劇場公開日 2023年5月26日

「サンプリングのうまさ」トップをねらえ! Scottさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0サンプリングのうまさ

2020年12月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

キャラ配置が《エースをねらえ!》なんだよね。ノリコが岡ひろみ、お姉さまがお蝶夫人、コーチが宗方仁。ユング・フロイトは緑川蘭子なのかな。それで人間模様は《エースをねらえ!》に準じるんだけど、舞台を宇宙での戦いにもってってるから面白いよね。

話の展開の他の部分も「どこかで見たことある」ってシーケンスだらけなんだけど、それをうまくつないでる。サンプリングがすごいと思ったよ。

脚本は大雑把というか拙いというかなんだよね。「人の気持ちって、そんな簡単に変わらないでしょ」と思うの。
特にスミスのところ。肝試しで出会って恋に落ちるとことは、まあいい。主人公は男の人に免疫ないし、そうなるかも。それでいきなりペア組んで、なすすべもなく、スミスが死んじゃうよね。主人公が見殺しにしたといってもいい。これトラウマになって、そうとう長い期間立ち上がれないでしょ。でも次の戦闘でいきなり「スミスの分まで私がやらなきゃ」になって、ガンバスター乗っちゃうって、おかしいよ。

それでも観ちゃうのは「どこかで見たことある」シーケンスだからなんだよね。大事な人を失った主人公が、そのトラウマを乗り越えて成長するって、良くあるから。普通は二、三話かけて描き込んで「なるほど」って納得の話でトラウマ克服するけど、この作品では十数分間でお約束で克服してるの。そして、ガンバスター登場シーンはガンダムからのサンプリングだから、余計に違和感が薄くなるんだろうな。(主人公がガンバスターの存在を知ってるのは、おかしな気がするけど、そこもガンダムオマージュに隠れて、なんか、まあ、いいやって気になる)

そしてあと、シーンのうまさ。観せ方のうまさだね。ここは庵野秀明がやっぱり凄いんだと思った。脚本は拙いけど、絵コンテはすごくうまいんだろうと思ったよ。

終盤に向かって話が思わせぶりになっていくところとか、テロップをがんがん使ってくるところとか、「庵野はずっと同じことやってたのか」と思ったね。その手法が数十年通用してるんだからすごいよ。

あと思ったのはね、アニオタがときにマイナスの側面から語られるのは、この作品のような、登場人物のお約束の単純な感情変化だけを受け入れてるからかもって気もしたの。人間は、こんなに単純じゃないんだけど、実生活にもそこを適用してるように見えるかも。人間の奥深さに触れるべく、純文学作品でも読もうと思ったよ。純文学わからないけど。

Scott