劇場公開日 2020年2月7日

  • 予告編を見る

「保守的な価値観の中で傷ついていく人々を見つめる色褪せた人間ドラマ」ロニートとエスティ 彼女たちの選択 よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0保守的な価値観の中で傷ついていく人々を見つめる色褪せた人間ドラマ

2019年11月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

ニューヨークで写真家として活躍しているロニットはロンドン近郊な敬虔なユダヤ教徒の家に生まれ育ったがユダヤ教徒コミュニティの重鎮である父ラブと仲違いし家を出た過去があった。ある日父の訃報が届き葬儀に参列するために故郷に戻ったロニットは幼馴染で父のもとで修行をしていたドヴィッドに会う。ドヴィッドはロニットの友人だったエスティと結婚して幸せに暮らしていたが、ロニットとエスティは昔コミュニティでは許されない関係にあった。ドヴィッドの勧めで数日家に泊めてもらうことにしたロニットに対して故郷の人々は冷たく、エスティもどこかよそよそしい態度だったが、父の遺品を見に実家を二人で訪れた時にエスティは思いがけない言葉を告げる。

トランスジェンダーの女性が愛人の死をきっかけに様々な試練に打ちのめされるチリ映画『ナチュラルウーマン』が絶賛された監督セバスティアン・レリオの本作もまた保守的な価値観の中で傷ついていく人間のドラマ。ほとんどモノクロームに近い冷たく色褪せた映像の中で許されぬ想いに身を焦がすレイチェル・ワイズとレイチェル・マクアダムスがとてつもなく美しい。特にレイチェル・マクアダムスはついこないだ観た『Game Night』で魅せたブッ飛んだコメディエンヌとは完全に真逆のキャラクターを透明感たっぷりに演じていて驚異的。『ナチュラル〜』ではアレサ・フランクリンでしたが、本作ではザ・キュアーの”Lovesong”が印象的に使われていて、二人の心情を当て書きしたかのような歌詞が胸に突き刺さります。

よね