劇場公開日 2020年9月4日

  • 予告編を見る

海の上のピアニスト イタリア完全版のレビュー・感想・評価

全25件中、1~20件目を表示

4.5名作曲家への敬愛が重ねられた、表現者として生きることの尊さと業を描く珠玉作

2020年8月27日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

興奮

幸せ

170分中の45分、実に25%カットの国際版をそうとも知らず観たのは遠い昔。筋の細部も忘れてのイタリア完全版鑑賞となったが、何より1900とジャズ創始者とのピアノ対決の尋常ならざる見応えに心酔した。均衡を欠くほどの長尺をこのシークエンスに割いたのは、物語の山場の一つだからだけでなく、トルナトーレ監督が「ニュー・シネマ・パラダイス」以来組み、本作にも珠玉の音楽を提供したエンニオ・モリコーネへの敬愛を重ねたからだろう。

キリスト生誕を基準とする西暦の節目の年に生まれ、幼少時に一夜にしてピアノを習得、荒波に揺れる船内でピアノと踊る演奏、熱演後のピアノ弦で煙草の火をつけるなど、奇蹟の数々は1900の聖性を象徴する(俗世に降り立たず恋を追わないのも必然だ)。監督はさらに、人の思いや感情を作品に込める表現者の尊さと、求道者ゆえの業をも描き切った。モリコーネが没した夏に日本公開されるのも奇縁だろうか。

コメントする (0件)
共感した! 6件)
高森 郁哉

4.0海のゆりかごに揺られるように、ゆったりと味わい深い語り口が胸に迫る

2020年8月25日
PCから投稿

かつて主人公の名前「1900」にふさわしく、その年代の終わりの1999年に日本公開を迎えた本作。あれから20年以上も経ったなんて信じられないが、今回、4Kデジタル版とともに満を持して公開されるのは170分に及ぶイタリア完全版だ。なるほど、125分版ではやや駆け足に思えた語り口が、完全版では海のゆりかごに揺られるがごとく、ゆったり味わい深く展開していく。特に演奏シーンはたっぷりと拡充され、本作が音楽劇であったことをより印象付ける形となった。そんな贅沢な仕上がりに身を委ねながら、今回改めて、ティム・ロス演じる主人公のことが、心と体を持って生まれた「1900年代の精霊」のようにも思えた。そう考えると、誰に習わずとも天才的なピアノの才能を有していたこと、ずっとあの船の中に住み続けていたこと、彼を思うとき誰もがノスタルジックな想いを胸に去来させることもなんだか納得いくように思えるのは私だけだろうか。

コメントする (0件)
共感した! 7件)
牛津厚信

4.0エンニオ・モリコーネの名曲を劇場で優雅に味わい、心から追悼したい名作。この企画も「運命」?

2020年8月20日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

ジュゼッペ・トルナトーレ監督と作曲家エンニオ・モリコーネのコンビが生み出した有名な作品として1989年にアカデミー外国語映画賞を受賞した「ニュー・シネマ・パラダイス」があります。
きっとあのテーマ曲を一度も聞いたことのない人はいないでしょう。
そんな数々の名曲を生み出した作曲家エンニオ・モリコーネが先月の2020年7月6日に91歳でこの世を去りました。
このコンビが生み出した名作は「ニュー・シネマ・パラダイス」以外にもあって、まさに本作「海の上のピアニスト」もその一本なのです。
日本では1999年に劇場公開されていますが、当時は40分近くカットされたインターナショナル版での公開でした。そんな名作が20年といった期間の技術革新を経て「4Kデジタル修復版」として蘇りました。しかも9月には「イタリア完全版」(HDリマスター版)も劇場で見られるのです!

本作の主人公の“1900”は、類まれなる洞察力を持つなど、作品では「運命」という概念を通常とは違う解釈にしています。その視点に立つと、この日本公開は、作曲家エンニオ・モリコーネの追悼にも相応しく、まさに「運命」を感じる作品です。
一足早く「イタリア完全版」を見ましたが、上映時間は170分と長めですが、「当初のインターナショナル版ではどこを切ったのだろう?」と思えるほど、自然に優雅な時間を味わえました。
通常のメリハリのある作品とは違って大人な作品ですが、「対決」や「少女との出会い」など、見応えのあるシーンも意外とあります。
何より「洞察力という能力が大き過ぎると、人はどうなるのか」という、かなり深い考察をしている点も本作の見どころです。
万人向きの作品とも思いませんが、劇場の音響でゴールデングローブ賞の最優秀作曲賞を受賞した本作の美しい音楽に浸りながら、数々の名曲を生み出した作曲家エンニオ・モリコーネに想いを馳せてほしい作品です。

コメントする (0件)
共感した! 13件)
細野真宏

5.0すごい映画、すごい音楽、すごいピアニスト。 言葉がでません。 どこ...

