MOTHER マザーのレビュー・感想・評価
全84件中、1~20件目を表示
共依存
ずっと気にはなっていたけれど、中々観れなかった作品でした。
題材になった事件を調べてから観ましたが重く悲しい。
幼少期には、頼るべきものが母親しかおらずそのまま思春期になっても母親と共依存し続けてしまう。
俗に言う毒親という物なのでしょうが、妹の為に母親の要求に答えていたような気がします。
長澤まさみさんもすっぴんながら、何処か妖艶で美しくもあり怖くもあり。
観たことを少し後悔するようなそんな映画でした。
終盤、小さい鏡を見ながら白髪が増えたことシミが増えたことを気にしている様は母親と言うより女であることの価値を見出している。
どうか、加害者の少年がこの先幸せになってもらいたいと願うばかりです。
『Mother!you had me but I never had you.』聞いて50年経過。
こんな作られた人の不幸を見て、時間の無駄だと思った。真面目に生活保護を受けなければならぬ階層に対する差別に見える。
こんな映画しか作って貰えない俳優は哀れに感じる。この程度の演出家の前では、裸にもなれないし、本当に悪い女も演じる事は出来ない。
一方的に悪い男に虐待される『可哀想な女』をキャラクターに残して、女優としてのイメージを崩さない様にしている。そうしないと、彼女が請け負うCMのクライアントに解雇される。
その他のCASTにも事情があるので、出演するCASTに悪者がいない設定になっている。
しかし、キャラクターの設定に何一つ合理性が見いだせない。演じるCASTは演じるキャラクターに疑問がわからなかったのだろうか?
こんな狂気はあり得ない。
ベースは日本映画のDNAを見事に受け継いでいる。
一番の矛盾 それは母親に執行猶予が付く事。さすが『狂う日本社会』を創造する勇気は、この演出家にはあるようだ。つまり、その方が観客に喜んで貰えるのを知っているのだと思う。
『好き』と言う概念には色々とあるが、この息子の『好き』が母親を駄目にしている訳でしょ。でも、違うよね。それでも辻褄を合わせてエンド。
予定調和。
似たような経験をしたなら、心中抉られると思う
実話ベースらしい。
2022年6月閲覧
冒頭部の描写にあるように母親が祖父母や姉との関係が悪かったように、子供との関係にも同じような悲劇を繰り返す現実を写し出す。
彼女は自分の異常性を把握しておらずに息子を追い込んでしまった。生保の人との関係もうまくいかなかったのも、ネグレクトというのは複雑に入れ組んでおり、所謂福祉関係者が細部な観察を数日くらいでしただけですむ話でもなく、その方より母が優位にたってしまった。
マルマルモリモリほんと最低で最高な演技だったな。最低な人間とくっつき依存してしまった。長澤まさみ、よかったよ。
タイトルなし
実話を元にした作品らしく鑑賞後にネットで調べてみたら記憶が蘇った。事件が報道された当時は少年が自分や仲間の遊ぶ金欲しさに犯した犯行と勝手に思い込んでいたから、鑑賞中は作品と事件が全く結びつかなかった。ただ、全く別の事件ではあるが母親の育児放棄や虐待が報道された時に自分が想像する母親像とはさほど変わらなかった。
作品を鑑賞した事で少年の心境や行動原理は解らないでもないと思ったが、母親の思考回路は全く理解できない。一緒に育てられた両親や妹を見る限り普通の家庭で育てられたように見えるのに何が彼女をここまで自堕落な人間へと突き落としてしまったのか。何度も助けの手は差し伸べられていたというのに、どうでもいい男を優先して払い除けていく。自分と男以外の人間の事を餌にしか見ていないが、同類の人間が少なからず世の中には一定数居るんだろうなと考えると本当に怖くなる。
凄い毒女だったけど長澤まさみさんが妙に色っぽく素晴らしかったが阿部サダヲさんはが本当にムカつくだけだった。
没入度が高いが、何故母が好きなのか伝わらなかった!!
