劇場公開日 2021年6月4日

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「「るろ剣最後の1ピースは、美しく儚い冬に咲く花のようだった」」るろうに剣心 最終章 The Beginning なりさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5「るろ剣最後の1ピースは、美しく儚い冬に咲く花のようだった」

2021年6月18日
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◎今までのるろ剣とは全くの”別物”だった

実はこの映画、2回観に行っていて、1回目観たときは正直あまり面白く感じなくて、でも周りの評判はめちゃくちゃ良いから、あっれれーおかしいぞーーって思って、2回目観に行ったら、んまぁー面白かった←笑
ではなんで1回目面白くなくて2回目は面白かったかっていうと、映画の見方を完全に間違っていたからだった。
今までのるろ剣っていうのは、
「一にアクション、二にアクション、三四がなくて、五にアクション」
ってぐらいひたすら質の高いアクションで魅せる映画だった。
だから今作も自然とそういう見方で観るわけですよ。そしたら全然面白くなかったんだよね。汗
実はこのThe Beginningは今までのシリーズとは全くの別物、別ジャンルの映画だったんですよ!強味であったアクションを削りに削って、ドラマパートに力を入れまくった本格的時代劇であり、切ないラブストーリーの作品が今作の正体でした。

◎”不殺の誓い”は”巴との誓い”だった

この映画は、緋村剣心という一人の男の過去を描く、十字傷の謎と不殺の誓いを立てるに至るまでの物語。
彼にとって不殺の誓いは、決して揺るがない強い信念であり、正義であり、それを形表していたのが、逆刃刀だった。
剣心は、今まで人斬りとして何十、何百という人間を斬ってきたが、彼自身、新しい時代、平和な時代がその斬り続けた先にあると信じていた。
しかし、まだ高校生ぐらいの年頃でそんなに人を斬っていたら、心揺らぐのは当たり前で、誰よりも純粋な心を持っているが故に、その迷いは大きくなる。そんな時に出会ったのが雪代巴という一人の女性だった。
この映画の最大の魅力は何かって言ったら、やっぱり剣心と巴の二人の関係性なんだよね。
剣心が巴と出会って、一緒に生活していくことで、彼自身だんだんと人間味というか、人としての温かさを取り戻していくんですよ。
剣心にとって巴が、いつの間にかかけがえのない大切な存在に変わっていく模様の描き方が凄く良くて、一緒に生活していたら、いつの間にか好きになってたっていうのは、我々も共感できるじゃないですか。それに、剣心の寝方だったり、呼び方で何気なく、でもしっかり分かるように表現しているのが上手だなぁって思わずニヤけちゃうww
巴との生活では、剣心の幸せの価値観も大きく変えるんですよ。今までは平和な時代、新しい時代っていう、大きくもぼんやりとしたものだったんだけど、誰かと共にする衣食住っていう小さいけどはっきりと分かるものに変わっていく。

◎憎しみとも慈しみも表裏一体

巴にとっての剣心の存在の変化も凄く良くて、作中で北村一輝演じる辰巳の言葉で「憎しみも慈しみも表裏一体、それが人の業というもの」ってあるんだけど、まさにそれで、巴にとって剣心は初め、憎むべき相手だったけど、そんな彼に心惹かれている自分がいて、そんな相対する自分と自問自答し、憎しみと愛情の狭間で苦しむ巴がまぁ切なくて切なくて。。
巴は、剣心に十字傷という十字架を背負わせた。そして、来る平和な時代を託した。巴と清里のような、激動の時代による暴力と運命に翻弄された”犠牲者”を生み出さない未来を。
そんな巴を演じたのは、みんな大好き有村架純。彼女の母性溢れる雰囲気、柔らかく優しい表情、そして悲しくも美しい目。外面的な部分はもちろん、彼女の内面的な魅力が溢れており、一言で最高だった。

今作はアクションは少なめだが、不殺の誓いによる”当てる”剣術ではない”斬る”剣術なので、血は飛び散るし、腕は斬れ落ちるしで、残虐な部分も当然あって、今までのるろ剣アクションとはまた違った見え方も一つの見どころだし、観終わった後には、もう一度シリーズを観返したくなる面白さ。
高橋一生のイケメン桂小五郎や江口洋介の斎藤一、村上虹郎の沖田総司らの新選組、北村一輝演じる闇乃武頭領の辰巳など脇を固める役者も豪華だが、それでもこの映画は、佐藤健と有村架純だけ見ていればいい。それくらいこの二人の関係性、ドラマが本当に良かったから、ぜひぜひ観てほしい。

なり