「面白かった以外に言えることなんてない」ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
面白かった以外に言えることなんてない
少し前の作品であったなら、ガリ勉キャラクターや同性愛者などは、のけ者にされたりイジメられたりしたものだ。
しかし本作では、趣味や嗜好によるグループ分けはあっても対立のようなものはない。
あらゆる人種や性的マイノリティが普通に問題なく存在する、ハリウッドのリベラルが喜びそうな理想の状態に、時代は変わったなと思うのです。
同性愛に理解のあるキリスト教徒の両親なんて、アメリカの保守が観たら泡吹いてぶっ倒れるよ。
そして、フェミニストのモリーと環境活動家のエイミーをダブル主人公にした青春もので、どう考えてもそっち系のストーリーになると思うじゃない?
しかしそうはならず、当たり前に描かれるこの状態はすでに当たり前だと言わんばかりに、説教じみたことは全くない、普遍的な誰にでも当てはまる青春ストーリーに、更に時代は進んだのだなと思わずにはいられない。
モリーとエイミーが作中の一晩で気付いたもの、知ったこと、など、細かいことを書き出したらキリがないが、極端な話、単なる二人の友情ストーリーであったとも言えるわけで、観賞後に何か良かったなと感じる理由だろう。
そして、それらを味付けした音楽の使い方が良かったなと思う。
笑い、感傷、高揚などを使うタイミングと選曲で大いに表現したと思った。
背景としてリベラル思想をチラチラ見せながらも説教することなく、どこかヌけてる青春コメディの、昔からあるような王道に着地させた妙技に感心すると共に、面白かった以外に言えることなんてない娯楽性に驚いてしまうのだ。