キャスティングが良く、どの方も演技が上手く没入できました。大森監督は「星の子」でも子供を綺麗に撮るのが上手いと思いました。周平君がどのように洗脳されていったのか、また母の事が何で大好きなのかの描写は、クズ母が周平君だけは大事にしていたという訳でも無いので、ああそうなのと「さよなら渓谷」と同じものを感じて何か物足りなかったです。夏帆が毎回どんな汚れ役で出て来るか楽しみ(失礼)なのですが、今作では天使でした。フリースクールの職員に興味を持ちました。
長澤まさみが好きな「男」のための映画
社会派ヒューマンドラマを求めて観たらデスクをかち割りたくなります。
まず、観ていれば監督を知らなくても男性だと分かった。
長尺で男女が無言で近付きいきなり行為が始まる流れのしつこさ。
さすがに初っ端から無言すぎて違和感ある。
女性なら言葉を求めるからこんな演出はしないだろう。
いかにも男が憧れるシチュエーションが随所に見えた。
だらしない女だけど痩せてて美人でなぜか料理はできる。いかにも男がそそられるシングルマザー。
監督は女は生きていれば自然とじゃがいもが剥けるようになるとでも思っているのだろうか?
実家との関係性から察するに家の手伝いもろくにしてこなかったであろう秋子。子供の食事はカップラーメン。なのになんで、じゃがいもの皮がサクサク剥けんねん。
そして、そんな女のために男が都合よく創作した「息子」というキャラクター。
確かに虐待を受けても親を愛している子供はいる。
だが、幼くもない、心配してくれるまともな父親がいて世界に母親しか味方がいない幼少期を過ごしたわけでもない、自分で何も考えないわけでもない、機嫌がいい時は優しくて明るいお母さんになるわけでもない。ひたすら人権を蹂躙され、自由を奪われ、金稼ぎのロボットとしてこき使われるだけ。
なのに一度も怒ることなく母親のマリオネットに甘んじる息子を見て、あくまでもこの作品は長澤まさみの色気を堪能するためのものでしかないことを突きつけられる。
他の男どものように、息子まで女の色香だけで虜になるとでも思っているのか?
殺人までの心情の流れもお粗末極まりない。
犯罪者にさせられても母への愛を口にする息子の姿は、まるで処女営業のキャバ嬢に貢ぐおっさんそのものだ。
阿部サダヲの演技は必見。
あとおしゃれメッシュみたいな白髪はなんとかならなかったのか?
同じ母としてはなんとも言えない感情が湧く映画
共依存とは怖い。最後まで母親を好きと言う息子。君には違う生き方があるよって伝えたい。歪んではいるが母親にも愛がある。愛ってなんだろう、親子ってなんだろうって考えさせられる作品。
でも、子供は親の所有物ではなく分身でもなく親が好きにしていいことではないと自分の子育てに考えさせられるものがあった。
『誰も知らない』を彷彿とさせるネグレクト作品
母親と長男がメインのネグレクト系のお話しで
誰も知らないを思い出した
ずーっと母はそばに居るけど
息子を利用し続ける点では
こちらの方が重い生き地獄の様な。
母をどうしても裏切れない息子
それをわかっていながら
お金のために手下の様に利用する母
『私の産んだ子なの、どう育てても私の勝手でしょ。』
すぐ女をだして何とかしよう
という感じも気持ち悪いし
そういうの見て育った子供ってほんとにトラウマ。
息子が初恋をしたタイミングで
また母を選ぶことになりその場を立ち去る…
もどかしいけど、凄くわかる。
どんな親でも親なんだよなぁ。
はらわた煮えくり返るくらい嫌でも
どうにかしないと、そばにいてあげないとが勝ってしまう
この気持ちはなんと言うのかな…語彙力が(´・_・`)
味のある阿部サダヲさんはムカつくし
長澤まさみさんのクズ演技が上手すぎて
ほんとになんとも言えない胸糞最高作品!!!
