヌ国際映画祭で最高賞を受賞するというのもカンヌの懐の深さのようなものを感じる。
恐らく見る者によって感想は全く異なるであろう衝撃作。私はこの独自性を評価したい。

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山田晶子