劇場公開日 2020年7月3日

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「暇なら見ても損はない」ザ・クーリエ 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5暇なら見ても損はない

2020年7月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 オルガ・キュリレンコはジェレミー・アイアンズと共演した「ある天文学者の恋文」での演技が最も輝いていたと思う。その後、脇役で出演した「スターリンの葬送狂騒曲」や「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」では、ロングドレスを纏った美しい女性としてスクリーンを飾り、演技としては十分によかったものの、いまひとつ女優としてのポテンシャルが存分に発揮されるまでには至っていないという消化不良の感があったが、本作品はどうだろうか。

 悪の組織と政治の癒着は昔から続いているというのが一般の認識だと思う。特に警察は悪の組織との距離が近い。役所広司主演の「孤狼の血」では、警察官は暴力団組員と顔馴染みだし、情報をやり取りし、ときには金もやり取りする。印象的な台詞は「警察じゃけぇ、何をしてもええんじゃ」である。

日本の警察官の職務倫理規定は次の通りである。
一 誇りと使命感を持って、国家と国民に奉仕すること。
二 人権を尊重し、公正かつ親切に職務を執行すること。
三 規律を厳正に保持し、相互の連帯を強めること。
四 人格を磨き、能力を高め、自己の充実に努めること。
五 清廉にして、堅実な生活態度を保持すること。

 この五箇条をきちんと守っている警察官がいたら頭が下がるが、警察官も人間だからなかなかそうはいかない。それに警察の上部組織は官僚なので、組織防衛が何よりも優先される。検挙率が低いという批判は組織を傷つけるものであるから、兎に角事件が発生したら犯人を検挙する。犯人として条件が揃っていれば誰でもいい。本当に犯人かどうかなんてどうでもいいのだ。検挙率を上げるためだけに冤罪で刑に服した人は数多くいるだろう。女子高生が小銭欲しさにでっちあげる痴漢冤罪も、検挙すれば検挙率が上がるから警察は喜んで女子高生に協力する。女子高生に肩入れして有罪にする裁判所も同じ穴の狢だ。

 悪党と戦うオルガ・キュリレンコを見ながら、ついつい警察と司法の腐敗をどうやったら防止できるのかを考えてしまった。ストーリーはほとんどなくて、アクションを楽しむ映画だから別のことを考えながらでも鑑賞できる。あまり高評価できる作品ではないが、最後の最後にちょっとしたサプライズがあるのがいい。少なくともオルガ・キュリレンコのアクションは十分に堪能できた。暇なら見ても損はないと思う。

耶馬英彦