劇場公開日 2021年5月28日

ハチとパルマの物語 : 特集

2021年5月24日更新

「ハチ公物語」×「ターミナル」 良質な感動作を発掘
捨て犬と少年が空港で生活…本当にあった奇跡の物語

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いい映画に出合いたい、できれば見た後もずっと感動が続くような観賞体験がしたい。じっくり浸れる落ち着いた雰囲気の作品なら、完璧だ――。そんな気持ちにぴったりの良質な作品を、見つけてしまいました。それが「ハチとパルマの物語」(5月28日公開)です。

本作は、1970年代の旧ソ連に実在した“忠犬”と孤独な少年の絆を描いた物語。空港に置き去りにされてしまった犬と居場所をなくした少年が出会い、無二の友情を築いていくさまを軸に、親子の情や隣人愛など、様々な形の“心の交流”をエモーショナルに描いた逸品。質の高いヒューマンドラマを求める観客の心に、ぴったりと寄り添ってくれることでしょう。


【予告編】 今も愛される、“もうひとつ”のハチの物語

見つけたことを自慢したくなる、掘り出し物的な良作
物語、余韻、作り手――推しの1本になる、5つの理由

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この映画に出合えたその日が、大切な思い出になる――。これまでの人生で、そんな良作に何本出合えたでしょうか? 「ハチとパルマの物語」は、あなたにとってのその新たな1本になるかもしれません。

日本とロシアが共同製作した本作は、観客を引き込む物語の“体幹”や “画力”、日ロの“作り手”たちに至るまで、総合力が非常に高く、見逃すには実に惜しい1本。本項目では、5つのポイントに絞り本作の魅力を端的に解説していきます。


理由①:心揺さぶられる上質な物語 この感動は「ハチ公物語」×「ターミナル」

空港に置き去りにされた忠犬が、主人をひたすら待ち続ける――。本作は、さながらあの感動作「ハチ公物語」×空港で暮らす男性を描いた「ターミナル」。

ただ、単なる「動物もの」ではありません。「ハチとパルマの物語」はいわば“ダブル主人公”制であり、犬のパルマと少年コーリャ、それぞれの物語が展開し、合流していきます。母を亡くし、パイロットである父に引き取られるも、親子仲は最悪のコーリャ。ひとりぼっちの両者が運命の出会いを果たし、“居場所”を見つけていく姿が胸を揺さぶります。

さらに意外な展開もちりばめられており、物語への没入が最後まで途切れることがありません。

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理由②:犬と少年の“真実”の絆 人気ジャンル「実話映画」の新たな良作誕生

そして、注目したいのが本作が「実話映画」であるということ。「ハチ公物語」しかり「英国王のスピーチ」や「ハドソン川の奇跡」しかり、実話をベースにした作品は良質なものが多く、見る側の感動も格が違います。

制作側も、細部に至るまで慎重に協議を重ねて作っていくため、総じてレベルが高いものになるのです。本作も、映画的に映えるドラマティックな展開は用意されているものの、現実感が損なわれる瞬間は皆無。純粋な感動に浸されます。

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理由③:余韻を増幅させる映像力 ロシア映画の底力×日本映画の繊細さが融合

日本でも人気のド迫力の戦争映画から、アカデミー賞候補に入った「ラブレス」まで、映像力に長けた作品が多いロシア映画に、日本ならではのきめ細やかな感性が加わった本作。

「ソローキンの見た桜」のプロデュースチームが再結集し、両国のクリエイターたちの特色を生かしつつ、新たなカラーを生み出せるように腐心したといいます。本編同様、無二の友情を築いた日ロのスタッフたちは「言葉が通じなくても意思疎通できるようになった」そう。なお、本作では日ロ合作映画では初めて秋田県大館市で撮影を実施。キャストのアレクサンドル・ドモガロフと撮影クルーが秋田を訪れたほか、大館市長も出演しています。

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理由④:言葉を越えて伝わる説得力 ロシア映画の重鎮&あの人気作のキャストが出演

