劇場公開日 2021年7月24日

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「バレアリック・ミュージック」太陽と踊らせて カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5バレアリック・ミュージック

2021年7月28日
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鑑賞方法:映画館

幸せ

地中海のイビサ島(スペイン)の伝説的DJ、ジョン・サ・トリンサを描いたドキュメンタリー。イビザ島は1960年代のヒッピームーブメント時代はヌーディスト島だったらしい。スペイン政府の抑圧的政策を逃れて、たくさんの芸術家たちが移住する一方、夏季は海の家、ナイトクラブが栄えていった。1980年代のディスコムーブメントの終わり、90年代から25年間、イビサ島のサリナスビーチの SA TRINXA (サ・トリンサ)というレストラン(海の家)でパーティサウンドとは一線を画すこの島独自の“バレアリック・ミュージック”を提供し続けてきたジョン。
彼のDJを目当てに毎年島を訪れる人たち、競争社会に疲れイビザに移住した元・建設業のおじさん、かなり高齢のイラン人音楽家などのインタビュー映像を交えて、ジョン自身の人生が語られる。彼の経歴は元々70年代のロックミュージシャンに的を絞った写真ジャーナリストだったらしい。DJへの転身のきっかけは空き巣に入られたこと。大量のレコードは持って行かれなかったかららしい。ロンドンでDJをしていたが、友人と一緒にクルマに一杯のレコードを積んでイビザ島に越してきたが、ほどなく内輪揉めで一人残ることになり、途方に暮れていたが、ドタキャンしたスペイン人DJの代わりをビーチの親分から頼まれる幸運に恵まれる。
人懐っこい笑顔のジョン。あおり系のDJスタイルではなく、豊富な音楽知識、曲の繋ぎのソフトな語りが絶妙で、SA TRINXA から発信されるラジオ番組は地元住民のファンも多い。
しかし、最近は大規模資本が進出し、ヨーロッパのクラバーのメッカの島も様子が変わって来てしまい、ジョンのイビザ島への情熱も島の変化とともに薄らいでしまったようだ。そんなジョンが落ち込んだときに聴くのはブルースだと言う。仕事が減ったり、DJの要求が変わって来てしまったのかもしれない。ひとつの時代の終わりに対する郷愁を美しい海辺の夕陽の映像が引き立てる。
でも、ジョンはインドネシアやNYの海の家でもバレアリックでDJ業をして、稼いでいるようだ。
台南生まれ新宿歌舞伎町育ちの映像作家リリー・リナエの長編初監督作。
イビザ島のすぐ南には切り立った断崖絶壁の大きな山と低い丘からなるフォルメンタル島がある。入江や多くのビーチが2つの丘の間に広がり、今でもヌーディーストビーチがあるらしい。中世からの古い建造物は世界遺産に指定されている。一度、行きたいなぁ。

カールⅢ世