(こういう作品は考えさせられるので好き)
タバコを1回で付けられないシーンとか
細部のリアリティさが◎
終わりは凄く心がモヤっとするけど
タイトル的にはなるほどな『MOTHER』
悪魔…
毒親というか、悪魔だ。自分の子供だから、どう育てようが勝手という母親。何一つ良いところがない、子供を大事にするシーンが一つもないのに、母親が好きだというラストシーンが悲しい。実話ベースの話だが、救いがない。息子を演じた子役二人は好演。映画冒頭は負のオーラを感じ辛い長澤まさみがしっくりこない気がしたが、徐々に慣れてきた。阿部サダヲがどうしても軽く感じ、入り込めなかった。
さて貴方はどの正義を振りかざす?
週末に気軽に本作をNetflixでチョイスし、観終わってがっくり肩を落とす。あまりにも救いの無い話は、実際に起きた事件を題材にした映画だった。
こんな結末を、映画を通して知ってしまった社会の傍観者は、親兄弟が悪い、役所は何をしていたんだ、警察は、ソーシャルワーカーは、マスコミはと、痛ましい事実を抑制出来なかった現実社会に腹を立てがちだ。なんなら政治にまで飛び火しそうな勢いすらある。
しかし映画で(しかもサブスクで)事件を知ったような人間が、後から遠く離れた土地で何を叫ぼうとも、どんな形の正義の拳を振りかざそうとも、何も解決することはない。所詮野次馬。事情も知らずにただ首を突っ込む姿は、偽善者と色眼鏡で見られること間違いなしだ。
この作品を目にして、明日から道端に佇むホームレスの家族のために何かしようとは思わない。お金もあげないし、話しかけることすらないであろう。人でなしと言われようが、関わることはない。だから私が、周平が生きてきた環境に文句を言う筋合いはないのである。
ただ、こういう事件が生まれる社会で、私らは生きていると知ることができた。正直それで十分だと思うのだ。
それにしても、重くて救いようのない題材を、せめて映画として成立させたのは長澤まさみのキャスティングのお陰だろうか。「カラダにピース。」なイメージを打ち消すほどの腐れ役。彼女もしっかりと嫌われ演技をやり遂げたが、それでも長澤まさみであることが唯一の救いだった。
映画として
そう言えば、こんな事件有ったなぁと。
その事件を書いた本は読んでいないので、何処までが実話に沿った話しになっているか分からないので、映画としての評価だけ。
自堕落な生活をしている母親に男が寄ってくるのは不思議だが、そこは長澤まさみが演じる事で、まぁ何となく理解してしまう。逆に何故に阿部サダヲ?と思う。実話は知らないが、妊娠した事を告げると「本当に俺の子か!」と暴力を振るって消え、五年後に突然現れて、また生活を共にしたり、男の借金の為に息子に勤め先の金を盗ませる程に魅力的には見えない。年下のイケメン俳優を使った方がリアリティは有ったかなぁ。
また、しばしば時間が飛んでしまう。それも結構大事な部分。妊娠したあと、突然に五年後となって娘が生まれているが、路上生活者の親子。どうやって子供を産んで、今まで生活してきたのかが不明なまま。
また、成長した息子が髪にメッシュを入れているが・・・・そんなお洒落?する余裕無いだろうし、あの母親なら自分の白髪を染めているだろう矛盾。
事件後、面会に来た児童相談員の夏帆に、息子はそれでも「母親が好き」と言うシーン。これは必要なんだろうか?何だか、親子の愛情と言う事で、あんな母親さえも美化しようとしてないか?
少年法撤廃派である自分だが、こういう環境で育ったら・・・・と感じてしまう。一種のプロパガンダ映画に感じてしまった。
役者陣、特に長澤まさみ、幼年期、成長後の息子を演じた二人の少年には高い評価をせざるを得ないが、脚本と演出には疑問が残る。
しんど!!
