劇場公開日 2019年11月30日

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「みなまで言わすな」種をまく人 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0みなまで言わすな

2019年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

この映画の面白いところは、台詞が少ないわけではないが、説明的にならず、「みなまで言わすな」とばかりに、台詞のない演技で状況を語らせ、ストーリーを展開させるところだ。
寡黙であるべき兄・光雄や長女・知恵だけでなく、他のキャストも同じで、そのためドラマっぽくならずに、リアルに迫ってくる感じがある。

始めから1/4くらい進んだところから、もはやストーリーは大きく動かないが、たっぷり時間は残っている。
そこで、残りの時間は4人のメインキャストと、彼らの間の関係性の変化を、丁寧に描いていく展開になる。

そうであるがゆえに、「みなまで言わすな」が最後に裏目に出たのか、じっくり描かれたストーリーのラスト15分くらいが理解できなかったのは残念だった。
なぜ光雄は病院から・・・。知恵の罪は、罰は?
自分が不注意だったのだろうか? そうかもしれないが・・・。

2015年に撮影され、海外の映画祭を回って、そして今回公開となったようだ。次女・一希役の子は、今や7歳である。
「みなまで言わすな」の映画が、以心伝心の日本ではなく、2016年に海外で賞を取ったというのは興味深い。
沈黙の演技であっても、描写が具体的であったためだろう。

なお、ゴッホの「ひまわり」や「種をまく人」の絵、東日本大震災、ダウン症については、この作品の着想源になったようだが、いずれもこの完成作品に直接的な関係はない。
もちろん“種をまく人”は出てくるのだが、それらを当てにして観に来ると、期待外れになるだろう。

Imperator