配信開始日 2020年4月24日

  • 予告編を見る

「原作に改良を重ねたルッソ兄弟ブランドのノンストップ・アクション」タイラー・レイク 命の奪還 ホンダケイさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0原作に改良を重ねたルッソ兄弟ブランドのノンストップ・アクション

2021年9月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 1971年にパキスタンから独立するも、現在までアジアのみならず世界の最貧国として知られるバングラデシュ。その最危険都市である首都ダッカを舞台に、誘拐された麻薬組織のボスの子供を奪還するため、凄腕の傭兵、タイラー・レイクの決死の救出劇が描かれる。

 原作は数々のMCU作品を手がけたルッソ兄弟の弟ジョー・ルッソが、2014年に発表したグラフィック・ノベル「Ciudad」(作画はフェルナンド・レオン・ゴンザレス)。ここで誘拐されるのは少女だが、映画では少年に置き換わっている。

 監督のサム・ハーグレイヴはスタントマン出身、「キャプテン・アメリカ」でのクリス・エバンスの代役で知られ「ウィンター・ソルジャー」での市街戦のアクション・シーンを手がけるなどをして演出の実績を積み、MCU作品以外でも「アトミック・ブロンド」「スーサイド・スクワッド」「ザ・コンサルタント」、そして中国歴代興行収入の第1位を記録した「戦狼 ウルフ・オブ・ウォー」のアクション監督を務めている。

 その手腕は遺憾なく発揮され、特に注目なのが中盤のカー・アクション。カメラは脱出するタイラーと少年の車を後方から追っているが、行き止まりで車が反転した瞬間、その後部座席にカメラは乗り込み、ターラーたちの会話を収めていく。それにより、今回の計画が何か大きな陰謀に支配されている事を感じさせながら、追手の激しい攻撃をも活写する。そして彼らは巨大で古びたマンションへと逃げ込む事になり、ここからは狭い室内空間を存分に使った凄まじい銃撃と格闘のアクションが展開していく。カーアクション、屋内の銃撃戦、市街での格闘ファイト、再びカーアクションと、息をのむシーンは12分余りも続く。驚くことに、その全てがワンカットで撮影されているように編集。

「ボーン」シリーズの影響などで、最近のアクション映画のカット数は増加傾向にあっただけに、意表を突かれる演出だ。救出されるのが男子ティーンエイジャーなので、手荒く扱われても気にならないところも、うまい変更点だ。

 黒幕の描き方、少年との絆、タイラーの過去など、ストーリー的には唐突な展開も見られるが、それを補って余りある銃火器や格闘スキルへの深いこだわりが、高い満足感を約束してくれる作品である。

ホンダケイ