つ、辛い。辛すぎる。
「誰も知らない」的なやつは覚悟して観なければ…と思ってたけど覚悟が足りなかった。
秋子すぐ手が出たりすぐ怒鳴ったり、すぐに体の関係になったり…めちゃくちゃしんどかった。
観てるだけでしんどいんだから周平はどんな気持ちだったんだろうと思ったけど、それすら麻痺してるんだろうな。。
奥平くんが注目されるんだろうけど、幼少期の郡司くんすごく良かった!
「ここまでいってしまう前に何とかならなかったのか」はありきたりだけど、思わずにはいられない。周平が小学校途中まで行ってたならなおさら。
秋子に執行猶予ついてるのも後味悪い。現実の事件関係者も悔しかっただろうなぁと思う。
重い。とにかく重い。
モヤモヤ感がすごく残る映画。
長澤まさみが本気で嫌いになる。
母親は従順な奴隷としての息子を求めているだけで、
息子への愛は真にはない。
行動原理が息子のためにではなくすべて自分のためにという自己中が強すぎる。
映画としては見る価値はあるが、見終わった後に凄く嫌な重い気持ちになる映画です。
この意味は何??タイトルからしておかしい。
長澤まさみちゃんが賞を獲ったから、観ましたが、本当こういうの、、、んー。
実話って言いながら実話の大事なとこ全部変に改変してるのが本当もーって思う。これはダメだよ。これ実話を映画化する意味ある?んー苛々しちゃう。
この監督さんセトウツミとか日日とか良かったのに。なんで!?なんで、こんな改変したかなぁ。全然描けてない。もっともっと救いなんて何もなかったのに。本当に1ミリも救いなんてなかった事件なのに。。。そして、今も続いてるかもしれないのに。描いてない。そんな根性ならこんな作品扱うんじゃない!ホント腹立つ。
改変について
母親は父親違いの姉がいて、おばあちゃんは優しくて、周平は実父には虐待されてるし、義父(アベサダ)には性的暴行受けてる。夏帆の様な児相の人は架空だし、本当の児相が来た時も、歯が14本欠けてても気づかれてないし、周平は性的マイノリティの告白もしてるし、刑は15年だったと思うし、母親からの指示があったこと告白してるし、でも、立証できなくて強盗だけで4年半服役して出てるし、周平は妹が母親に売春させられるんじゃ無いかと現在はその心配してるし、でもって控訴もしてるから。
こんな風に悪変させて、何が観せたい?何を感じさせたい?まったくぅ〜長澤まさみの無駄遣いだし、賞を取れたのは良かったけど。。。出来レースに見えるようなことして価値下がりませんか?東宝さーーん。
まさみちゃんは頑張ってた、この女の愛情の様に見える執着心とか支配的で精神崩壊してる感じとか、破綻した感じは良く出てたと思う。
周平役の奥平くんと郡司くんを発掘したのは良かった。柳楽くんの時と似てる。。。
怒りを感じながら見てました。
このダメ親ぶりを見ていて、
正直、ずっと怒りを感じていました。
私も、親なんで。
しかしなんで、こんなMOTHERになっちゃったの?
そのあたりも、描いて欲しかった。
親と不仲だけじゃ、こんなにひねくれないでしょう。
見終わった後、暗く重い気分がずっと残ってるのは、
こんなMOTHERになった理由を掘り下げてないから
なんじゃないかな、と感じました。
長澤さん、大きくジャンプしましたね。
そろそろ、そういう年齢ってことかな。でも、もっと
思い切っても良かったかもw
息子・周平役の俳優、人気出てきそうですね。
考えちゃう。
何がどこで間違ってこうなってしまったのか。
まず、基本的なことがわかってない。
お金の使い方。人に嘘をついたらダメとか。
性教育とか。
姉は大学へ行って、まともに生活している。
姉妹でも、こんなに差があるものなの?
