劇場公開日 2021年1月30日

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「比較的観やすいアート作品でしたが……」写真の女 東鳩さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0比較的観やすいアート作品でしたが……

2021年2月9日
PCから投稿

比較的観やすいアート作品でしたが、正直それでもストーリーはよく分かりませんでした。
なぜそのセリフを言うのか、なぜそんな行動を取るのか、度々理解できないので何も共感出来ずに終わりました。
場面場面で面白い演出や撮影技法をしているのは分かるし、感心はするんですが、肝心のキャラクターに共感できないことには感情移入できないので、こっちが深い感動、心が動かされるという体験をできないんですよね。

演出については、言わずにいられないことが2つばかり。
まず、主人公が一切セリフを言わないのは最後に一言だけ言うんだろうなと思いましたが、それが最後の最後でテーマの説明って最悪ですよね。
テーマはセリフで一切説明しないで、ストーリーで感じさせるのが映画なのに。
説明するなら冒頭でしてくれれば、まだ少しは話が理解しやすくなるのにな。
次はタイトル。
30分過ぎても出なかったから最後に出る映画だなと思いましたが、最後に出たと思ったらまだちょっと本編が続くんですよね。
そこに新しい情報があるわけではなく、タイトル前の画の別カットでしかないから、それは省略してタイトル、直結してエンドロールにしろと。
最後が無駄に冗長でちょっとイラつくというか、その後味のしつこさが作品の評価を更に下げるんですよね。

これ系の監督は、きっと監督が撮りたい画ややりたい演出がいくつも先にあって、それを繋げるように脚本を考えているから、結果としてキャラクターの心情が分断されるんだと思います。
先に脚本をちゃんと考えて煮詰めてから、物語の面白さを観客に伝えるためにベストな演出を頭から選択(もしくはクライマックスから逆算)していけば、こんなことにはならないのではと思いました。

アート系の映画って、サッカーでいえばリフティングして観客沸かせてドヤ顔してるような選手ですけど、リフティングは何回しても点は入りませんからね。
点が入らなければ試合はかろうじて引き分け、ほとんどは負け試合です。
泥臭くても不格好でも、最後には観客を感動させるというゴールネットを揺らさないと……。

これでも色んな映画祭で入選しているみたいだから観たいと思ったのですが、ユーロだけの単館上映でサービスデーなのに客は疎らでした。
商業的な結果がこれなら日本の映画祭はこういうアート映画、エンタメ性を欠く映画を好む傾向を見直さないとダメな時期だと感じます。
鬼滅の刃といった大作アニメ、福田雄一の原作殺しグダグダ映画、そういう作品ばかりに客が入っても日本映画業界自体がゆるやかに衰退していくのは、大衆が求める映画を作らないでリフティングばかりするクリエイター、それらを好んで発掘しようとする映画業界の体質に問題がある気がしてきました。
演出が個性的とかではなく、ちゃんと社会性や大衆性を両立できる作品を生み出せる監督を見いださないと、ハリウッドはおろか韓流にも追いつけなくなりますよ。

東鳩