劇場公開日 2020年2月7日

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「戒律と選択の問題に直面した際に、どうふるまうべきなのか、を考えさせてくれる。」ロニートとエスティ 彼女たちの選択 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5戒律と選択の問題に直面した際に、どうふるまうべきなのか、を考えさせてくれる。

2020年6月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

鑑賞直後は主人公、特にロニートにあまりいい印象を持てず、あまり自己評価は高くありませんでした。しかし冒頭の場面から改めて想起してみると、厳しい戒律を伴ったユダヤ人社会において、自分たちの分かちがたい特質を認識し、それを抱いて生きるとはどういうことなのか、ということを非常に丁寧に描いていることに気づき、むしろ素晴らしい映画として認識するようになりました。

 劇中では厳格なユダヤ教の教義や戒律について説明を省いている場面がしばしばあり、意味が理解できずに戸惑うところは確かにありました。例えば本作の舞台であるユダヤ教社会では、既婚の女性は地毛を人目にさらすことを忌避するため、ウィッグの着用が義務となっています。この戒律を知らないと、エスティの髪がウィッグだったり、ロニートがウィッグを試着している場面の意味を一見で理解することは到底不可能でしょう。ところが本作では、ウィッグを付ける行為の意味やその変化を、ロニートとエスティの表情や振る舞いでそれとなく理解できるようにしています。

このような演出が作品の随所に張り巡らされているため、非常に情報量の多い画面となっています。

もっとも、ユダヤ人社会でも戒律の内容や厳格さはかなり異なるようなので、この作品で「ユダヤ人社会とはこういうもの」と価値観を固定化しないようにする必要がありそうです。

yui