劇場公開日 2022年7月1日

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「カンヌ国際映画祭で女優賞受賞、アカデミー賞で脚本賞と国際長編映画賞のノミネートは伊達じゃない、大人の恋愛映画。」わたしは最悪。 細野真宏さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5カンヌ国際映画祭で女優賞受賞、アカデミー賞で脚本賞と国際長編映画賞のノミネートは伊達じゃない、大人の恋愛映画。

2022年7月1日
PCから投稿

本作は、脚本と主演女優に大きな特徴のある作品です。
まず脚本は「序章」「12章」「終章」から構成されています。
序章で、「医大は成績優秀者に相応しい進路だ」と考える主人公ユリヤ。でも想像と違うと、医大を辞め心理学へ。そして心理学もピンと来ないと写真家に、と自分探しをします。
そして、パーティーでマンガ家と出会います。
それ以降の各章にはタイトルが付いていて、分かりやすい構成になっています。
(途中、ユリヤが時間を止めるシーンが1回出てきますが、これは「ユリヤの空想」を表現したものです)
2022年の第75回カンヌ国際映画祭で是枝裕和監督作「ベイビー・ブローカー」で主演したソン・ガンホが男優賞を受賞しましたが、前年の第74回カンヌ国際映画祭でユリヤ役のレナーテ・レインスベが初主演で受賞しています。様々な顔を見せるユリヤを見ていれば、これは納得がいきます。
そして本作はノルウェー語なので、アカデミー賞では「国際長編映画賞」に該当し、まさに日本の「ドライブ・マイ・カー」と賞レースを競っていたのです。

本作の邦題「わたしは最悪。」について、2つの意味で考察が必要だと思います。

1つ目は、「邦題のセンスがないのでは?」ということ。
これについては、原題のノルウェー語では「Verdens verste menneske」となっていて直訳すると「世界で一番悪い人間」という意味になります。
ただ、これは正直なところ分かりにくいと思います。
英語版では「The Worst Person in the World」と、そのままです。
そこで邦題は、このノルウェーでの慣用句を分かりやすく「わたしは最悪。」と訳しただけなのです。

2つ目は、「そもそもどういう意味なのか?」ということ。
これは、ユリヤが「ある段階」で頭に浮かぶセリフだと私は解釈しています。
その「ある段階」は、人によって異なるかもしれませんが。

ひょっとしたら1回目では作品の良さが伝わりきらないのかもしれません。そこで、もし機会があれば2回は見てみてほしいです。有名な賞を受賞したからと言って、誰にでも合う作品なんて無いのだと思います。
でも、この作品は、「別の機会に見て、良さが実感できたりする名作」なのだと私は考えています。
やや大人な映画なので「R15+」なのも納得ですが、大人になったからこそ分かる作品と言えます。

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細野真宏