劇場公開日 2019年11月8日

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「あの日みた夢 あの夜の覚悟 そうして辿り着いた“今”」ひとよ 野々原 ポコタさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0あの日みた夢 あの夜の覚悟 そうして辿り着いた“今”

2019年11月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

タイトル『ひとよ』には
〈一夜〉と〈人よ〉とのダブルミーイングが
込められているそうです。

さて、今回は「舞台演劇」の話題を通して
本作にアプローチしようと思います。

というのは原作者・桑原裕子さんが
演劇畑の方だからです。

2021年に日本国内で初となる
公立大学で演劇やダンスを本格的に学べる
学校ができるそうなんです。
そこの学長に就任が決まっている
平田オリザさん作・演出の戯曲『転校生』(1994年)から
桑原さんの演劇人としてのキャリアがスタートしました。

この演目『転校生』は代々、
キャストやスタッフを一般の高校生から募って
〈高校生と創る演劇〉を根幹として
若き才能を育み、世に送り出してきた
いわば、演劇界の登竜門的役割を担ってきた
大変意義のある企画プロジェクトです。

そんな夢を掴んで演劇の世界に飛び込んだ桑原さん。
役者、脚本、演出をこなす
華やかな才能をお持ちの彼女でも
表現者・クリエイターとして、
また現代を生きるひとりの人間として、
色々と思い悩むところもあるのでしょう。

人間が等しく、思い悩むように…
桑原さんの舞台をみて、そう思う。

彼女の手掛ける戯曲の多くは、現代の日常を描きつつも
人間の普遍的な部分を見つめ直すような群像劇。
わたしたちのオーガナイズされた想い、苦悩を、
掬って、救ってくれるような群像劇。

そんな舞台演劇の趣きと、
白石テイストが十二分に作用して
映画『ひとよ』は完成されたひとつの作品に
仕上がっているとわたしは思いました。

家族が織り成す人間ドラマが描いたのは、人間賛歌。
親子間だけではなく一個人としてのヒトの資質を問う。

さすがのキャスティング! みんな、いちいち、巧い!
ムダのない流れ、飽きさせないメリハリの効いた構成!
白石組ここにあり!

過去の由縁を幾つも経て今という岸辺に辿り着いた
  夢みた未来とはかけ離れるている今だけど
   正解でも間違いでも決めるのは今の自分
      過ぎ去った過去こそ笑え
     明日を肯定するための今日だ

…と、映画と舞台併せて受けた心象を言葉にしてみる。
かなり偏った捉え方だけど…

桑原さんの『荒れ野(あれの)』の再演、来月観劇予定♪

野々原 ポコタ