劇場公開日 2021年9月3日

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「マリコファンの書くレビューをあまり信用しない方がいいですよ(^^ゞ」科捜研の女 劇場版 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5マリコファンの書くレビューをあまり信用しない方がいいですよ(^^ゞ

2022年9月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 1999年の放送開始から20年以上にわたり、世代を問わず愛され続けている人気ドラマ「科捜研の女」シリーズ。実は同じく放送開始から20年を向かえている『相棒』よりも少しだけ早く、ドラマ史上最長のシリーズとなっています。マリコにとって右京さんは、永遠のライバルなんですね。

 常に最先端の技術を取り入れ、解決した事件は250を超える“科学捜査ミステリー”の最高峰といっても誰も否定しないでしょう。その集大成として待望の映画化を迎えたことにファンとしても、観無量の境地です。
 それだけに20年に渡るこれまでのストーリーから細かく伏線が引き出されており、20周年を飾る物語にふさわしい脚本となっていました。また登場人物もこれまでのシリーズでマリコが濃密に関わったことがある懐かしい面々が、続々登場していることも、ファンとして嬉しい設定でした。

 脚本を務めるのは、シリーズメインライターの一人で「劇場版 名探偵コナン」シリーズも手掛ける櫻井武晴。メガホンをとるのはテレビシリーズの中心的存在であり、「相棒」「刑事7人」なども演出してきた兼﨑涼介監督。音楽・川井憲次のエネルギッシュな楽曲に彩られ、鮮やかな最新科学トリックと濃密な人間ドラマが映画ならではのスケール感で展開する本作は、ファンのみならず、初めて観る人までも極上のミステリーの世界に誘ってくれることでしょう。

 物語は、 科捜研の法医研究員である榊マリコ(沢口靖子)とともに洛北医科大学法医学教室の教授で、科捜研の解剖も担当している風丘早月(若村麻由美)が、屋上から落下するウイルス学研究室の教授である石川礼子(片岡礼子)と偶然目線があってしまうところから始まります。府警上層部は自殺で処理しようとしたのですが、風丘は石川教授が落ちていくとき、「助けて、殺される」という声を聞いたと主張。捜査一課の刑事である土門薫(内藤剛志)は、風丘の訴えを認めて、事件として捜査を開始します。マリコたちも賢明に事件性を遺留品や検死から調べようとするものの、事件性を解明できませんでした。
 捜査が行き詰まる中で、石川が死ぬ直前に会っていたとされる京都医科歯科大学の生体防御研究室准教授で歯周病の細菌を研究していた斎藤朗(増田広司)が、石川と同様に「助けて、殺される」という声を残してビルから落下してしまいます。

 さらに科捜研からカナダの科学捜査センターへ転職していた相馬涼(長田成哉)からカナダの細菌学の教授が、石川同じような落下事故を起こして死亡していたという情報提供を聴き、世界同時多発不審死事件として、ますます事件性の疑いを強めるマリコたちでしたが、肝心の死因すら特定できないでいたのです。

 そんな中で、二人の着衣に共通してついていた菌を調べている内に、マリコと土門刑事は、服用するだけで体重を落とせるというダイエット菌の開発者である帝政大学の加賀野亘教授(佐々木蔵之介)に面会に行きます。いきなり参考人扱いとして任意聴取を受けた加賀野は憤慨し、マスコミを扇動して京都府警の行きすぎた捜査方法を批判させるのでした。
 それを受けて、警察庁では捜査に瑕疵があったか、京都府警に対して監察官聴取に動くのでした。科捜研にも久々に科学鑑定監察所から、マリコの父である榊伊知郎(小野武彦)が科学的監査のため、科捜研に聴取に訪れるのでした。

 京都を皮切りに世界中に拡がる死の連鎖。クリーンに散りばめられた謎を解かなければ、死の連鎖は止められません。なぜ、ウィルスや細菌に関わる科学者だけが、殺されるのでしょうか?
 これはシリーズ史上最難関の事件といって過言ではないでしょう。現代最新科学では絶対に解き明かせないトリックを操る史上最強の敵に直面して、いつもに増してマリコの人をウムをいわさずに駆り出して使ってしまう強引さが目立ちました。科捜研では検出不可能な微量の分析を求めて、 科捜研の元所長で、大型放射光施設「SPring-8」の技官となっていた宮前守(山崎一)にまで押しかけて、微量物質の原子鑑定をせがむのでした。

 確証となる死因や物証が出てこないなかで、ダイエット菌の副作用が怪しいと当たりを付け、究極の決断を迫られたマリコが最後にとった行動とは…。
 そして犯人の仕掛けた罠にかかり、マリコ自身も石川たちと同様に「助けて、殺される」という声を残して、紅葉の染まる清水の舞台から飛び降りてしまうのでした。マリコは死んでしまうのでしょうか。シリーズは劇場化を最後に終わってしまうのでしょうか!

 緊迫感あふれる謎解きの過程の中にも、本作ではテレビシリーズ以上に笑わせてくれるシーンが満載でした。冒頭の伊東四朗が老紳士に扮し、マリコをナンパしようとするシーンは吹き出してしまいました。論文に熱中するマリコは、ナンパされていることすら全く気付かなかったのです。

 またマリコに京都医科歯科大学の学内のことを情報提供する法医学研究室の佐沢真(野村宏伸)は、過去にはマリコにプロポーズして相手にしてもらえなかったものの、本作ではマリコへの思いは一段と過激に募らせていたのです。佐沢の本作での狂言回しぶりにもおかしかったです。

 最後に、今回の映画化にあたって、担当プロデューサーは「コロナは意識していますが、安易に煽ったりしないのが、この番組の責任ではないかと思っています」とコメントしていました。細菌を扱った題材を2021年という時期にあえて公開することにしたものの、安易にコロナネタにせず、今風に迎合しようとしなかった点は評価できます。(公開日:2021年9月3日/上映時間:108分)

流山の小地蔵