劇場公開日 2020年2月21日

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「映画として完成していない」Red marumeroさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0 映画として完成していない

2025年12月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

ストーリーについては、モヤモヤすることがあれば、嫌悪感を抱くこともありますが、それはそういうものとして受け入れました。
しかし、問題は、映画として、映像作品として、これでいいのかと思うところです。

まず、本作はーー原作からーー恋愛作品でありながら中心的で重要なテーマは“官能”でしょう。
つまり、性描写が極めて重要な作品となる筈です。純粋に、ちゃんとエロく、ちゃんと生々しく、ちゃんと肉体でなければならないと思います。
言うまでもありませんが、バストトップや尻を見せればいいってものではありません。
しかし、本作においては少なくとも隠そうとする行為がない状態でなければならない筈なのです。絶対に映さないというカメラワークが徹底されすぎて、単純に不自然なんです。
美しく見せようとすればするほど、作り物めいた清潔さを感じてしまって、苦悩や衝動といったものまでが、きれいなパッケージに包まれてしまっています。

まして、塔子の“良き妻(良き義娘)”“良き母”からの“逸脱”や“解放”といったものが物語の核にあるように思いますので、なおさら、映像としての品格(安全性と美しさ)を守ることより、美醜の境界を越えるような、映像レベルでちゃんと解放する必要があると思うのです。

もう一点。
そして、鞍田の人物設定なら、まずあの家はデザインしないでしょう。ダサいとか平凡とかはさておいて、何より建築家らしくない、鞍田らしくないというのが最たる理由です。この鞍田という建築家が、他の誰かの制約なく、他の誰の為でもないオンリーワンの自分の理想をデザインしたのが、それ!?ということです。
“大きい窓”というキーワードを具象化したかったのでしょうけれど、映像作品として、観せるものとして、果たしてちゃんと表現できているのか、甚だ疑問です。

そういう表現の仕方、表現力がテーマを全く描ききれていないと思います。
なぜこの物語を撮ろうと思ったのか、という疑問すら覚えます。

以下、余談です。
恐らく、原作者島本理生さんも本作監督の三島有紀子さんも建築を学んだことはないでしょう。
建築を甘く見過ぎです。
大した実務経験もない人が思い付きで口出しできるほど簡単じゃないですよ。外科医のドラマで手術について研修医がアイデアを出して医師たちが「なるほどー」ってなったらおかしいでしょう。それと同じくらいあり得ない話です。(よっぽどの天才という設定がない限りは。)
まぁそんなところは本作ではどうでもいい部分なんですけど。

marumero
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