2024年1月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

楽しい

幸せ

すごい映画、すごい音楽、すごいピアニスト。
言葉がでません。

どこまでが史実か物語かは、この際どうでもいいです。
ジュゼッペ・トルナトーレ監督、彼ならではの表現に大拍手です。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
woodstock

4.5観て幸せと感じました

2023年8月22日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

泣ける

全編に流れるピアノ曲。ジャズピアニストとの対決も圧巻でした。あの廃虚化した病院船にいた1900はどんな風体かと思ったら、パリッとしたピアニストの衣装を纏って直ぐにでも演奏しそうな雰囲気。最期のシーンでは正にエアーピアノ。この船のピアニストとしての誇り故の決断なのでしょうか。ストーリーと語りが待ち遠しく3時間があっという間でした。良い映画を観た幸せ感。

コメントする 5件)
共感した! 9件)
りか

5.0いろんな感情を引き出してくれる

2023年8月3日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

楽しい

幸せ

エンニオ・モリコーネの音楽とユーモアとストーリー…自分の語彙力のなさが悔しいけれど最高の作品です。

ティム・ロスの登場から急に楽しくなります。
ピアノと踊りながらの演奏シーンは本当に素晴しく、キラキラとした幸せな気持ちになりました。

ティム・ロスってチンピラの役のイメージだったけど、こんな繊細でキュートな演技もできるんですね!
それでいて彼のやんちゃな感じもあってすごく好きでした。

マックスはアイデンティティに出ていた俳優ですね。

所々の台詞回しもぐっとくるものがあります。
場面の切り替え、カメラワークもおもしろいです。
音楽も然り、映画の魅力がギュッとつまっている作品だと思います。

ぜひエンドロールの音楽も最後まで聞いてほしい。トランペットの音色が切なく美しいです。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
目指せ1日1本♡

4.0自らの居場所を守り続けたピアニスト

2023年6月29日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

決まった数しかないピアノの鍵盤を使って、誰も聞いたことのないピアノを引く1900。しかし、どこまでも続く摩天楼のビル群を見て、無限にある鍵盤では演奏できないと下船を諦める。

物語の主人公というものは、新たな世界へ飛び込んでいくものだ。しかし彼は、そこに留まり続けることを選択する。何故そんな選択になったのか、色々と考えてしまう。

戸籍がなく社会的に存在していないという現実は、1900に自らを虚ろな存在とし定義してしまった。また、大人の中で育つため防衛的な意味での観察力は必須だったろう。相手を喜ばせることで船内に居場所が確保されるのだから。

やがてピアノを弾くことを覚えた彼は、目にした相手やその場の雰囲気を自分の中に投影し、音楽として表現するようになった。観察には長けているが、虚ろで自分を表現するという発想がない彼だからこそ出来る独特な演奏。拍手喝采でやがて船内のバンドに迎えられる。

しかし、自分を主張することを求められた決闘の序盤は、期待されるような演奏にを行えなかった。しかし最後には相手を自分の中に取り込み、その上を行く演奏を見せ勝利する。対戦相手の感じた屈辱、絶望はどれほどのものだったろうか。作中で一番の見せ場だが、改めて考えると主人公の無邪気な残虐さにただ恐怖する。自分より喜ばれる相手を目の当たりにして、居場所を失うと認識したのだろうか。

そんな彼の演奏は相手に一時の幻想を与える。しかしそれは、アメリカという大きな希望の前では儚いものであり、かれもそれを十分に理解していた。これが後に下船しなかった下地となる。

