劇場公開日 2020年11月13日

「セレブオーラのふっしょく」ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0セレブオーラのふっしょく

2021年5月31日
PCから投稿

もっとも見えるポイントはスターオーラの払拭。
Amy Adamsといえば魔法にかけられて──の、現代に迷い込んだおとぎ話のお姫様であり、アメリカンハッスル、メッセージでも、育ちのいいきれいな人だった。
そのイメージを取っ払って、無化粧で髪もボザボサ、体型もbeforeなかんじのまま。

それはGlenn CloseにもHaley Bennettにも言える。
受賞したのはミナリのユンヨジョンだったが、本作でアカデミー助演女優賞にノミネートされたGlenn Closeは強そうで苦労が見える、とてもリアルなばあやだった。

ニュース動画等で、なにげなくうつったアメリカの一般人が、みょうにエロく見えてしまうことがある。その視覚的な内訳は、豊満な体型と二の腕とcleavageで構成されていると思われる。すなわち、たいてい所得が低ければ低いほどそれが露顕する。

ここに出てくるHaley Bennettはそれだった。すっぴんで低所得者層風の肥満をしている。だが顔はHaley Bennettである。
わたしにはHaley Bennettの顔は、昔の(とりわけあなただけ今晩はの)シャーリーマクレーンに見える。

母子の愛憎の話。母親はクスリに頼って問題ばかりおこしている。世の中には、ダメでもあるけれど、いい側面も持っている親がいる。こどもたちは、母親のいいところがクスリに打ち克ってほしい。と願っている。その浮き、沈みを、描いていく。

ベストセラー回顧録「ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち」の映画化とのこと。シリアスな主題だった。

ロンハワード監督を優れた演出家だと認識している。が、この映画は、筋書きが持っている人間模様の苛烈さに圧され、演出上の巧拙はあまり見えなかった。

アメリカを知らないが、映画を見ていて、あっちの家庭では、(家族間で)争う・戦うことが、成長に正常に(反教師的に)作用することがある──と思うことが多い。

少年時代をやったOwen Asztalosが巧かった。また、やはりGlenn Closeがじょうず。生半可なリアリティじゃなかった。ノミネートの女王だがノミネートせざるを得ないことは、よく解る。
余談だがGlenn Close、本作でラジー賞でもノミネートされていたとのこと。同年に同俳優が別作品でオスカーとラジーにノミネート(または受賞)されることはあるが、同作品の同ノミネートは稀──とのことだった。
厳ついばあやの造形が滑稽でもあった──かもしれない。

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津次郎