劇場公開日 2020年11月27日

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「【大切な友の顔を脳裏に刻み込み、哀しみを乗り越え、僕らは単調で厳しき”大人の日々”を必死に生きていく・・。】」佐々木、イン、マイマイン NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【大切な友の顔を脳裏に刻み込み、哀しみを乗り越え、僕らは単調で厳しき”大人の日々”を必死に生きていく・・。】

2021年2月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

幸せ

■学生時代の親友は、一生の友である・・、と勝手に思っている。

 彼らと過ごした、何気ない毎日。
 自由で、気儘で、他愛もない会話をし、
 冬山登山で死にかけ、
 一晩中、地下鉄を通す坑内を、瓦礫を乗せた重いトロッコを押し、
 女の子の話をし、
 ロックを朝から晩まで聴き、
 大学へもロクに行かず、本を耽読し・・。

 もう、あのような自由な時間が私に訪れる事はないであろう・・。

<Caution! 以下、内容に触れています。>

◆物語は、石井(藤原季節)、多田、木村(森優作:個人的にカワウソ君って呼んでいる・・。可愛い顔である。)、そして、佐々木(細川岳)の高校時代と、現代とを行き来しながら物語は進む。

◆感想
 ・佐々木のキャラが半端なく立っていて、彼を観ているだけで画面に引き込まれる。
  佐々木コールが起これば、パンツまで脱いで踊り出すし、
  父と二人暮らしの部屋の中は、足の踏み場もない程汚いし、
  けれど、石井、多田、木村はいつも、彼とつるんでいる。

  - こういう、人を引き付ける不思議な奴っていたなあ・・。
    私も比較的そういう立ち位置だったけれど、パンツは脱がなかったし、
    部屋は高校、大学とも溜まり場だったけれど、綺麗だったし、
    なにより、私自身が、佐々木よりずっと小賢しかった・・。 -

 ・佐々木の人の眼を気にすることなく、自由に振舞う態度。そして、時に口にする金言。
  ”出来ないから、やるんだろ!”と真面目に、石井に食ってかかったり・・。
  損得勘定なしに、飾る事無く、純粋に生きている男には、魅力があるのであろう。
そして、佐々木が抱える、遣る瀬無い哀しみ(父の不在、経済状態など)も、彼らを引き付けるのであろう。

 ・佐々木の、滅多に家に帰って来ない父の死が、先生から生徒たちに告げられるシーン。
  佐々木の無理をした、佐々木コールの要求に対し、石井の言葉”無理すんなよ・・”

 ・”俺には、普通の就職は無理”と、パチプロになった佐々木。
  危うさも感じるが、漢気を失っていないシーン
  ”列に並べよ!”が沁みる。
  ー ナカナカ心の中で思っていても、やり過ごすのに、彼は・・。-

 ・佐々木が亡くなったと”彼の友人の女性”
ー 佐々木が、カラオケボックスで初ナンパした。普通なら、気味悪がられるだろうに・・。流石、佐々木の人間力である。-
 から連絡が入り、あの汚い佐々木の家の前での彼らの呆然とした表情。
 ー 佐々木が、石井、多田、木村に遺した影響が如何に大きかったかが、分かるシーンである。-

 ・石井は、夢である役者を目指す日々だが、昼間は”箱職人”として、単調な日々を送り、元カノ(荻原みのり)とも同じ部屋で、ズルズルと同居している。

 ・多田は、営業マン。

 ・後半、”ええっ!”と思ったのは、木村の奥さんが、高校時代の憧れの君、一ノ瀬さん(小西桜子)だったこと。頑張ったな!

 ・石井が、葬儀の前、喧嘩してしまった元カノの所に全力疾走し、”今まで有難う”と頭を下げるシーン。 彼が、”青春時代との決別を告げるシーン”であるが、その後押しをしたのは、死した、佐々木である。

<あの、印象的なラストは石井、多田、木村の願望が生み出した幻であろう。
 彼らは、単調で厳しき”大人の日々”を過ごす中、佐々木の事が頭のどこかに残っており、
 彼の且つての姿に、励まされていたのであろうから・・。>

<2021年2月13日 刈谷日劇にて観賞>

NOBU