そんな彼が唯一、自分の中から湧き上がる思いで演奏したのが、少女を見つめながら演奏した時なのだろう。その思いを伝えたいという衝動は彼自身を混乱させただろう。

やがて少女とその父が言っていた、海の声を聴くために下船を決意した1900。だが無限に続くビル群を改めて目の当たりにする。人々を引き付ける巨大な希望の象徴である摩天楼。そこで人々を喜ばせ自分の居場所を確保する事が不可能と悟り彼は下船を諦める。

その後は、船の舞台装置のように演奏を続けたのだろう。最後は船の爆破という彼にとっての世界の終末。当然抗うことはできず、船と運命をともにすることになった。初めから定められていた運命のようなものを感じる。

マックスと1900の出会いからジェットコースターのような演奏シーンはとても印象的。他にも素晴らしい曲がたくさん詰まった素晴らしい映画

コメントする (0件)
共感した! 0件)
komasa

4.5不思議な既視感

2022年12月24日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

見ながら妙な既視感に駈られていたの是不思議に思っていたら、監督が🎥ニュー・シネマ・パラダイスのジョゼッペ・トルナトールであった。これ程作品の雰囲気に特徴が出る作家はそういない。稀有な作家のこれも実に傑作と呼んで良い仕上がりとなっている。なんとも言えない感情に教われる、これぞ名匠の作品と言って良いであろう🎵

コメントする (0件)
共感した! 0件)
mark108hello

4.5"もっと価値のある物語だった"

2022年11月7日
iPhoneアプリから投稿

ノンカット版を視聴。

楽曲の名前もなく、楽譜もなく、ジャンルにも囚われない。1900が音楽で表現していたのは、心象風景の切り取りや、記憶の追体験。

そして1900にとって「世界」とはマクロな話ではなく、一度に2000人乗る船客それぞれが抱える事情を知り、ミクロな世界が集結された知覚の束の延長にあるようなもの。徐々に積み上がっていくもの、という意味ではデイビッドヒュームの考え方に近い。

ではそのミクロに終わりが無かったら?
ピアノの鍵盤数が88ではなく無限だったら?
美しい女性、住むべき家、あらゆる誘惑、価値基準が無限にあったら?

1900の言う「見えない」とは、無限の存在の言い換えだ。 1900にとって、終わりのないものに価値は無い。恐怖の対象でもある。
有限であるからこそ、表現の可能性が生まれ、感謝の念が生まれ、その一瞬一瞬を大切にしようと思える。

その啓蒙の先に音楽がある。
その一瞬一瞬の心象風景を皆で共有し、同時に個々人が別々の思いを馳す事もできる。そして時間を忘れ、その瞬間に陶酔する。即興でそれを追求する1900が抱く音楽への認識は、極めてデュオニュソス的な思想に近かったとも思う。
そしてその瞬間や概念と真逆の位置にある"陸"は1900にとって耐えられないものだった。

情報に対する1900の考え方には本当に納得出来る。
音楽では、個々人の推察から得たストーリーという受動的な情報と、そこから紡ぎ出す鍵盤の組み合わせという能動的な情報が合わさり、また一つの情報が生まれる。
得た情報を実践しないと意味がない陽明学的な思想に近い。

対して現代では情報が無限に錯綜し、聞き手は受動的に把握するだけだ。これでは脳味噌がパンクしてしまう。
増え過ぎたネット情報、歌詞や考え方を全て押し付け、能動的な思想の介入を許さない全てのコンテンツ、私もそんなものに嫌気がさしている。

ほどよく有限なバランスこそ、美しさの象徴なのだと思う。
朽ち果てる船のシーンがそれを象徴していた。

このような思想を核として伝えながら、この映画は人生譚としての機能も描いている。
何も知らず"個"であり続けた人生、それでも実力で残れた人生、そしてある日己と向き合って取捨選択をし、覚悟を決めてそれに沿って生きようとした人生。

この3つには全ての人に共通するアナロジーがある。
だが、多くの人が信念を貫けない。
無限に情報と選択肢があり、無限に逃げられるから。

彼にとっては海の上の船の中にしか選択肢はない。逃げ道もなく、自分を肯定し続けることが出来る。
もしかしたら、彼は街に降りたら凡人に成り下がっていた可能性だってある。

彼はなぜタラップから降りなかったのか。
終わりが見えない。一言で言うとそうなるが、選択肢の多さが重くのしかかる人生に希望が見えないからだ。
選択肢は人を苦しめる。脳のリソースを蝕む。

