あらののはて
劇場公開日 2021年8月21日
解説
「カメラを止めるな!」のしゅはまはるみ、「イソップの思うツボ」の藤田健彦、舞台演出やアニメ作品に携わってきた長谷川朋史による自主映画制作ユニット「ルネシネマ」の第2作。25歳でフリーターの野々宮風子は、高校時代に美術部の男子生徒・大谷荒野に頼まれて絵画モデルをした際に感じた謎の絶頂感を、いまだに忘れられずにいた。絶頂の末に失神した風子を見つけた担任教師の誤解によって荒野は退学となり、それ以来、風子は彼と会っていない。友人の珠美にそそのかされた風子は、荒野に会いに行くことを決意。現在はマリアと同棲している彼のもとを訪ね、再び自分をモデルに絵を描くよう迫るが……。女優・ダンサー・振付家として活躍する舞木ひと美が主人公・風子、「あいが、そいで、こい」の高橋雄祐が元クラスメイトの荒野を演じた。
2020年製作/69分/日本
配給:Cinemago
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全てにおいてつまらない作品でした。脚本も編集も監督も評価するに至らない。
綺麗な空の描写、気持ちと合わせる音楽とかよかったけど、心情の部分は??の感じだった。
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逆光の照明無し、カメラ固定でフレームアウトも関係無し、ドン引きの画角など、変わった演出をしようと創意工夫した監督の意図は分かります
ですが、それらは先人が無いと結論付けた演出でしかありません
せめて、主人公の1番最高の表情を切り取るために、そっちを引き立てるために敢えてそれ以外をオフにしたとか一貫性があればと思ったんですが、意外と表情が見える画もところどころある……
1番最高だと思ってるんだろうな、という画ももちろん主人公の表情がよく見えましたが、それ以外も見える時は見えるし、見えない時は見えないしで、その一貫性の無さで結局すべての演出が監督の無駄な遊びにしか思えませんでした
絶頂期の8年前、高校時代は顔が見えるけど、喪失期の現在は顔が見えないとか、荒野に会えて再び表情が見えだすとか、そういう使い分けでも良かったと思います
主人公の表情をオフにしまくるのに、荒野の彼女のアップはちゃんと入れるのも意味不明でした
観客は主人公の感情に共感して物語に没入したいんです
主人公の顔は見せないように見せないように編集されたら没入できません
荒野や彼女や脇役のアップは見せるのに……だと余計に困惑します
(どうでもいいですが、彼女のアップでピンボケしてる画もそのまま使ってるし……)
観客を主人公に共感させる、それをサポートするために演出があると踏まえてもらえれば、演出の仕方も変わったんじゃないかと思います
脚本は普通に描けば短編30分ほどの内容しかなかったです
ワンカット長回しによる不要な間とか、いらない会話とか、いらないシーン、いらないカットが多くて、回想みたいに同じ画の使い回しとか、どうでもいい脇役だけのシーンとか、編集もルーズだったので、まるで薄めたカルピスのようです
こっちは早く先が見たいのに、展開が遅いからどんどん気持ちが離れていきます
あと、なぜ8年経ってようやく荒野に会えたのかが意味不明でした
実家に電話して住所を教えて貰えるなら、翌日に電話しても良かったはず
というか実家が変わってないなら直接家に行けばいつでも会えたはず
荒野が会うのを避けていた、とありましたがその理由も不明瞭だし、主人公が8年間ずっと探していて、ようやく新たな手掛かりが見つかったから物語が動き出したとかでは無いんですよね
この辺がすごいご都合な脚本だなと
それに荒野の彼女もご都合で主人公に協力的だなと思いました
空手やってた時の知り合いとかすごい不自然でご都合な設定とセリフが急に入ってきて、こっちが恥ずかしくなりました
基本的に脚本は主人公に不利に不利に働かないといけないのに、8年後からは有利に有利に展開していくから、それはちょっと無いなと思いました
そして、1番頂けないのは最終的に付き合う付き合わないの低俗で在り来たりな話に収束したこと
結果、主人公は振られてしまいましたが、ただの恋愛感情ではない、それ以上の未だ名前もない感情、新しい形の人間関係を見せてくれると思っていたので、付き合う付き合わないの在り来たりなオチで終わったのが非常に残念でした
青春恋愛映画は在り来たりですが、導入の切り口は確実に新しかったので結構期待しましたが、終わり方も新たな何かを見せてくれていたら……と思います
細かいことですが、主人公が口から出したガムの置き方が超不自然でした
あれは、前に座ってる荒野が次に食べやすいようにしてあげている置き方です
あと、ケンカしてる主人公と荒野の彼女が、意味あるセリフを言うときにフレーム内に戻ってきたりとかも不自然でした
自然体みたいな演技・演出を押している割りに、こういう不自然な演技を役者にさせて、それをそのまま活かしてるのが、監督本来の演出レベルを表していると思いました
そういう最低限の演技を付けられるようになってから、新しい演出を探しても良いと思いました
2021年9月4日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
初のシネマロサインディーズフィルムショーでの鑑賞。ホントはのんびり夜風に当たりながらすぐに感想を書きたかったけど、このご時世なので翌日になっちゃった。
なぜこんな前フリをしたのかと言うと、個人的には今後も記憶に残るような上質で良質な映画体験だったから。今年21の自分からすると、作中で綴られる"8年の空白"はかなり興味深い。それが新鮮な余韻をもたらしてくれるから。
鑑賞後に関係者と監督さんが来ていたので少し談笑した。聞くと、舞台も手掛ける監督さんで、固定された視点は意図したモノらしい。目線を画一的にすることによって生まれる空白、そしてそこに幾重にも巡らせた自分の想像が入り込む。その感覚が今まで味わったことのない世界を開かせてくれる。
作品の内容は非常に硬派でなんとも理解しにくい。なぜなら、絶頂体験に巡る想いとその行方による人間的本質を探るのだから。そりゃ今カノみたいな気持ちにもなるし、デッサンのモデルで絶頂する人の理解ができる方が少ないに決まっている。しかし、初恋が"衝動的"だったらいつだって脳裏にこびりついて離れないと考えれば同情できる。その先を観たかった気もするが。
やましい事を一つも入れず、精神的な愛を問うような深みがかなり心に響く。大胆に挑んだ構図も今なら納得できるし、このポテンシャルに凄みを覚える。観てよかった。
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