劇場公開日 2021年4月9日

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「鍵の受け渡し」砕け散るところを見せてあげる 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

0.5鍵の受け渡し

2021年11月4日
PCから投稿

むかしからよく見る英字4文字の監督。(ちなみにこの名前見るたび同じ音のゲイ雑誌思い浮かべます。)長いキャリアだけど演出はへた。しかもみょうに賞に媚びたアートな作風。幸福の鐘蟹工船MissZOMBIE天の茶助・・・お粗末さにそぐわない気取り、なんかありそうでじつはなんにもない、辺境のアワードを獲ってきてはベテラン監督面さげてるスカベンジャー。だいきらい。

同情で稼ぐちんぷでくさい話。典型的なザ日本映画。原作に文句はありません。ラノベならそれでいい。文には想像の余地がある。でも映画になったら、そういう土俵で見られる。

なんつうかザ日本映画の監督は抑制ができない。
わかってもらえるか、わからないが、なんでもぜんぶやりすぎる。かわいそうな設定なら、それをベタ一色のかわいそうな設定に染め上げる。憎まれ役なら単細胞のガキ大将にしちまう。

なんつうかキャラクタライズ上の妙味が、ザ日本映画にはぜったいにない。ことごとく単純に同情させる(もしくは憎ませる)位相にする。シンパシーのかせぎ方が外国映画の大人度にくらべて圧倒的にださい。それを見るとこじんてきに「このえいがをつくったひとは○○だ」と思います。

かんぜんな商業映画、プロダクトとしての監督業ならば、さらさら文句はありません。でもこのひと、いわゆるアートなの標榜して、にんげんの深淵見つめてますよ──てなポジショニングでいくつも撮ってるよね。その立脚点に反吐が出ます──という話。

ひとさまがご苦労をされてつくった映画をけなすわたしはほんとにいやなやつです。きらいなかんとくのきらいな映画をレビューするつもりはありませんでしたが、ひとつどうしても言いたいことがあって書きました。

濱田くんが公衆トイレの清掃用具置場のパーティションをよじ登って、そこに隠れている玻璃を見つけます。濱田くんは足場のないパーティションによじ登り全身を腕で支えているため苦しげです。踞座している玻璃のかたわらに置場の鍵があります。で、濱田くんは鍵をよこせと頭上から手をさし出します。・・・。いくつかの会話のあと、ふたりは大変な労を負って鍵の受け渡しを完遂します。

しかしトイレの下には隙間があり、そこから光が漏れています。ぜひこのシーンを見て下さい。人類の叡智を否定するシーンです。
扉の下に隙間のない公衆トイレは引き戸のトイレだけです。どうやったら二人がもっとかんたんに鍵の受け渡しができたか、にんげんならおわかりになるとおもいます。小さなことかもしれません。が、わたしはかれらの○○さかげんとその物理的矛盾を成立させたかんとくの○○さかげんがどうしても許せませんでした。トイレの構造的理解がないひとが映画なんかつくれるはずがありません。0点。

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津次郎