彼のようにそこから解放される環境がある人がいる一方、ほとんどの人にはそれが不可能だ。この合理的な地獄から抜け出すことは、もう人類にはできない。その瞬間、彼への同情と、この地獄への雄叫びが同時に込み上げてきて、涙が止まらなかった。

マックスは、この映画の中で2度印象的に泣く。
1900が調和の音楽の姿勢を取り始めた時。
1900が船の中で死ぬことについての意志とイデオロギーを語る時。

マックスはなぜ泣いていたのか?
私は、それを推察することは邪推なのだと思う。
ショーシャンクでいうレッドがそうであるように、この映画の主人公は実はマックスであるように思う。

両作品、そして名作に共通している脚本アプローチは、映画の中の「すごいやつ」の思想と物語を聞き、映画の中の「ぼんじん」が人生態度を改めていくことだ。なぜなら、視聴者は「ぼんじん」であり、映画の中で人生態度を改めた「ぼんじん」に感情移入し、自身も今後そうあれるように擬似体験できるからだ。
そしてより映画の中の「ぼんじん」と同じ疑似体験をさせるために、映画の中の「すごいやつ」には極力全てを語らせない。ミステリアスな部分を残しながら物語を展開する。

だからマックスは「この映画を見る視聴者自身」でもあり、マックスが泣いた理由は、視聴者それぞれが泣いた理由でいい。
私の考えで言うなら、マックスが演奏しながら泣いていた理由は「今まで1900に注目が集まっていたが、いざ自分に注目が集まり熱心に弾いてみると、全然注目が集まらない。自分はなんてへぼいんだ。」という事を再確認してしまった涙なのだと思う。

1900の死の覚悟を知った時に泣いたのは、「友への別れ+1900との会話を通し自分がトランペットをやめた理由が、"無限の価値基準"に惑わされた結果であったことを認識し自分を恥じた。だからこそ1900の言っている事が痛いほど分かる共感と絶望の涙」という事もあったのだと思う。私が泣いた理由と全く同じだ。

だが私が最もこの物語に価値を感じるのは、楽器屋の爺さんが言っていた、「もっと価値のある物語だった」という一言に尽きる。

価値のある物語とは、分かりやすいアナロジーが存在し、前向きにさせる事ができる物語だということ。

この映画の中なら、爺さんは1900の話を聞き、マックスにトランペットを返した。
マックスは、1900との会話を通して、一度は捨てかけたトランペッターとしての人生を再度拾い上げ、前を向いて歩こうとしているシーンで映画は終わる。
物語を通して、2人の人生態度を変えている。
爺さんはこの後「そんなホラ吹き話(笑)」と人の話を無碍にせず、前より人の話を聞くようになるだろう。
マックスは"陸に潜む無限の価値基準"から解放され、「凡人」であることから逃げず、敢えて向き合うことでまた音楽家に戻るだろう。
辛い経験は人を寛大にさせ、物語は疑似経験値として機能する。

なんて素敵な話なんだろう。
以前ウォルト・ディズニーが言っていた。
「物語を作るという事は、嘘か本当かではない。それを見た人にとっては(表象的な事実関係ではなく、アナロジー的な心理体験が)真実であり、その人自身が元気をもらえるようなものを作るということ。」
ハーベイカルテルのsmokeでも全く同じ事を言っていた。

この映画はサブ役者が物語を聞き、態度を改めるというシーンを視聴者に見せ疑似体験させているという点で、数倍に増してそれを表現できている。

私も有限なものの魅力をもっと深掘りしていこうと思う。
あれもこれもではなく、バランスの調和を保ちながら。

現代に疲れてしまった時、戻ってきたくなるような、本当に素敵な映画だった。

楽曲も本当に素敵で、流石はエンニオ・モリコーネとしか言いようがない。特にedはクラシックであるようで、どこか彼らしいマカロニウェスタンの雰囲気も感じる。1900と同じように、天国でも素敵な楽曲を作っていることを祈る。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
dmi

4.5美しくピアノの旋律!切ないラスト!

2021年8月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

船で生まれ、生涯船で過ごした伝説の天才ピアニスト1900(ナインティーンハンドレッド)。彼が紡ぐピアノの演奏は、まさに彼の心の叫びであり、葛藤であった。

特に、彼が恋に落ちた瞬間にできた曲は、とても美しく、彼女のピュアな感じが曲に表現されていた。

とても切ないラスト。でも、マックスの作り話だったんではないのか?本当に実在した人物だったのか?と、想ってしまうのは、私だけだろうか?

