劇場公開日 2021年1月29日

「「ベイビーわるきゅーれ」の監督の1つ前の映画。見比べ目的でお勧め。」ある用務員 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0「ベイビーわるきゅーれ」の監督の1つ前の映画。見比べ目的でお勧め。

2021年9月11日
PCから投稿

今年119本目(合計183本目)。

今、静かなブームになっている「ベイビーわるきゅーれ」の監督の1つ前の映画で、「ベイビーわるきゅーれ」がミニシアター中心(なのに、なんと海外進出まで決まってしまった…。詳細はツイッター公式アカウント)で、そのブームで、大阪市ではシネマート心斎橋さんで、本作品と「見比べてほしい」ということで1週間限定(ベイビーわるきゅーれは2週間)で再放送。

 ※ もっとも、この映画の公開時期は2月上旬で、大阪市ではコロナうんぬんが勃発した時期であり、「事実上どこでも放映されていない状況」であるのも事実であるので(ごくごく少数の方が、宣言発出までに滑り込みで見られたのみ)、その意味では、「やむを得ない事情」で「新作ではないが、新作に準じる」扱いなのだろうと思います。

 さて、こちらの作品。
今そのブームになっている「ベイビーわるきゅーれ」と同じようにバイオレンスアクションもの。ただ、登場人物がかなり多いので理解するのがちょっと難しいかな…という印象はあります。大きな筋(いわゆる「闇の組織」の人たちが出るなど)は、両映画で共通しています。また、ブームになった「ベイビーわるきゅーれ」の2人の主人公も、こちらの映画でも登場しています(だから、シネマート心斎橋でも「見比べてほしい」ということで続けて2つ見られる時間設定にしてある)。

 展開的には「登場人物が多くてわかりにくい」という点はあるものの、結局のところ、バイオレンスアクションものですので気にならず、いかにアクションシーンをうまく見せるか、という点につきます(この点は、両映画で登場する伊澤さんのアクションが目をひきます)。この観点でみたとき、また、「ベイビーわるきゅーれ」でブームが沸いた中で、監督の方も若手監督で、いわゆる「大手スポンサー」もつかず、「低予算」部類に入る中で、「低予算だからといって妥協しない」という点で、色々工夫されています。もちろんそういう事情があるので、いろいろ難がある(妙な撮影の取りなおしの後があって、つなぎ部分が目立ってしまう)はあるものの、それを言い出すと「新人監督の方のデビューの機会を摘んでしまう」ことにほかならず、それをどうこう言うのはおかしい以外の何物でもないので、それは気にしませんでした。

「ベイビーわるきゅーれ」と比べて、同じバイオレンスアクションものとしても「事件の真相はどうか」という点においてはひねりが入っており、同映画のブームがツイッター等で広がっていて、シネマート心斎橋さんのように同時リバイバル放映というのも今後増えていくと思いますので(事実、ここのサイトでもレビューが12件しかない)、「ネタバレ回避」の観点から、あまり深くは書かないことにします。

また、両映画とも女性が出ますが、低予算な映画でありがちな「女性を何らかの形でよこしまな形で出して気を引く」「意味もなく大人の営みが出る」という類型は一切存在せず、男女同権という考え方はこの映画でも貫かれています(女性を馬鹿にするシーンにおいて、「令和の時代にそれはないだろ」とたしなめるシーンもある)。これは、低予算映画だとやはり「走りがちな類型」において、「低予算だからといってそういうことで儲けたくない」という監督の考え方(このことは、ブームになった「ベイビーわるきゅーれ」の舞台挨拶でも触れられていたそうです)は共感できるところがとても多いです。

このサイト、映画のみならず「監督や主要な登場人物」についてもマークを付けられ「その監督・登場人物が出る映画が公開されたらアラートで通知する機能」があるので、さっそく全員マークしました。こういう「いい意味で、低予算であることを言い訳にせず、だれしもが共感できる映画」が今後増えることをやみません。

採点に関しては、下記が明確に気になったものの、大きな傷とはいいがたいこと、また上記にもある通り、低予算と推知できる状況で「そこまで細かく言うのか」というのはあるので、0.1どまりで四捨五入でフルスコアにしました。

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(減点0.1) 作内で「警視庁の暴対法条例の強化で俺ら(俗にいう、「暴対法」の対象になる「ああいうグループ」のこと)の活動もしにくくなるな」という発言があります。

 ただ、ここは「条例」ではなく「法律」が正しいです。
条例は地方自治体が作るもので、地方自治体でしか効果を持ちません。したがって、他の地方自治体に行けば効果を逃れられます。換言すれば「活動しにくくなる」なら、他の都道府県で「やりあえば」済むだけの話です。つまり、そういう描写が出ないなら、ここは「法律」の言い間違いです。

 ただ、そういう話は一切出てこない上に、そもそもこの映画、どこが舞台なのか都道府県さえ出てきません(ラストのクレジット表示でも、「●●市協力」なども出ない)。
もっとも「条例か法律か」という点は、結局のところ、地方自治法の話であり、その点で「おやっと思う」のは、弁護士の方か行政書士の開業の方か合格者の方(私は後者/行政法が試験科目になるため、知っているのは当然)程度しかおらず、当然、どの映画でも観客にそんな人は1人いるかいないかというものでしかありません。
この点を気にしだすと混乱を招くのですが(そして、最後まで都道府県名など出ないので、条例ってどこの話??ということを気にすると混乱するだけ)、結局ただの言い間違いと解するのが妥当で、しかも「どうでもいい話」に過ぎません。

特に低予算と推知される映画でもあり、かつ、「理解は妨げられるが、色々な事情を考慮すればやむを得ない」ものであり、0.1の減点にしています(減点0.0にはできないが、減点0.5だの2.0というのも、つり合いが取れない)。
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yukispica