劇場公開日 2020年9月18日

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「シリアスSFと思いきやただの家庭内DVのお話し」TENET テネット donmai_honamataさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5シリアスSFと思いきやただの家庭内DVのお話し

2020年9月20日
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興奮

このノーランさんという監督、SF的な舞台設定を考えるのはお得意な様子も、どうもストーリーテーリングに難がある様子。

主人公達の命題は第三次世界大戦の回避という御大層なものなのに、それを予感させるのは未来から来た壊れた機械部品という名の歯車やネジをちらっと見せられるのみ、
核戦争よりも悲惨というセリフが宙に浮くほど説得力は無い。
この辺りで、ははーん、これはもうストーリーを追わずに映像美を堪能させてもらうしかないな、と覚悟する。

間をすっ飛ばすと、気づけば倒すべき悪役も、
世界を牛耳る卑劣な武器商人、ではなく、どうせ死ぬなら世界も道連れだ!なんていうアメコミも真っ青なしょぼい家庭内DV夫になっていて、
主人公も、どっちかっていうと世界よりは、そのDV夫から美人妻を救うのにご熱心な様子。
子どもと一緒に逃げるよりも、詐欺罪で前科がつく方が怖いってほんま?

過去作でも、ご都合主義はありつつも上手く気にならない程度にはなっていたが、
さすがに今作となると、とにかく時間逆行を描きたくてストーリーは二の次感が強くて困る。

そして何より、残念ながらその時間逆行、ストーリー上本当に必要あります?ただそのシーン撮りたかっただけちゃうんかい、と。

ノーランさんの映画のもう一つの特徴は、とにかく誰にも感情移入できない点かも。今回で言うと、主人公の最後の涙。
いやいや、ストーリー的にはまだまだ文字通り闘い始まったばかりで、センチメンタルに泣いてる場合ちゃうくない?

閑話休題

ストーリーに目をつぶれば、ヒトの夢やブラックホール、そして五次元を見事に映像化させたこの人は、
今回もタイムリープものを単なる過去未来へのジャンプではなく、時間逆行として見せてくれて、そのアイデアと映像を堪能。
上に書いたお世辞にも詰まっているとは言えないストーリーも合わせ、本来はおよそ資金が集まらない企画書だと思うが、
それでも作を追うごとにやりたい映像世界を存分にお金をかけて作り上げられているのは、映画界にとって喜ばしい限りで、いろんな関係者の希望にすらなっている気がする。

一言、やはりこの人、映像作家であり映画監督ではないのかもしれない。

追記

2回目鑑賞。まだ最初の方が楽しめた気がする。
タネが分かってから見ると、ますますスクリプトの粗が目立って余計に気になり、素直に楽しめません。

donmai_honamata