周平はお母さんが大好き。学校に行きたい、もう引っ越ししたくないってお母さんに伝えていたはずなのに、わかろうともしない母親。
お母さんが大好きだから、お母さんの言うことは絶対ってかなり危険だ。
何が変なのか、社会との繋がりがないからそれすらわからない周平。
こんなひどい母親っているのかな。
どうやったら、周平は殺人を犯さなかったのか。どうしたら、あの家族を救えたのか。
答えが見つからない。
生活保護も受け取らない、ソーシャルワーカーの手もかりない。
どうしたらみんなハッピーになれたの?
家族からも見放され、男からも見放され、
誰の手もかりたくないってなったら、
どうしたらいいのだろう。
悲しさと愛
親子の歪んだ愛の形を描いた作品でした。
母親は、ろくに働かずパチンコばかりで子供の面倒をまともに見ようとしない。そのくせに人からお金を借りて何とかやり過ごしたりしている。
子供は、まともな愛を知らずに育てれられ自分が知っている世界は、母親の中で作られたものになってしまう。
それが後に共依存という関係性に変わっていってしまう。
この映画を観てから自分がどれだけの愛を受けいたか考えさせられました。
普段の何気ない事でも何かしてくれている。
それに気づかないままでいたのかもしれないです。
常にあるものは、気づかないけど無くなってから気づくとよく聞いたりする事があります。
だけど、無くなってからじゃ既に遅いんだなと思いました。
この映画は、正直に言うととてもくらい映画でした。
だけど、これを観た人がどう今自分にとって感じるかは、その人次第でとても魅力的な作品だと思いました。
悲しい
親子の共依存。この親子愛は美しいのか?
とにかく役者の演技がリアルで引き込まれる。
視聴者側から見れば、母親から離れれば幸せになれるのでは、ここで止めておけば幸せになれたのでは…と思うところがたくさんあるが、そうはいかない。自ら不幸に飛び込んでいるようでもあるが、だからと言って本人が不幸だと感じているかと言えば、そうでもなく。
難しい。そして、悲しい。
無気力の世襲
日日是好日の監督の作品。
こちらも、誰かの何者にもなれない人物が主人公。
自分で自分を認められる愛情の基盤があれば、誰かの何かになれなくても満足できるはずなのに。
長澤まさみ演じる三隅秋子が、ずっと無気力。子供もいるのに。消化試合のように生きている。
ずっと傷ついてきたんだよね。堪えてきたんだね。と声をかけたくなる。
実家では出来が悪くて大人になるにつれ妹と人生に差が出て厄介者扱い。大切にされた記憶がないからお金目当てで両親に近付けるのだろう。
結婚したのに夫とは離婚して。息子がいるが、生活を満たすために働く気力もない。容姿だけは良いのをあてにして、周りの男性に迫っては、養って貰えないか様子を伺い、どこも行き先がないと息子を使って実家や妹にせびりに行く。しかもお金はパチンコに消える。
更にはどうしようもないホストにまで、おそらく子供ができれば養って貰えるかなと計算したのかもしれないが、妊娠しても捨てられて。ダメな男だとわかっているのに、そんな男性からでも良いから一過性の愛情を求め、それすらも得られない自分にまた傷つき更に無気力に陥る。
仕事もちゃんと行かない母親がパチンコか新しい男性のもとへとフラフラ居所を変えるから、小学校すら教育の機会も奪われた息子は、他に行くあてもないまま母親について回るしかなく大きくなり、無計画に産まれた妹の父親がわりにまでなっている。
いつ、自我が目覚めるかと見ていても、母親を助ける役目が染み付いてしまっていて、幼い頃から母親のパシリにされ、都合よくこっちに来いあっちに行けとあしらわれているだけで充分な愛情を注がれていないのに、母親の命令なら嘘もつくし盗みもするし最期には殺しにまで手を染めてしまい、それでも母親が好きで、庇い懲役12年を背負う。それでも、ご飯も出るし本も読める刑務所の環境からもう出たくないというほどの生い立ち。傍目に見るとそれほど大変だったのに、他の育ち方を知らない周平は気付かない。産まれたところからずっとダメだなんて言わせる母親でも、子供にとってはたった1人の母親。それに甘んじるかのように何もしない母親は、言葉だけのマザーで、産んだだけで母としての責務はなんにもしていないのに。
