劇場公開日 2021年3月5日

「実業と虚業、美と醜の狭間で・・」キンキーブーツ ショコワイさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5実業と虚業、美と醜の狭間で・・

2021年6月15日
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鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

1 倒産寸前の靴工場を継いだ二代目が、知り合ったドラァグクィーンや従業員とともに特殊なブーツに再建を託すミュ−ジカル。

2 工場の再建という地味なスト−リであるが、そこにゴ−ジャスなショ−の場面やディスコティックな歌が加わり輝きを放つ。ドラァグクィーン・ロ−ラの「あるがままで受け入れる」、「自分らしいあり方」という考え方は、誰しもそう有りたいと共感できる。しかし、学校や会社、地域社会など属する集団の中では、周囲と異なる行動や考え方を持つ人は同調圧力にさらされ、自分らしさを貫くのは容易ではない。ロ−ラはその代償として、生まれ育った田舎を捨て、父親とも別れを告げた。このミュージカルでは、人と違う生きかたをすることの苦悩も決まり事ではあるが、きちんと描かれていた。

3 本作は、舞台でのミュージカルを撮影したものである。カメラワークは控えめで、舞台正面を引きで捉えることを基本としつつ、時折登場人物をバストショットやアップで捉える。舞台の良さを壊さないようにしており、客席にいるような感覚を持つことができた。流動的にセットが移動する様には感心し、おそらく幕間部分がカットされシ−ンが途切れないところに映画版の良さを感じた。

4 ロ−ラ役の男優の存在感は衝撃的。むきむきの体と顔による女装姿は見事なまでにアンバランス。キワモノすれすれの人物設定に度肝を抜かれた。ショ−でのメ−クやオ−バ−アクション気味の動きは苦笑してしまうが、心根に男らしさと細やかさを併せ持つドラァグクィーンを見事に演じきっていた。そして二代目を完全に食った。ラストの、出来上がったブーツを履いて全員が歌い踊るシーンは、とても風変わりではあるが、それぞれが自分らしさを追求し目標を実現できた喜びに満ちていた。

ショコワイ