劇場公開日 2021年8月7日

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「無謀なドキュメンタリー」オキナワ サントス Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0無謀なドキュメンタリー

2021年8月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ほぼインタビューだけでダラダラと構成された、悪い典型と言えるドキュメンタリー映画であった。
インタビューのみであっても、映画「福島は語る」のような大傑作がごくまれに存在するが、この種の作品はほとんどが残念作だ。

時の独裁的なヴァルガス政権は、連合国側についたため、第二次大戦中に日本はブラジルの“敵国”となったようだ。
そして、1943年7月にサントスの日系移民に「強制退去」命令が下る。
(なお、ブラジルが連合国として独伊に宣戦布告したのは1942年8月だが、日本への宣戦布告はなんと1945年6月らしい。)
とりあえず、ここまでは“理解できるような気”がする。

しかし、「強制退去」後の実態が、さっぱり分からないのだ。
証言者が何人も出てくるが、みな「強制退去」の時のエピソードしか話さない。
「強制退去」後に、日系人がどこでどういう風に暮らしたのか、終戦後、生活基盤を一時的に喪失した日系人の生活再建がどうだったのかなど、映画の“メインテーマ”と言えるべきことが、ほとんど何も証言されない。
(必ずしも「強制退去」イコール「強制収容」ではないようだ。収容所の建物跡の映像が出てくるものの、アメリカのようにフェンスで遮断された隔離施設だったという話は出てこなかったと記憶する。)

戦前から続く日系人に対する「人種差別」の話や、戦後の「勝ち負け抗争」という、敗戦を認める日系人と認めない日系人の間のテロ闘争の話が出てくるが、本作品のテーマに即して掘り下げられるわけではない。
また、サントスへの移民は沖縄県出身が多かったとのことだが、ではサントス以外の日系人の「強制退去」はどうだったのか、全く触れられない。
“分からないこと尽くし”なのである。

歴史の“タブー”であるため、資料がほとんど無いらしい。1980年代からいくらか話されるようになったようだが、依然として謎は謎のままのようだ。
また、証言者も「強制退去」時には、まだほとんど小学生であり、証言者たる資格すら怪しい。
「オキナワ サントス」とテーマ設定したものの、「知られざる歴史を明らかに」することなど不可能な、“無謀”な取り組みのドキュメンタリーなのかもしれない。

Imperator