劇場公開日 2020年7月3日

  • 予告編を見る

「夜顔」一度も撃ってません 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5夜顔

2021年1月21日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

楽しい

昼の顔は売れない小説家。しかし、夜の顔は…
伝説の殺し屋!
おっと、違った。そうだったらカッコ良かった。実際は…
旧友から依頼を受け、標的をリサーチするだけ。で、殺し屋から詳細を聞き、小説のネタにする。
ややこしや~。

昼の小説家としての名は、市川進。うだつが上がらず、妻・弥生にも頭が上がらない感じ。
しかし、夜になると…
行きつけのバーに入り浸り、帽子にサングラスにトレンチコート。
俺の名は、御前零児。(何と、こちらが本名!)
ハードボイルドを気取り、一応殺し屋の仲間だが、本人は一度も人を殺した事が無いどころか、一度も銃を撃った事すら無い。

勿論コメディ。作品に掛けて言うなら、ハードボイルド気取るコメディ。
そんな主人公を演じるのが、これが18年ぶりの映画主演となる石橋蓮司というのが絶品。
多くの映画やTVドラマで魅せてきたコミカルさと大人の渋さの絶妙なバランス。他にも出来る名優は居るかもしれないが、でもやっぱりこの人で良かった。
石橋サンの久々の主演を祝うかのように、ベテランから若手まで超豪華面子が集結。これは是非ご覧になって。個人的にはバーの筋肉ムキムキのマスター、ポパイがお気に入り。

旧友がチャイニーズ・マフィアの殺し屋に命を狙われた事をきっかけに…。
さらに、弥生が夫の行動に不審を抱き…。
零児、ダブルで危機に!

監督の阪本順治も脚本の丸山昇一も、何も傑作映画を作ろうとしているのではなく、楽しい映画を作ろうとしているのが伝わってきた。
ラスト、遂に零児も銃を持ち、ある場に立ち向かうが、それすら脱力系。
でも最近暴力的な作品が多い中で、笑えて平和的で何だかほっこり。
見終わってみれば、確かになかなか愉快だった。

普段は冴えなくてもいい。
男はもう一つ、隠し持っているカッコいい顔がある。
人はそれをこう呼ぶ。
夜顔(ハードボイルド・フェイス)、と。

近大