劇場公開日 2019年6月14日

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「戦争中は命令に従い、戦後は運命に従う・・・」The Crossing ザ・クロッシング Part II kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0戦争中は命令に従い、戦後は運命に従う・・・

2020年7月4日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 台湾での興行成績は良かったものの、中国では酷評され振るわなかった。それもそのはず、完全に台湾=国民党軍の視点で描いた作品だからだ。お国事情はともかく、戦争は悲劇しかもたらさないことがしっかりテーマとなっていて、みんな恋愛が引き裂かれていく。

 2作目の前半はほとんど1作目の繰り返しになるのですが、かなり細かなところまで描写し、実はこんな裏話があったんだよ的に3組の男女が絡んでいくストーリーとなっている。司令官である夫の帰りを待つユンフェンは、金城武演ずるイェン・ザークンの診療所家族と親しくなり、妊娠中の体を気遣ってくれる。イェン家は父親が共産党員だと疑いをかけられ銃殺、兄も捕まり、弟も学生運動に参加しようとしているが、ザークンだけは日本軍に徴兵され軍医として働いていた。それでも家族から政治犯が出たとして毎月憲兵に出頭しなければならない現実。

 娼婦にまでなったユィ・チェンは太平輪に乗船するため、ある男に身体を売るが、とんでもない奴だった・・・それがユンフェンの従兄。騙されたと怒り、ボコボコに殴るのチェン。しかし、運命のいたずらか、乗船すると2段ベッドの上下だという皮肉。そしてチェンは下宿屋の奥さんと再会し、なんと負傷兵の中に偽装夫婦だった通信兵トン・ターチンとも再会。そんな積載量オーバーの太平輪も悲しい運命が待っていた・・・

 3組の男女にチェンが追いかけていたヤンもいるのですが、こちらも悲劇。彼を捜すために金を貯めていたのに、あろうことがすれ違い。戦争を背景に運命のいたずらは残酷なまでに彼らを襲う。群像劇らしく、タイトルのクロッシングの名の通り複雑に絡み合う運命。イェン家の中だけでも共産党狩りの被害で疲弊していたけど、母親が雅子の手紙を燃やしていたとか、悲劇はザークン一人に降りかかっていたのだ。そんな母親をも赦す心の広さと優しさを兼ね備えた好青年の金城武がカッコよく見えてしょうがない。さらに、チャン・ツィイーの不幸さもずしんとくるのに、なぜか全体的には涙を誘わない。1作目のインパクトが強烈すぎたのか、たった一組の幸せだけじゃ物足りないのかもしれません・・・

kossy