コメントする (0件)
共感した! 0件)
うさぎ

5.0永久保存版🙆‍♂️

2021年3月7日
iPhoneアプリから投稿

これぞ名作映画。重厚で壮大。観るものをじっくりと引き込んで行く。それ故、長さを感じさせない。これぞ芸術の域、素晴らしい。

コメントする 3件)
共感した! 5件)
@Jankichi@

2.5印象は変わらず

2021年3月4日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

公開時、劇場で観て?だったが、今回3時間の完全版を観てやはり?だった。
大きな豪華客船で生まれて捨てられ、親を知らない男の子は船員たちに育てられる。
大きくなって(ティム・ロス)、ピアノの天賦を発揮するが、船を降りようとしない。
ピアノの名手とのピアノ合戦や美しい乗客との恋などを経て・・・。
人生は船の中だけで十分、というのはわからないでもない。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
いやよセブン

4.5【”海の声は、人生は壮大だと言っている・・。”豪華客船ヴァージニアン号の2000人の乗客を、類稀なるピアノで魅了し続けた男の物語】

2021年3月2日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

知的

幸せ

■物語は、第二次世界大戦後、マックス(プルイット・テイラー・ヴィンス)が愛用していたトランペットを古楽器商店に売りに来るところから始まる。
 彼は、”トランペットをもう一度だけ吹かせてくれ”と店主に頼み、その曲を聴いた店主が古いLP盤を出してきて”これと、同じ曲じゃないか?”とマックスに話しかける・・。

■印象 <Caution! 内容に触れています>

 1.ヴァージニアン号の一等客船のグランドピアノの上に置かれた籠の中には、男の赤ちゃんが・・。周囲から愛された彼は、”ダニー・ブートマン・T・Dレモン 1900"と名付けられる。
  ー 船の中で働く人々の”1900”に対する温かい接し方。取り分け、育ての親のダニー・ブートマンの姿。-

 2.成長した、2000(ナインティーン・ハンドレッド)(ティム・ロス)が大しけで船酔いしたマックスと、床の上を滑るピアノを平気な顔で、巧みに演奏するシーン。
  - ”海とのダンス”を楽しむ2000の嬉しそうな顔。ー

 3.ジャズの発明者と名乗るジェリーと”ナインティーン・ハンドレッド”とのピアノ合戦のシーン。
  ・一曲目は、”ナインティーン・ハンドレッド”は”きよしこの夜”をゆっくりと弾き
  ・二曲目は、ジェリーの演奏した曲をそのまま弾き(これだけでも凄いのだが、観客からはブーイング)
  ・三曲目は、ジェリーが”ちびるなよ”と、捨て台詞を吐き、早弾き。”
  ナインティーン・ハンドレッド”は”覚悟しやがれ”と言い、火のついていない煙草をピアノに乗せ、更に即興の”4本腕”での早弾きを披露する。
  熱せられたピアノの弦で、煙草に火をつけ、ジェリーに加えさせる”ナインティーン・ハンドレッド”。
  - 特に印象的なシーンの一つである。-

 4.”ナインティーン・ハンドレッド”は、頼まれて初めてレコード録音をしている時に見た美しい女性に惹かれ・・・。
  そして、彼女に会いに初めて陸に下りるシーン。
  タラップを途中まで下りるが、”遠くを見つめ”被っていた帽子を投げ、再び船に戻る・・。
  - ”ナインティーン・ハンドレッド”は、遠くに何を見たのか・・。それはこの映画の再後半に、彼が自ら語る。-

 5.戦時中、”ナインティーン・ハンドレッド”の行方は知れず、豪華客船だったヴァージニアン号も朽ち果て、爆破されることになり・・。

<”ナインティーン・ハンドレッド”は、何故、船に居続けたのだろう。それは、きっと陸よりも船上の方が、彼に取って、全てが分かる安全地帯であったからであろう。
 陸では、第二次世界大戦が起こり(劇中では、直接は描かれない。)、人々が疲弊し、困窮していく中、海の上だけは、ヴァージニアン号の中だけは、彼に取っての安全で、心休まる場所であったからであろう。
 最後の、爆破のシーンは切ないが、”ナインティーン・ハンドレッド”の”遠くに何があるか見えない、分からない処では生きない・・という、彼の生き様”を示していると思う。
 ジュゼッペ・トルナトーレ監督は、そんな事が言いたかったのではないかな・・、と勝手に推測した作品。
 重厚で、見応えある作品である。>

