劇場公開日 2020年10月10日

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「監視カメラとSNSの映像で暗殺事件の経緯を目撃できてしまう現代の怖ろしさ」わたしは金正男を殺してない 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0監視カメラとSNSの映像で暗殺事件の経緯を目撃できてしまう現代の怖ろしさ

2020年10月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

怖い

空港内各所の監視カメラにより、“下手人”としてスカウトされた若い女性2人と北朝鮮工作員らがリハーサルとして他の旅行者にいたずらを仕掛ける様子から、当日の2人と工作員の動き、金正男氏が空港に入り2人からVXを顔に塗られ、医務室に移動し昏倒するまで、映像にしっかりと残されていたことに驚く。女優を夢見るベトナム人ドアンはSNSを利用し、工作員から事前にイタズラ動画の訓練を受けている様子を投稿してもいた。ドキュメンタリーの主要部分が、再現映像ではなく事件そのものを記録した映像で構成されていることに、恐るべき現代性を感じる。

事件に関わった北朝鮮側8人は、一部がマレーシア当局に取り調べられたものの、結局全員が何の処罰も受けず帰国した。自国の要人を暗殺するのに、他国の純朴で貧しい女性を功名心と金で釣って実行犯に仕立てる手口に憤りを禁じ得ないが、北の犯罪が現代化していることを思い知らされもする。

高森 郁哉