劇場公開日 2021年1月29日

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「しみじみとほっこりする」おもいで写眞 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0しみじみとほっこりする

2022年6月28日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

2021年。監督は「ユリゴコロ」「君に届け」の熊澤尚人で、監督のオリジナルストーリーです。
地味ですが心に残るいい映画でした。
結子(深川麻衣)の祖母(原日出子)が亡くなった。
母親代わりの大事な人だった。
なのに結子が東京でメイキャップ・アーティストになる夢も破れ、故郷の富山へ帰ろうと思っていた矢先に祖母は急死した。
祖母の遺影写眞は、見事にピンボケだった。
(悔やんでも悔やみきれなかった。)

そんな結子に役所に勤める高校時代の友人一郎(高良健吾)は、
「お年寄りの遺影を写さないか?役所からアルバイト料が少し出るぞ!!」
と誘ってくれた。

笑顔の少ない愛想のない結子です。
けっして幸せとは言えない生い立ちです。
町営住宅を一軒一軒訪ねる。
「遺影⁇?」
「まぁぁー、縁起でもない」
でも山岸のおばあちゃん(吉行和子)が、
「私ね、行きたいところがあるの。そこで写真を撮ってくれるならOKよ!」
そこは昔の職場だった。お裁縫のミシンがずらっと並ぶ仕事場だった。
結子は、山岸さんに薄化粧を施し一枚の写眞が完成した。
「これは遺影じゃないわ。おもいで写眞よ。」
山岸さんの一言で、こうして「おもいで写眞」のとネーミングされ、人の輪は広がります。

お年寄りたちのエピソード。
昔の仕事場のお饅頭屋を探して、「ここじゃない」と全部断られる老人。
亡くした夫・・・その現実を受け止められないご婦人。
8年前に妻以外の女性と家を出た老人。
そんな足の悪い古谷一行おじいちゃんを、お墓に置き去りにする結子。
母に捨てられた過去を消せないのでした。
意地っ張りで嘘の嫌いな結子。
何回も「大人の嘘」に傷付きました。
お年寄りの様々な人生が交錯します。
お年寄りの人生と向き合ううちに、前向きに自分の人生と向き合う結子。
元気を貰ったのは結子の方だった。

その人の幸せだった日々が焼き付いている「おもいで写眞」が、いいですね。
見る人を幸せにするような。

琥珀糖