道端でホームレスしているところを見つけて住居に案内し、フリースクールの存在を与えてくれた児童相談員の亜矢や、「仕事しろよ!お前が働かないから息子が悪さするんだろ!親なら二十歳まで面倒見るのが普通だろうが!」と一喝して食事の面倒まで見てくれた周平の仕事先の社長。
社会の救いの手は何度か差し伸べられていて、周平も人生を変えるチャンスは何度もあったのに、そこで声を上げられないほどに、母親との共依存関係は深い。
そして、亜矢からお母さんと暮らさない手もあると言われても、亜矢のように親から手を挙げられて育ったわけでは無い周平には、響かなかったのか。
学校へ行きたいから借金取りから逃れるために俺は行きたくないと話しても、亜矢にあんたは嫌われてると言い、自尊心を傷つけて従わせるような母親なのに。
誰かがあったかく迎えていれば。
祖父母の家に殺害強盗目的で入った時も、下の妹には会ってみたいなという祖父母。「周平、久しぶりに顔を見られて嬉しいよ」その一言があるだけで結果は変わっていたかもしれない。母親も同じ環境で育ったなら、親を大事に思えない殺したくもなる、せめてお金だけでも出してくれと考えてしまう気持ちがわかり犯行に及んでしまったのか?小学校の知識もなく、殺害に対する罪の重さや抵抗も少なかったのか?わからないが、祖父母への恩は全く感じていないことだけはわかる。
仕事をするスイッチさえ入れられれば。
仕事がなく暇を持て余すから、パチンコに走る。
暇だと存在意義を考えてしまい、傷つくのを避けるためだろう。包丁を持たせてみれば不器用ではなく、水商売でもなんでもできそうなものだが、自分に何かやれるという自信が全くないようだ。そんな人生だとしても、毎月生理はきて妊娠もし命の連鎖を産めてしまうのが、女性。言葉上マザーになるのは生物学的には単純、でも実際に客観的に見てマザーになるのは難しい。
主観では、あの子は私の子だと何度も主張していて、頼ってばかりで全く責務を果たしてはいなくても母性の欠如ではなさそう。
子供の主観で見ても、殺害を頼まれたうえ供述で罪をなすりつけられさえしても、母親を好きと話している。
断ち切るべき結末ではあったが、ここまで自己肯定感皆無の娘に育ててしまった祖父母が原因でもあるのかもしれない、だとしたら殺されるのはもしかしたら一周回って自業自得という見方もあるのかもしれない。
側で見てきた母親の積年の苦しみを晴らしただけで、誰彼構わず殺す人間に周平が育ってしまったわけではないという見方もあるのかもしれない。
なら母親ってなんなのか?
とても考えさせられる。
愛のないところから愛は注げず、母親の立場が可哀想でもあるが、妹には父性を補う存在としてしっかり愛情がある周平が健気で見ていてとても悲しい。
周平の「どうすればよかったんですかね」
これに尽きる。
「マザー」は、少なくとも、子供に善悪を教えなければいけない。身をもって愛を教えないといけない。
そして、それができないのなら、社会の力を借りてでも、子供にそれが与えられるよう、意思に反しても手放すなり機会を与えないといけない。一方、母親以上に関係性に立ち入れたり、最後まで助けられるほど手を差し伸べられる存在はなかなかいない。だからこそ、母親が子供を守らないといけない。ワンオペで2人を育て、しかも自分の愛情は不安定。とてもきついはず。社会に属し、親がダメでも育児を相談できる第三者を見つけておくのも母親としての役目。
見ていてそう感じた。
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