劇場公開日 2021年7月9日

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「去った者と残された者」映画:フィッシュマンズ とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0去った者と残された者

2021年7月24日
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後追い世代でも分かるハット&ボーダー好き(?)サトちゃんの天才っぷり、周囲をひきつけるカリスマ性、そして繊細さやそれゆえの苦悩の日々と欣ちゃんの人の良さや包容力みたいなもの。まさしくLONG SEASON、人生や日本音楽史/シーンにおける一つの季節の終わりと始まりが巡っていく。
例えば歴代の伝説的バンドたち、ジョイ・ディヴィジョンからの残ったメンバーで結成されたニュー・オーダー、ニルヴァーナからのドラマーのデイヴ・グロールによるフー・ファイターズと違うバンドになることもあれば、その一方でフィッシュマンズのように残りのメンバーでその名前を背負い続けていくクイーンやマニックスもいる。向き合い方・乗り越え方に何が正解ということはない。おそらくそのどれもが正しく、誰よりもそばで一緒に生み出していた当人たちにしか分かりえない悲しみや苦しみ、喪失感に葛藤があるはずで、それらと向き合っては、去った者のためにも本当にいいと思う音楽を作り続けていく。表現者は表現してこそ、ミュージシャンは音楽を鳴らしてこそ。
バンドというものの音楽を聴くことは多いけれど、バンドなんて大体ろくな終わり方しないって歴史が幾度となく証明しているのに、なんで懲りずにするんだろうって思っていて、そんな気持ちは本作を見たからといって特に変わりはしなかった。確かに、去った者の不在はあまりに大きいけれども、それでも前を向いて、音楽を鳴らす。ちゃんと今日にまでつながっていた。

とぽとぽ