眠る虫
劇場公開日 2020年9月5日
解説
PFFアワード2019入選作「散歩する植物」など独創的な作品で注目を集める金子由里奈監督の長編デビュー作。“死者”と“声”をめぐる小さくも壮大な旅の行方を描き、「MOOSIC LAB 2019」の長編部門グランプリに輝いた。芹佳那子はバンド練習に向かうバスの中で、とあるメロディを口ずさむ老婆に遭遇する。老婆が抱える木箱に興味を抱いた佳那子は、練習をすっぽかして彼女のストーキングを開始。バスの乗客は次第に減っていき、やがて名前も知らない終着駅の街にたどり着く佳那子だったが……。「渇き。」の松浦りょうが映画初主演を果たし、「教誨師」の五頭岳夫、「僕はイエス様が嫌い」の佐藤結良が共演。関西で活躍するソングライターのTokiyoが音楽を担当。
2019年製作/62分/日本
配給:yurinakaneko
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バスの中に鞄にネギを刺している人がいて気になった、と書かれている方がいたけれど、自分も気になった。日常で、近所のスーパーで、ふと見かけることのあるちょっとした違和感が画面から飛び込んできたからだ。そして、ああ、そういう映画なのか、と勝手に合点がいった瞬間だった。
説明を省いた曖昧なストーリーやキャラクターの行動動機は、正直観終わってもわからない。なんとなく感じ取ったものを「そんなものかな」と思うだけだ。しかし人生にそんな瞬間はいくらでもあって、むしろこの映画は、世界はそんなもんという事実を受け入れる映画なのだと思う。
バスに乗っているシーンは長いが、決して冗長ではない。不要なところは編集で切られていて、ただだらだら撮りっぱなしなわけじゃない。つまりそこには、監督が切り取りたい、見せたい、共有したい時間が流れているということなのだ。凡庸な車窓の風景、たまたま乗り合わせた人たちの仕草や会話、一瞬だけ生まれる繋がり、いろんな人生や時間が並行して流れていて、現実とあの世の境は最初から曖昧だ。登場人物たちはそれを、水が流れるようにサラサラと受け入れる。
なんと素敵な世界との向き合い方の映画ではないだろうか。
2020年12月14日
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本当に不思議な映画だった。
でもそれより似合う言葉な何かな?と考えたら、おちゃめな映画だった。としたい。
本筋と繋がってるのか繋がってないのかわからない小さな要素がいくつもあって観る人の頭に多くの「?」を残す。
観賞後にその繋がりを探してみたが、全て繋がらなくてもいいのかな、と。
誰かの鼻唄、聴いてる音楽、落ちてる物の声、
世の中には、曖昧だけど普段は認識できない不思議に溢れていて、いつ誰が何と繋がるのかはわからないが、何かと繋がるきっかけは何処にでもあるんだよ。と言ってくれるんじゃないかな~と思った。
人と人だけじゃない縁のようなものが無数に存在していて、その一つを選んで映像化したんだよ。みたいな捉え方でいいのかも…と思いました。
いまでも最後の目から光線も全然意味がわかりませんが、あれもこれも監督のちゃめっけなんだ。と思えば自分は不思議と納得できるのだった😂
2020年10月26日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館
主人公を演じた松浦りょうさんの佇まいがよい。バス、小さな冒険、境界のあいまいな世界、理解しようとしないで感じられればとても豊かな気持ちになれます。
2020年10月16日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
これは謎解きの映画だ。
仕掛けが散りばめられていて、観る人が観察すればするほど、その人が発見を楽しめる構造になっている。
ぼーっと見ているのはもったいない。
眠り、夢、記録、再生、記憶、本当、嘘、別れ道、終点、見知らぬ街、人の居なくなった空間。
ドニー・ダーゴのような、観ながらでも観終わった後でもあーでもないこーでもないという思索の余地がある映画だった。
製作者は観客の知性を信じているのではないだろうか。
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