コメントする (0件)
共感した! 5件)
NOBU

5.0最高の敬意を

2020年12月27日
iPhoneアプリから投稿

ただただ賞賛と拍手を。

彼の人生の素晴らしさも涙もなくては語れない。

素晴らしい作品でした。
名作は時代を超えても名作。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
カチャトーレ

4.5人の欲望は海よりも果てしないのか〜

2020年11月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

知的

随分と以前に一度BSとかで観た程度で
あまりしっかり覚えていなかったので
この機会にイタリア完全版を鑑賞。

いや〜映画らしい映画をしっかり観た満足感たっぷり!!

ヨーロッパからアメリカへ向かう豪華客船の進む先、
霧の晴れ間から静かに姿を表す巨大な自由の女神!
甲板に溢れる貧しい移民たちの中で
いち早く自由の女神を見つけた男が叫ぶ!

アメリカだ!!

ああ、なんと映画的なオープニング!

嵐で大揺れの船内、広いダンスホールで揺れに合わせて

大きく弧を描いて廻って行くピアノの椅子に乗って

涼しい顔でピアノを弾き続ける主人公と楽団のラッパ吹き!

いかにも映画らしく
大スクリーンで
観るにふさわしいシーンの数々〜
いいなあ〜大きな映画って!!
それもそのはずで監督は
「ニュー・シネマ・パラダイス」の巨匠
ジュゼッペ・トルナトーレ!

そんなことも知らんと観てたのか〜〜い!と

突っ込まれる程度の中途半端な映画好きなのです(汗)

大きな豪華客船、
物としては大きいけど人が人生をおくるには
狭い空間でしかないのに、
船の中で生まれ、
一度も地上を踏んだことのない主人公には、
どこまでも広がる街の様子が
果てしない欲望の波に
思えてしまったのか〜

こういう深い人間ドラマを大掛かりなロケやセットで

しっかり描いた映画が少なくなりました。

今はCGでなんとでも表現できるけど
やはり、
ロケやセットを駆使した大きな映画って
観ていると背景の一つ一つから
物質としての存在感が
伝わってきて豊かな気持ちになります。

このコロナの影響で映画産業の打撃は大きく
もうこんな本物を使った人間ドラマは
観られないかもしれない。
公開から随分時間が経ってしまったけど

チャンスがあればぜひスクリーンで観てください。

「午前10時の映画祭」が来年復活するから

一週間でも良いのでまたやってくれないかな〜

コメントする (0件)
共感した! 2件)
星のナターシャ

4.0船で生まれ一度も下船しなかったピアニスト

2020年10月28日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

1999年に公開された作品は見た事なく、追加映像を入れたイタリア完全版を鑑賞。
ヨーロッパからアメリカへの豪華客船で1900年に生まれ、ピアノの上に置かれていた赤ちゃんが凄いピアニストになっていく話。
通常版ってどこをカットしたのだろう?って思うほど、無駄な映像が有るようには感じなかった。
主人公のピアニストとかつて一緒に演奏してた元トランペット奏者がトランペットを売りに行った楽器店の店主との会話が経緯を説明してる。
黒人のジャズピアニストと演奏対決するシーンは迫力あった。
なぜ最後まで船を降りなかったのか、本人が説明してるけど、陸に居る人とは違う感覚なんだろう。
ピアニストの腕が素晴らしいだけに、もったいないって思った。

コメントする 2件)
共感した! 5件)
りあの

5.0思考実験としての「一人の人間の生涯」

2020年10月25日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

いやぁ、「イタリア完全版 」なんて言うし。しかも4日間限定?是が非でも見なくては!ってなるやないですか。なんか、やっぱり、芝居ががってるフランス・ファンタジー文学的なイタリア・アメリカ合作。たっぷりと堪能できて大満足です。

ステファノ・ベンニって言うフランスの作家が好きなんです。所謂、ホラ話。実体はファンタジーに近いです。「豪華客船で生まれ、誰に教わったでもないのにピアノの天才で、生涯一歩も陸に降れず、船と共に、その生涯を終えた男の話」。そんな生涯を送った男がいたとしたら。興味は湧かないですか?

