劇場公開日 2021年9月17日

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「いずれは記憶にございません…?」レミニセンス 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5いずれは記憶にございません…?

2022年1月24日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

知的

クリストファー・ノーランの弟ジョナサン・ノーランがプロデュースし、その妻リサ・ジョイが初監督。
話も“記憶潜入”のSFサスペンス。
嫌でも『インセプション』の記憶が蘇る。
まあ、まるっきりの劣化パクりではなく、これはこれで別の味気はあったけど…。

世界の大半が水没した近未来。
特殊な装置を使って人の記憶を立体映像として再現させ、追体験させる“記憶潜入(=レミニセンス)”。
そのエージェントであるニック。
ある日、無くした鍵を探したいと現れた美女、メイ。
次第に情熱的に愛し合っていく二人。
が、突然メイは姿を消す…。
ニックは“レミニセンス”で彼女との過去に入り浸り…。

“レミニセンス”は顧客に記憶を追体験させるだけではなく、時には何かしらの事件の調査や手掛かりにもなる。
ある日検察から、瀕死の状態で発見された新興ギャングの男の記憶に潜入し、そのギャングの正体を探る依頼を受ける。
男に“レミニセンス”すると、そこに、メイの姿が…!
彼女は何か関わりがあるのか、巻き込まれたのか、今何処に…?
彼女の行方を必死に追う…。

水没した終末世界感溢れるビジュアルは見もの。殊に“水”を扱った映像やCGは美しくもある。
壮大なSF大作…と思いきや、話の始まりや雰囲気はSFを纏ったフィルム・ノワール。見た目は美しく見える“水の世界”の中に入っていくと、滅び廃れた町や暗い大都会。探偵とハードボイルドの暗黒街のようだ。

話が進んでいくと先述からも分かる通り、消えた愛を探し続ける男の“哀路”とでも言うべきか。
ラブストーリーというより、メロドラマ色の方が濃い。寧ろ、ディストピアSF×フィルム・ノワールよりこちらの方が主軸。

彼女を追い、彼女に関わる人物からも“レミニセンス”し、徐々に分かってきた彼女の姿。
悲劇。決して幸福ではない過去。
危険。周囲をうろつく男たちや組織。
“レミニセンス”していく中で知ってしまった真実。
それは、裏切りか、愛か。

哀愁たっぷりのヒュー・ジャックマンもさることながら、光ったのは二人の女優陣。
レベッカ・ファーガソンの美しさと悲しさを纏った魅力。
ニックを支え、心配するタンディ・ニュートンの好助演。

見る人によってはハッピーエンドでもあり、切なくもあるラスト。いやそれとも、ダメダメ未練たらたら女々しいだけの男の話…?
悲しいメロドラマとして見ればそれなりに悪くなかったが…
SF、フィルム・ノワール、メロドラマ…これらが全て巧みに合わさったら良かったのだが、今一つ巧みとは言えず。やはりどうしてもメロドラマ味が強く出過ぎている。
そうなると、せっかくのフィルム・ノワールのムードが勿体ない。
SFも然り。と言うか、水没した世界にした設定は絶対的に必要だったのか…?

全体的な話も所々面白味あったり、面白味無かったり。
題材や設定はいいのに、あっと驚く斬新さは感じられず、既存感を感じてしまった。
CG面でもそう。『インセプション』のような見た事のない驚異的な映像はあまり期待出来ない。あくまで世界観のみであった。

『インセプション』の劣化パクりではないが、何もかも遠く及ばず。
いずれ私が“レミニセンス”しても、本作の記憶が蘇る事はうっすらぼんやりだろう。

近大