ロシア映画界の実力派たちが参加したことも、作品のクオリティを底上げしています。

コーリャの父ラザレ役のビクトル・ドブロヌラボフは、日本でもヒットを記録した「T-34 レジェンド・オブ・ウォー」等に出演し、プロデューサーとしても活動する人物。劇中では、過去の自分を悔やみ、息子と何とかやり直そうとする父の複雑な心境を見事に表現しました。

「ソローキンの見た桜」にも出演したアレクサンドル・ドモガロフは、“ロシアの役所広司”的な大御所。安定感あふれる演技で、冒頭の日本のシーンから作品に本格派の“品”をもたらしています。

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理由⑤:本国で初登場1位! 観客に支持された圧倒的品質

日本に先行して公開されたロシアでは、公開初週の映画動員ランキングで初登場1位を獲得。多くの映画好きが「見たい」と思える内容だったからこその結果であり、本作が「時代に求められている」ことを証明する格好となりました。

そして、その熱狂は海を越えて日本へ――。国内の観客の心も、ぐっとつかんで離さないことでしょう。


見た人だけがわかる“真の見どころ”、特別に教えます
映画.comスタッフによる「ここに泣いた」観賞レビュー

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総じてクオリティの高い「ハチとパルマの物語」ですが、実際に見るとどんな気持ちになれるのでしょうか? ここでは、先んじて本作を観賞した映画.comスタッフによるレビューを掲載。ネタバレを避けつつ、心を動かされたポイントをいくつか紹介します。


何の前情報も入れず、予備知識のない状態で観賞しましたが、驚かされたのはアレクサンドル・ドモガロフ・Jr.監督による、観客の感情を引き込む巧さ(日本パートに出演しているアレクサンドル・ドモガロフの息子でもあります。本作で親子タッグを果たしました)。

たとえば序盤のシーン。パルマの飼い主は仕事の都合で急いで飛行機に乗らなければならないのですが、書類の不備で連れて行けなくなってしまいます。しかたなく、その飼い主はパルマを滑走路に放ち、飛行機に乗り込みますが、追いかけるパルマの姿がドラマティックなカメラワークで描かれ、見る者の涙腺をこれでもかと刺激してくるのです。

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ただ、これ見よがしなお涙頂戴的演出ではなく、ある種のシビアさをたたえたリアリスティックな味付けにしているのが興味深いところ。

空港にいる人々は、皆がパルマに親切なわけではないですし、全員が邪険に扱うわけでもありません。様々な人々と接する中で、「信頼のおける存在」があぶりだされていく構造になっているため、虚構性が薄められ、より豊かに胸に迫ってくるのです。

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パルマと呼応するのが、母が亡くなり、疎遠だった父に引き取られるが孤独は募るばかりで……というコーリャの物語。同じ痛みを抱える者同士、共鳴していく姿が美しく描かれます。ただここも、彼らを憐れみだけで描くのではなく、周囲の人物たちも含めて複合的に見せていく点が秀逸です。

印象的なのは、第3の主人公ともいえるコーリャの父ラザレ(ビクトル・ドブロヌラボフ)。彼が己の過去を反省し、コーリャに手を差し伸べようとする姿にグッとくるはず。ここも、父を表層的に“敵”として扱うのではなく、悩めるキャラクターとして描くリアルな演出が効いており、涙を誘うと共に質の向上に貢献しています。

“動物もの”にとどまらず、少年の成長物語であり、半端な父が父性を獲得する物語であり、感動の実話でもあるのです。

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そして、旧ソ連で起こったこの物語が、日本とつながっていく構成にも感嘆させられます。本作のタイトルである「ハチとパルマの物語」の「ハチ」とは「ハチ公」のことですが、日ロの“忠犬”がシンクロしていく展開は、大いなる感慨を呼び起こしてくれることでしょう。

さまざまなタイプの涙を引き起こす装置が、無数にちりばめられた作品、それが「ハチとパルマの物語」なのです。

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