もう、俺の中では完全にホラ話。現実離れしてます。現実には起こりえない物語に聞こえます。そのホラを実体・実像化すると、こうなるねんでぇ!的な。

非現実に超人化されてたり、浮世離れしてたり、儚かったり、ストイックだったり。ピアニスト1900は、俺の中では、やっぱりファンタジー的存在。20世紀の一年前と言う名前は遠くて近い「失われた過去の記録」を象徴してるんじゃないかと思うんですよね。今のご時世、「伝説」には立錐の余地も無いくらいに現実主義化してるから。都市伝説に、人が惹かれるのは、人はリアリティや合理化だけを求めて生きてないから、って事かねぇ、なんて事を思いました。

良かった。とっても。

まだ10代だったはずのメラニー・ティエリーの瞳の美しさに、完落ちしました。

コメントする (0件)
共感した! 4件)
bloodtrail

4.5映画っていいなぁ、至福のひととき

2020年10月1日
iPhoneアプリから投稿

タイトルそのまま、映画っていいなぁと思わせてくれる作品。

時代背景や人物群など、どれひとつ自分の人生と重なり合うものはないはずなのに、丁寧に描かれてるからこそノスタルジアを誘う、こういうのに弱いのです。

カズオイシグロの長編に浸ってる感覚に近い。

心に残ったフレーズ
「終わりのある、88鍵という限られた世界に生きたい」

程よく笑わせてくれて、程よくフィクションを楽しませてくれ、そしてジーンとさせてくれる、至福のひとときでした。

コメントする (0件)
共感した! 5件)
donmai_honamata

5.0あぁ…映画だ! 至福❤️

2020年9月13日
iPhoneアプリから投稿

初見。40分ブラスの完全版とのこと。だるだるするかな…と心配でしたが、これが初見で幸せでした!

どこがどう増えたのか全然わかりませんが、これ削るところないじゃないですか!? すべてのエピソードがあますところなく簡潔で完成されていて、語りすぎず語らなさ過ぎず、冒頭から最後まで練りに練られたストーリー構成。芝居がかり過ぎ感はままあれど、どこかおとぎ話にしたいという演出なんですよね。1900はまさにおとぎの国の人。

タラップで立ち止まるシーン、何故かトゥルーマンショーの出て行くシーンと重なりました。逆なんですけどねw

幸せになれました。キレイな宝石のような作品…なんて批評の定常文があるけれど、ホントにそういうのあるのねぇと感心しきりです。

ドラマじゃなくて、舞台じゃなくて、映画だからこそのコレである。なんていうか…映画カッコイイ👊👊👊

コメントする (0件)
共感した! 3件)
ジャム太

4.0感慨深い作品

2020年9月13日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

 船はどんなに大きくてもその範囲は限られている。陸地での生活に比べると船での生活は狭い世界のように思える。主人公1900は生まれてから死ぬまで一度も船を降りることがなかったという作品紹介の通り、人生のすべての時間を船上で過ごした訳だが、作品の世界観は決して小さくない。船とそこで仕事をする人々、旅をする人々のすべてと世界との関わりまで広がっている。リバティ島を見て「アメリカ!」と叫ぶシーンは、三等客室の苦しい旅をする人々の解放された喜び、目的地に到着した喜びが爆発するようだった。
 船には乗船し合わせた数千の人々が運命共同体として目的地に運ばれる。凪があり嵐がある。事故も起きる。人間関係は単純だが深い。そこには多くの人生が生々しく存在し、主人公はそのすべてを受け止める。
 殆どが船の中のシーンだが、少しも退屈することはない。トランペット奏者の思い出話で語られる形式もいいし、主人公の人生に感動して話を真摯に聞く人たちの態度にも感銘を受けた。
 音楽家は人生を奏でる。奏でられた音楽は聴く人々に響き、その人生を勇気づける。音楽は主人公の人生そのものであった。偶然と必然。人はこのように生命を燃やすものなのかと改めて思わされる感慨深い作品であった。

コメントする (0件)
共感した! 3件)
耶馬英彦