「NETFLIXにて」グリーン・ヘル クラさんの映画レビュー(感想・評価)
NETFLIXにて
本作はNETFLIXで「マウス〜終わらない戦禍〜」というタイトルで配信されており、今回はそちらでの鑑賞となる。
本作を鑑賞する前に、歴史のお勉強が必要。学生時代に「ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争」を何となく習った記憶がある人は本作の鑑賞に向いているだろう。ボスニア・ヘルツェゴビナとは、1990年代にユーゴスラビアから独立してできた国の事である。その際の数年間に渡り紛争が続き、それがボスニア・ヘルチェゴビナ紛争なる訳だ。
この国にはボシュニャク人、セルビア人、クロアチア人がおり、それぞれ宗教的な違いが存在する。
ボシュニャク人:イスラム教徒
セルビア人:東方正教会
クロアチア人:カトリック教徒
まずこの事実を把握していなければ、アジア人である我々には「??」の連続。
この紛争の停戦間際に「スレブレニツァの虐殺」という事件が起きたのだが、これはセルビア人によって、ボシュニャク人が大量虐殺された事件である。
本作は、その直後の出来事であり、(NETFLIXで鑑賞後に調べた)主人公の両親はそれで亡くなっている。だから主人公は最初から様子がおかしく、助けてくれたセルビア人にも不快感を示していたのだろう。主人公を乗せた恋人の車が故障し、彼の犬を含め森を歩くことになるのだが、ここでも主人公の拒否反応が出る。この森というのが、彼女の両親が行方知れずになった森だからだ。また、ここには洪水で流された地雷が沢山埋まっているのも理由の一つでもある。犬が地雷を踏んで瀕死の重傷を負うという展開から、主人公の妄想なのか、現実に起きていることなのか分からないシーンが多くなり、それが後半まで引っ張られる。助けてくれたセルビア人男性二人も主人公を犯した様なシーンもあるが、ここら辺は良く分からないのが正直な所である。終始この調子で最後の最後まで続き、本当にボスニア・ヘルツェゴビナ紛争に密接に関わる様な構成であった。一応原題にもなっている「マウス」という怪物の様なものは登場するのだが、決して誰彼構わず襲うバケモノでは無い。精霊の様な存在のそれは主人公が信仰している神様であり、のっぺらぼうの女性のような風貌である。主人公が祈りを捧げると彼女は助けに来てくれる様で、ピンチのときはここぞと言うばかりに登場する。なので、DVDのパッケージに「正体不明の怪物」と表記するのは失礼ではないかと思ってしまう。派手なパッケージとは程遠く、ボスニアの広大な森で展開される極めて静かな物語なのである。
派手なホラーを期待してしまうパッケージはいかがなものかと思いつつ、現実との境目のわからない構成と、戦争を経験した者だけが分かる苦しさ。この人類の歴史上には不遇極まりない黒い歴史が存在するのである。それを体感する一種の「教材」として、下調べをして鑑賞するとまた違った見方が出来るのであろう。
