劇場公開日 2020年10月9日

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「異端の排除は生物の本質」異端の鳥 シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5異端の排除は生物の本質

2021年6月16日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

本作は2020年キネ旬外国映画ベスト6位の作品で、劇場で見逃した作品です。
凄い映画でした。これこそ映画館で観るべき作品で、スクリーンで観れなかったのが残念です。
様々な映画を鑑賞しながら、映画の役割の様な事を考えたのですが、映画とは弱者・敗者に対しての応援歌であったり、厳しい現実を生きて行く為の杖の役割であったりするのですが、本作の様に人間社会の醜い現実というか真実を見せるのも映画の役割なのだと思っています。
本作、時代的には第二次世界大戦時でしたが、鑑賞していると太古の原始的な時代の様にも錯覚し、文化的な生活から外れた人間本来の姿はまさに野獣と変わらない様にも感じてしまいました。
本作の主人公である少年の元々はナチスから逃れる為の疎開から始まり、そこから経験したことは人間の本性は自己防衛本能であり危険回避であり、その行きつく先が異端の排除に繋がり、何処に行こうと小さなナチスが待ち受けているという地獄巡りの旅路の様にも見え、ナチスというものはある意味に於いて人間の本質を具現化したものであり、現実問題としてこの時代から80年以上経過した現在に於いても本作で紹介された“異端の鳥”の法則は世界中の何処にでも存在し、ミニナチスの集合体である事には違いありません。
それでも彼が死ななかったのは、これもまた人間の本質にある逞しさや優しさの存在からだと思うのですが、彼の未来がそのどちらの影響を多く受けたのかは謎のままでした。

それと、時代的・地域的なことから名作ミュージカル『屋根の上のバイオリン弾き』(こちらは19世紀末で本作より少し過去)を想起したのですが、あの作品て描かれていた裏側をというかリアルはこの作品の様な日常があったのだろう思うと、ちょっとショックでした。

シューテツ