劇場公開日 2020年9月4日

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「テーマはいいがリアリティに大きく欠ける」人数の町 サブレさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0テーマはいいがリアリティに大きく欠ける

2020年9月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

行き場所を失った人間が集められる町。その町の住民はSNSで何かを絶賛したりディスったり、他人の名前を使って投票したり、デモ隊やテロ被害者、客の人数合わせとして使われたりする。これさえやっていれば衣食住は保証され、不自由はない生活を送ることができる。
序盤で繰り返される「自殺者〇〇人」「行方不明者〇〇人」という表示は、我々がこれらを単なる数字=人数としか見ていないことを指摘しており、その点ではかなり良く風刺の効いた作品である。特に、SNSを通した誰かでさえも得体のしれない情報の一形態であるという風刺は挑戦的でもあった。

ただ、メッセージ性に物語をまとわせるためのストーリーに粗が多いように思う。
町と言うか集合住宅だし、その町を囲うフェンスも曖昧なので束縛感や絶望感といったディストピア感を認識しにくい。ディストピアの設定がよく練られておらず、どこからか「よくあるディストピア」を引いてきたかのようなつまらなさがあった。正直に言えばメッセージ性の割には内容が古臭い。なんとなくだが、石ノ森章太郎がすでに描いていそうな話だったという印象。

そのほかでは、「どこかで見た”悪い”設定・展開・キャラ」が多いという点で悪印象。ここでいう悪いというのは作中の誰かにとってではなく、観客(私だけではないと思うが…)にとってだ。つまり、よくあるダメ邦画演出が多く、観ていて疲れてしまった。
特に嫌だったのは、会話にいちいち「…え?」という合いの手が入ることだ。テンポが悪すぎる。本編は111分だが、この手の間延びしたやりとりがなければ90分近くにまで縮められたのではないか。

などなど、メッセージ性は好きなのだが、肝心の本編がダメだった。メッセージ性を入れ込む工夫よりも先に観客を楽しませる、没入させる力量だと思うのだが。

サブレ